ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八話【赤き聖者として】
- 2020.05.24
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者
「流石にもう回復しないよね?」
確認をするように呟くと、軽く頷くレドベージュ。
「ああ、さすがにここまでやると、回復もできないであろう」
その答えを聞くと、団扇を見つめる湖張。
「それにしてもコレ、物凄い切れ味・・・ううん、切れ味とかそういうのじゃなくって
斬ってないところまで延長して斬れたから相当危険な物なんじゃないの?」
「そうだな、だから使える者を限定しているのであろうな」
自分のやった事が未だに信じられない湖張。
これは自分自身の力ではなく手元の団扇の力だと思うと、手元の武器に対して少々怖さも感じてくる。
こんな物を手に取って良いものか、よく考える必要があると感じていた。
そして湖張は胸に手をそっと当て神妙な面持ちになる。
(それにしても何だろう、妙に胸騒ぎがする。何か破裂しそうだよ)
心の中でそう呟く湖張。団扇を力強く振ってからというもの、鼓動が速くなり体に違和感を感じていたからだ。
「とりあえずこれで一安心といったところか。
直ぐには森の動物がこの地に戻ってくるとは思えないが、
そう遠い話ではないであろう。何より村人が魔物に襲われる危険は無くなったはずだ」
湖張の違和感など分からないレドベージュは普通に話しかけてきたが、このタイミングで彼女の神妙な様子に気が付く。
「どうかしたのか?」
「え?あ、いや何でもないよ。ちょっと団扇の事で驚いただけだよ」
「大丈夫か?様子が変だが」
団扇の力に唖然としていた湖張を見ると、心配そうに尋ねてくる。
「・・・ええ、ちょっと団扇の力が想像以上だったから驚いているだけ。平気だよ」
そう言うとジッとレドベージュを見つめる湖張。
団扇の力も気にはなっているが、レドベージュ自身の力にも気になる事があった。
近づいてもいない魔物に重傷を負わせたレドベージュの技は、思い出すだけでも凄まじいものがあり、それこそ神がかっている技に思えた。
更にその見た目からは想像もできないほどの軽やかな身のこなしは、通常のリビングアーマーでは考えられない動きであった。
そして今までの言動からしても本当に神話に出てくる天将レドベージュなのかもしれないと思えてくる。
「さっきのアナタの技、とても凄かった。あんな技が出せるという事は、やっぱりアナタは天将レドベージュ様なの?」
確認するように尋ねる湖張。
「だから初めからそうだと言っているであろう?」
ゆっくりと優しく答えるレドベージュ。そして話を続ける。
「今お主が戦った事で、村の人々の安全や生活を守ることが出来た。
確かに危険が伴い、怖い部分があるかもしれないが
誇りを持って己の力を世の為に使える事は悪くないとは思えないか?」
レドベージュのその言葉から、赤き聖者の活動の必要性を伝えようとしているのかと感づく。
確かに、自分の行動は間接的に村人の生活を守ったと言えるであろう。
そう思うと無下に出来ない話なのではないかと感じたが、だからと言って
すぐさま了承が出来る話でもないような気もする。
「ひょっとして勧誘の続き?」
とりあえずワンクッション置く湖張。
「まあ、そうだな」
頷くレドベージュ。潔く認めたようだ。
「もう一度、聞いていい?何で私なの?
レドベージュ様だったら強いから一人でも世の中を救えるんじゃないの?」
もう少し情報が欲しいと思った湖張は、あえて困らせるような質問をしてみる。
すると首を横に振るレドベージュ。
「そんなことはない。我一人ではどうしても限界はあるさ。
どうしても一人では太刀打ち出来ない困難にぶつかることがある。
一人とは脆く弱いものだ。それは天将であっても同じこと。
どうしても仲間の力が無いと大したことは出来んよ」
何かを悟っているかのようにそう言うと、彼は村の方向を向く。
「それにな、天とて全ての人の世の事情を把握しているわけではないのだ。
知ろうとするには調べる必要性が出てくる。
例えば家に庭があるとするであろう?
その庭は自分が管理をしていたとしても、庭にどんな生物いて、それぞれが何処で何をして何を考えているかというのは、何もしないまま、ただ眺めているだけでは分かるまい?庭に入り込んでしっかりと調べなくては詳しくは分からないのだ。
それと同じだ。天から見ているだけでは世の中の事情は分からぬ。
それでいて人はとても賢い。把握しきれていない世の中だというのに、
人は悪事を世の中に隠れて行う。なので人の世に入り込まないと悪事を見つけきれないのだ。
だが我はリビングアーマーだ。どうしても人の社会に入りきることは出来ない。
・・・なので、湖張のような人間が必要なのだ。
強い力を持ち、清い心を持つ人の社会に入り込める存在が」
天の者というものは万能で、何でも出来るというイメージであったが実際はそうではないらしい。
万能ではない天の使いというものには凄みを感じず、信じられないと考える人もいるかもしれないが、湖張はその反対であった。
己の力が及ばない点を包み隠さず伝え、そして自分に協力を要請する姿勢がとても正直な態度だと感じ、信じても大丈夫じゃないかと思ったのである。
それに伴い、ここにきてようやく本当にレドベージュは天の使いなのだろうと不思議と信じられるようになってきた。
そしてここまで天の者が自分の事を必要だと申し出てくれているのである。真剣に検討するべきことなのではないかと感じる湖張。

「分かりました。本当に私で役に立てるか分かりませんが、前向きに検討してみます。
でも私一人だけでは決められません。おじいちゃんに会っていただけますか?
私を育ててくれた家族なのです。
旅に出ることになるのでしたら相談をしないとなりません」
この方は天の使いなのだと認めると、自然と言葉を正す湖張。
そしてレドベージュは軽く頷く。
「もちろんだ。保護者なのだろう?もとよりそのつもりであった」
「ありがとうございます、それでは家にご案内いたします」
軽く一礼をする湖張。そして、先を急ぐように二人は洞窟前を後にした。
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