静かな夜の宿の部屋。湖張は窓の近くの椅子に腰を掛け、ぼんやりと外を見つめている。ラナナはベッドに腰を掛け、膝の上で猫のように丸くなっているユカリをぼんやり見ながら撫でている。二人とも何かを話す事もなく、ただただ静かな時間が過ぎていく。 「戻ったぞ」 レドベージュがゆっくり扉を開けて入ってくる。そして抱えていた紙袋をテーブルの上に置くなり、中身を取り出す。数種類のクッキーだ。 「夕飯もあまり入らなか […]
日が明けた早朝、湖張はマスターに宿と食事の礼を言う事に合わせて、兄弟子宛に伝言をお願いした。内容はいたってシンプルで「さっさと村に帰って芭蕉心拳を継ぐように」のみであった。マスターからは「それだけかい?」と拍子抜けをされながら聞き返えされるが、特に付け足す事はしなかった。 そして次の目的地に向かうために酒場を後にしようとしたところで、マスターから呼び止められる。 何かと思い振り返ると少し神妙な面持 […]
「もう食べられません・・・」 テーブルに突っ伏すラナナ。弱々しく声を絞り出す。 夜も更け、今はマスターの好意で用意してもらった宿の部屋で寝るだけの状態になっている。 「流石に料理を出しすぎだよね。お礼しすぎ」 湖張も椅子の背もたれに寄り掛かりぐったりしている。 イガザンを倒した後は、まさにお祭り騒ぎになっていた。 「いつぞやの宴会好きな村を思い出しますね」 次々に出される食事に翻弄された事はかつて […]
酒場を出て数件進むと人だかりが視界に入る。多くの人が集まっているようだ。 そして人々の頭上を越えた先に巨大な白い魔物の頭部が確認できる。 特徴的にイガザンである。 「あれがイガザン!?」 立ち止まりラナナに確認を取る湖張。頷くラナナ。 「はい、間違いありません!それにしても人が集まり過ぎていますね」 「・・・やりづらいなぁ」 湖張たちから見て右側は海、左側は飲食店が並ぶ通りだったのだが、 道には大 […]