ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第五話【初戦】
- 2020.05.15
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「そんな弱い明かりではやりづらかろう?
せめて光は与えてやろう」
火の玉がそう言うと、どのような仕掛けかは分からなかったが、
突如として天井が光始め、広間全体が見渡せるようになる。
今まで薄暗くて分かりづらかったが、明かりがつくと改めて目の前にいる紺色の鎧の化け物は巨大であると感じる。
「相手は大きな鎧だけど中身はなさそう?
生きている鎧・・・リビングアーマーかな?」
「さあお主の力、見せてもらおうか!」
湖張が相手の分析をしている間に火の玉が大きな声で合図をするかのようにそう言うと、
リビングアーマーは右手に持っていた大剣を振り上げる。
「しょうがないか」
もう戦いは避けられないことを悟った湖張は独り言をつぶやき終わると同時に、
リビングアーマーの懐まで一気に飛び込む。
そして大剣を振り下ろす余裕を与えぬまま下方向から左足で巨体を蹴り上げ、
鈍い音を周囲に響かせながら軽く上空に浮かせた。

小さな弧を描いてリビングアーマーが飛ばされている間に
右手で作られた光の玉を上空に放り投げる湖張。
その光の玉が天井近くに到達するころには、リビングアーマーは床に落下し倒れこんでいた。
「サンダー!」
彼女がそう叫ぶと、放り投げた光の玉から稲妻が発生し、リビングアーマーに降り注ぐ。
命中した直後、強い光が発生しリビングアーマーを構成していた鎧はバラバラに飛び散ってしまった。
「勝ったかな?」
ピクリとも動かなくなったリビングアーマーを見て火の玉に確認するように呟く湖張。
「おおおおおおお、折角の力試しを用意したのに
覇王の団扇を使わずに倒してしまったのか!?」
湖張の戦い方に納得がいかない素振りの火の玉。
「だって仕方がないじゃない。あんなに硬そうな相手に対して斬りかかるのは良くないでしょ?
ああいう敵にはあくまで打撃と魔法だよ。
それにこの団扇は大切なものなんでしょ?だったら大事に使わなきゃ」
湖張がそう反論すると、火の玉は湖張の目の前まで飛んでくる。
「言っておくが、その団扇はそう簡単なことでは壊れはせん。
それにこの程度の強度のものでも容易く斬ることが出来る」
その話を聞いて何か納得をしたような素振りになる湖張。
「あーなるほどね。それを実感させるための硬そうな敵だったのかな?」
「そうだ・・・」
残念そうな火の玉を相手に苦笑いで誤魔化す。
「あはは、なんかごめんね。でも教えてくれてありがとう」
「まあ良い。とにかくその団扇を受け継いだのだ。大切に、そして正しき事のために
それを使ってくれ。それが伝えたい内容の根本にあることだ」
「わかった。大切にするね」
そう言うと、火の玉はうっすらと消え始める。
「・・・その様子だとあなたはまた眠っちゃうのかな?
おやすみなさい。ありがとうね。
ただ、できれば私がここを出るまでは洞窟の明かりをつけていて欲しいかな」
どさくさに紛れてお願いをする湖張。すると火の玉は消えかかってはいたが、ぼやき始める。
「まったく遠慮がないやつだ。
まあ良い。初めての接客だ。そのくらいは良いだろう」
そう言うと火の玉は完全に消えたが、照明はついたままであった。
さらには、今までは広間のみの明かりであったが、丁寧に通路も光っているようだ。
「なんだかんだで優しい火の玉だったのかな?」
そう呟いて広間を後にしようとする湖張。
しかし出口に向かうために通路に出ようとするが突然立ち止まる。
「優しいと言ったのは前言撤回になるかな・・・」
呆れた表情でため息をついた後、すぐさま臨戦態勢のような雰囲気に変わり身構える湖張。
何故なら彼女の目の前には、自分の胸くらいの高さで
足が短く頭の大きな赤いリビングアーマーが突如として現れたからであった。

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