ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三話【いざ洞窟へ】

           

「それじゃあ行ってくるね」
着替えを済ませ、軽く老人に挨拶をする湖張(こはる)。
「おお、やはりよく似合っておるな。意外と動きやすかろう?」
孫娘の晴れ姿を見るかのようにうれしそうな顔を見せる老人に少し照れくささも感じる一方、未だに何故団扇に法被なのか腑に落ちていない湖張。

ピースキーパー赤き聖者003話

しかし意外なことに、特注の法被を身にまとってみると、とても軽い素材であり、尚且つ動きやすい事に気がつく。
それに付け加え魔法に対する抵抗力が高いという事なので、これはこれで有りなのではないかとも少し感じ始めていた。
だが、それでもデザインは法被でなくても良かったのではないかという疑問はぬぐい切れてはいないのも事実。
しばらくこの葛藤は続きそうである。

そんな事を思いながらも、指示された洞窟へ向かう湖張。
目的地へは徒歩で40分くらいと、そこまで遠いところではなかった。
湖張自身もその洞窟のそばへは何度も行ったことはあったので迷うことは無かったのだが、
中に入る事は初めてだったので、少しだけ気を引き締めて洞窟に入る。
しかしながら、特に難しい試験でもないようなので、荷物は洞窟内を照らすランプと水筒のみと、軽装であった。

洞窟の中は暗く、手元のランプの明かりのみが頼りであった。
少し肌寒さは感じるものの、それ以外はこれといって問題はなく黙々と先へ進む湖張。
特に分岐する道もない細い一本道が続いており、10分ほど進むと広い空間にたどり着いた。

「ここが終点?」
ランプを上の方にかざすと、奥の方に小さな祠が見える。
老人が言っていた祠はきっと目の前のものに違いない。
そう感じ祠に近づく湖張。

ランプを祠の前に置き、じっと見つめると木製の扉があることに気が付く。
そして両手でゆっくり扉を開けると、中には小さな巻物があった。

「これを読めって事かな?」
巻物の紐をほどき、中を見るとたった一文のみが記されていた。

「芭蕉の力は正しき道の為にあり」

ランプのうっすらとした明かりを照らした巻物に書かれていた文字を読むと、
湖張は一呼吸おいてから、再び巻物をもとの形に戻した。

「そうか、おじいちゃんが何度も正義のために力を使えと言っていたのは
この巻物を読んだからなんだ。これは、力を悪用しちゃいけないという戒めなんだね」

力というものはどうしても誰かを、そして何かを傷つけてしまう側面がある。
なので悪い方向に力を使わないように気を付けなければいけないという事を再認識させるための儀式なのだと理解する湖張。そう考えると、何か清々しい気持ちになった。

自然と祠に一礼をする湖張。
そしてもうこの場所には用事がないと感じ、祠に背を向けてその場を去ろうとする。
しかしその時、異変が起こった。急に団扇が光り出したのである。

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