ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第四十九話【天将の眠り】
- 2020.10.11
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
うっすらと目を開けると、外が明るい事に気が付く湖張。
外からは鳥のさえずりと人の話し声がかすかに聞こえてくる。
どうやらあの後は直ぐに眠りついたようで、今は既に朝を迎えたようだ。
人の話し声が聞こえるという事は、恐らくあのまま村人は飲み続けていたのであろう。
以前もそうであったので不思議ではないのだが、目が覚めて早々に苦笑いがこみあげてくる。
そんなこんなですっかり目が覚めたので、体をゆっくりと起こす湖張。
そして軽く背伸びをすると、少し違和感を感じ始める。
というのも、毎朝このタイミングでレドベージュが声をかけてくるのだが、今日に限っては彼の声がかからない。
不思議に思い部屋を見渡す。
すると部屋の隅で足を延ばし、俯きながら座っているレドベージュの姿が目に入る。
そして彼はピクリとも動いていない。
「・・・レドベージュ?」
数秒ではあったが物凄く長く感じる時間の中でジッと見つめた後に恐る恐る声をかける湖張。
様子がおかしい事を直観すると、物凄い不安な気持ちが心の中を占領してくる。
しかし湖張の声は届かず、レドベージュからは何も反応が得られない。
一方で彼女の声により異変を感じたのか、ラナナも身を起こしベッドから立ち上がり湖張のそばに近づいてくる。
「どうしたのですか?」
恐る恐るといった雰囲気でレドベージュを見つめながら話しかけてくるラナナ。
すると湖張は首を横に振って答える。
「分からないの、起きたらレドベージュがあんな感じで全く動かなくて・・・」
そう言うと、ベッドから立ち上がりゆっくりとレドベージュに近づく湖張。
ラナナも一歩後ろで湖張について近づく。
「レドベージュ?」
彼の近くで再び呼びかける湖張。
しかし何も反応がない状態は続いている。
またそこまで近づくと、目の部分が真っ黒になっており、青い目も黒い瞳も見えない状態であることに気がついた。
「ちょっとレドベージュってば!」
全く動かなくなったレドベージュに対して不安が募り、思わず大きな声で呼びかける湖張。
そして肩に手をかけて小さくゆすると、彼の青い目と黒の瞳が映し出され、むくりと顔を湖張の方に向ける。
「・・・む?朝になったのか?」
何事もなかったかのように確認をしてくるレドベージュ。
その様子に思わず力が抜ける湖張とラナナ。
「朝になったのかじゃないわよ。いきなり動かなくなったからびっくりしたじゃない!」
「ふむ、驚かせてしまったか。すまぬな」
そう言うと、座っていた状態から立ち上がるレドベージュ。
「あの、ひょっとして寝ていたのですか?」
ラナナが覗き込みながらそう尋ねると、レドベージュは首を縦に振る。
「うむ、昨夜は寝ることにした」
その答えを聞くなり驚いた表情でお互いを見つめあう湖張とラナナ。
「え?あなたって寝ないんじゃなかったっけ?」
「うむ、基本的には寝ないぞ」
「でも今は寝てたんだよね?」
その質問を投げかけると、彼は部屋の端から真ん中の広い場所まで移動をする。
「うむ実はな、ずっと活動をしていると喜怒哀楽の感情がどんどん溜まっていくのだ。
そしてそれらの蓄積量が多くなってくると、大きな感情になり様々な判断に支障をきたしてくる。
人ならば忘れるという行為があるので問題は無いが、我の様な忘却の機能が無い者にとっては問題だ。
なので、このように時折眠っては感情を落ち着かせ情報を整理するのだ。
そして正常な判断が出来るように自らをメンテナンスする時がある。
それが昨夜だったというわけだ」
「要するに、眠って頭をスッキリさせたっていう事だよね?つまり大丈夫という認識で良いの?」
腕を組み確認をとる湖張。何やら難しい事をを言っているので難しい顔になってしまう。
「うむ、そんなところだ」
晴れやかな雰囲気で返事をするレドベージュ。
思い返してみると何やら切なそうな雰囲気が幾度となくあった気がするので、
眠ったことはそれが影響しているのかもしれないと思えたが、あえて聞くことはしなかった湖張。
これでマイナスの感情が薄れるのであれば良いとも思えてくる。
「それじゃあ支度をして出かけるとしようか」
「うむ、そうだな」
とりあえず問題はなさそうなので、そう言って仕切り直しをする湖張。
それにレドベージュも同意しするが、ラナナは動き出さずにレドベージュをジッと見つめている。
「む?どうかしたか?」
その視線に気づいたのかレドベージュがそう問いかけると、
ラナナは視線だけを一度逸らし、一呼吸置いたタイミングで口を開く。
「・・・頻繁にこうやって眠るのですか?」
心配からなのか、それとも興味からなのかは判断が出来なかったが、
窺うように問いかけるラナナ。
「いや、そう滅多には眠らないぞ」
心なしかスッキリとした雰囲気でそう答えるレドベージュ。
その答えを聞くと、ラナナは「そうですか」と返事をし、再び少し考えた後に着替えを始める。
「そういえば外から話し声が聞こえますが、ひょっとしてあれからずっと飲んでいるのでしょうか?」
話題を切り替えるためなのか、暫くしてからラナナがそう話しかけてくる。
「ああ、そうだと思うよ。前もそうだったし」
帯を締めながら湖張がそう答えると、苦笑いを見せるラナナ。
「凄い体力と胃袋ですね。私ならしばらく寝込んでしまいそうです」
「そうだよね。そういえば朝食どうしようか?
ひょっとしたら昨夜で胃がもたれているとかない?」
「大丈夫ですよ。ただ軽めのサラダとスープで良いかもしれません」
「そうだね、じゃあ軽めにしようか。
それで昼用のパンを買ってから出かけよう。何時くらいに戻れるか分からないし」
「そうだな、それが良かろう。
うまく魔物の群を見つける事が出来れば良いのだが見つからない事も想定できる。時間が読めないな」
「するともう一泊する?宴会だろうけど」
「まあその方が無難でしょうね、荷物も置いていけますし。
・・・宴会でしょうけど」
「うむ、そうするか。宴会になるだろうがな」
三人がそう言うと、自然と小さな笑いがこみ上げてくる。
そうやり取りをする間に着替えが終わると、三人はさわやかな雰囲気で部屋を出発するのであった。
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