「流石にもう回復しないよね?」 確認をするように呟くと、軽く頷くレドベージュ。 「ああ、さすがにここまでやると、回復もできないであろう」 その答えを聞くと、団扇を見つめる湖張。 「それにしてもコレ、物凄い切れ味・・・ううん、切れ味とかそういうのじゃなくって 斬ってないところまで延長して斬れたから相当危険な物なんじゃないの?」 「そうだな、だから使える者を限定しているのであろうな」 自分のやった事が […]
茂みから姿を現したのは水牛のような黒い角を持った全長が3mほどある大型の獅子のような魔物であった。 薄茶色の毛で覆われた体に、赤い瞳を持った容姿は異端の魔物という雰囲気を醸し出している。 「これが作られた魔物なの?」 レドベージュに湖張がそう尋ねると、鞘から剣を取り出しながら答えが返ってくる。 「ああ、そのようだ。聞いていた特徴と合致する」 「この笛はさ、完成品じゃないって言っていたけど、やっぱり […]
「待て待て待て待て!敵ではない!敵ではない!!」 「うそーっ!このリビングアーマー喋った!?」 出会って早々、いきなり臨戦態勢の湖張に慌てるリビングアーマー。 その一方で本来喋るはずもない魔法生物であるリビングアーマーに驚く湖張。 双方とも想定外のことが起きて思わず大きな声が出る。 「とりあえず待て、我は戦う気は全くない。落ち着いてくれ」 最初に切り出したのは赤いリビングアーマーの方だった。 両手 […]
「そんな弱い明かりではやりづらかろう? せめて光は与えてやろう」 火の玉がそう言うと、どのような仕掛けかは分からなかったが、 突如として天井が光始め、広間全体が見渡せるようになる。 今まで薄暗くて分かりづらかったが、明かりがつくと改めて目の前にいる紺色の鎧の化け物は巨大であると感じる。 「相手は大きな鎧だけど中身はなさそう? 生きている鎧・・・リビングアーマーかな?」 「さあお主の力、見せてもらお […]
「ちょっと、どういう事?」 予想だにもしなかった現象が起きたので、驚きつつも光り輝く団扇を手に取る湖張。 その光はとても強く、ランプの光はかき消されているほどであった。 「ほう、今はお主がその団扇の持ち主か」 祠の方向から年老いた男の声が聞こえる。 とっさの出来事で身構える湖張。 「そう身構えなくても良い」 その声が聞こえると団扇の光は消え、代わりに祠から青い火の玉がうっすらと浮かび上がる。 「・ […]
「それじゃあ行ってくるね」 着替えを済ませ、軽く老人に挨拶をする湖張(こはる)。 「おお、やはりよく似合っておるな。意外と動きやすかろう?」 孫娘の晴れ姿を見るかのようにうれしそうな顔を見せる老人に少し照れくささも感じる一方、未だに何故団扇に法被なのか腑に落ちていない湖張。 しかし意外なことに、特注の法被を身にまとってみると、とても軽い素材であり、尚且つ動きやすい事に気がつく。 それに付け加え魔法 […]
「湖張(こはる)、これを持っていけ」 食事が終わり、湖張が食器を洗い終わった様子を確認すると 老人は白い団扇を目の前に差し出す。 「これは?」 湖張が不思議そうに団扇を見ると老人は話を続ける。 「これは覇王の団扇だ。特殊な武器じゃよ」 「え?武器?団扇が?」 理解に苦しむ表情を湖張が見せていると、苦笑いを見せるしかなくなる老人。 それはそうである。団扇を差し出されて武器と言われても、すんなりと理解 […]
「・・・おかしいな、こんなはずじゃないんだけれど?」 やや高い声質の呟き。様子は落ち着いている。 年は16~17歳くらいであろうか。青い法被を身に纏った赤い瞳の娘で、綺麗な黒髪は背中まで届いている。 現在の彼女は洞窟の暗闇に包まれており、 唯一の暗闇への抵抗は右手に持っている僅かな光を放つランプのみ。 そしてその心もとない光は 自分の倍ほど大きく、そして威圧的な得体の知れない鎧の化け物を映し出して […]