ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十七話【奥で待つ守護者】

           

「それじゃあ行ってきます」
修練鳥が飛んでくる部屋の入り口で振り返りレドベージュとウンバボに挨拶をする湖張。
一夜明け早速最奥で待つとされる守護者の元に向かう事にする湖張とラナナ。
気のせいかレドベージュもウンバボも心配が顔に出ているような気がする。

「お前たち、危ないと思ったらすぐに戻ってくる。
守護者とても強い。何も焦って今日倒さなくても良い」
「別に焦っているつもりはないけど・・・でも分かったよ。ありがとう」
その発言からすると、やはり心配をしているのであろう。そのくらい守護者とは強いようだ。
心してかからないといけない相手だと改めて感じていると、
急に体が薄っすらと光り出し始める。不思議に思い周囲を見渡すと、レドベージュが二人に魔法を掛けていた。

「本当はこのような事をするのは修練の妨げになるのかもしれないが、まあ良かろう。
防護の魔法だ。1時間は持つであろう」
「そんなに守護者って強いの?」
二人の心配そうな様子に思わず聞いてしまう湖張。すると彼らは同時に頷く。
「うむ、無理はするな」

「分かった、そうさせてもらうよ。それじゃあそろそろ行こうか、ラナナ」
このままここにいると、行くのを止められそうな雰囲気になりそうだったので
簡単に返事をして早々に奥へ進むことにした二人。

「・・・これは私たちが思っている以上の相手なのかもしれませんね」
部屋を移動するとポツリと呟くように話しかけてくるラナナ。
彼女も二人の心配そうな雰囲気を感じ取っていたようだ。
「そうだね、これから挑戦する人を不安にさせる素振りだよあれは」
「ですよね。普段なら冗談を交えてくるウンバボさんなのに、今日は神妙でしたからね」

「ねえラナナ、逃げるときって走るのと宙を飛ぶの、どっちが早い?」
真面目な顔をして質問をする湖張。
「飛ぶ方が早いですよ」
「そう、そうしたらさ、逃げることにしたら私に構わず全力で飛んで逃げてくれる?
私も全力で逃げるから。何か情けない話だけど今から逃げる算段をしておいた方が良い気がしてさ」

「何とも後ろ向きな感じですが・・・そうですよね。分かりました。全力で飛んで逃げます」
「うん、私も全力で逃げる」

何となく暗い雰囲気になってきたところで、目の前から修練鳥の群が飛んでくる。
「何かスッキリしないから、とりあえず肩慣らしで気分転換しよう」
そう言いつつ手を光らせる湖張。
「そうですね、勝つイメージを頭に植え付けることは重要と本で読んだことがあります」
続くように魔法を放つ準備をするラナナ。

「それじゃあ行くよ!」
湖張が大き目の声で合図をすると、同時に魔法を放つ二人。
そして昨日の練習通りの流れで、問題なくスムーズに修練鳥の群を倒した。

そのような感じで順調に次から次へと修練鳥の群を倒していく二人。
昨日までは奥に進むことは無く、手前でずっと戦っていたのだが、今日は最奥を目指すために
どんどん奥を目指す。その過程で気づいたことは、意外と修練場は奥に伸びており
進むにつれて修練鳥の出現頻度が早くなってくるという事だ。

今までよりも短時間で鳥の群を倒す必要があるので
昨日の持久戦を試す場合はここら辺まで来た方が良かったと感じられる。
そんな事を戦いの合間に話しながら突き進む二人。
そうこうしている間に、大きな鉄の扉の前まで辿り着く事になる。

「ここが一番奥?」
「いかにもこの中に守護者がいますといった雰囲気ですね」
目の前の扉は馬車が通れるくらい大きな幅があり、まるで砦に備え付けられている程の大きさであった。
重厚感のあるその見た目から、これは開けるのは大変そうだと感じ取れる。

「準備は良い?」
この奥には強いと言われている守護者がいると考えられるので、扉を開ける前にラナナに確認を取る湖張。
「はい、大丈夫ですよ。ところで作戦はありますか?」
「そうだね、やばかったら逃げる。そのくらいかな?」
苦笑いで湖張がそう言うと、小さく微笑むラナナ。
「分かりました。とりあえずどんな相手かも見当がつきませんから、
とりあえず修練鳥と同じ流れで行きましょうか?」
「そうだね、そうしよう」

簡単に打ち合わせると扉に手を添える湖張。すると力を入れてないにもかからわらず、
自動的に扉は奥に向かってゆっくりと開き始める。

扉の隙間から徐々に中が見えてくると、そこは石畳が敷き詰められた広い円形状の闘技場の様な場所であった。
洞窟内なので当然のように空は見えないが、天井はとても高い位置にあり、薄っすらと光って闘技場全体を明るく照らしている。

そして闘技場の中心の位置には5人の人が横に並んで湖張たちをジッと見つめている。

「あれが守護者?」
確認するように呟く湖張。
守護者と思われる存在は5人組で、全員白い仮面を身に着けている。
しかし共通する見た目はその仮面だけで、司祭の様な服装でメイスを握りしめている大きな体型をした男と思われる者、
魔法使いの様な姿の女性と思われる細身の体型の者、全身鎧の騎士と思われる剣を持った者、軽装の兵士の様な姿で長い槍を持った者、
そして一般市民の様な姿でナイフを持った者といったように、それぞれの姿はバラバラであった。

「人?・・・いや、違うね」
「おそらくこれも練習用の相手なのだと思います」
人の様な姿をしてはいるが生気の様な物が感じられず、まるでマネキン人形の様な不思議な雰囲気であった。
それらの異様さを感じ取りつつ、ゆっくりと闘技場の中に入るが、守護者達は微動だにせず
まるでこちらの動きをジッと観察しているかのようである。

「不気味ですね・・・」
ラナナが横に並んで歩きながら視線を逸らさず呟くように話しかけてくる。
闘技場自体が薄暗いという事もあるので余計にそう感じるのかもしれないが、彼女の言う通り不気味ではある。
いつ仕掛けてくるか分からない。そう感じると先手を打った方が良いのではないかと思えてくる。

「・・・仕掛けるよ」
「はい」
小声で打ち合わせる二人。そして湖張の手が光り出すと、それを合図にするかのようにラナナも魔法を放つ構えを取る。

「いけ、サンダークロス!」
「フレイムフェンス!!」
二人の魔法が合わさり、横に並んだ守護者達に向かって放たれると、修練鳥の時と同様に魔法が見事に交差する。
全員に直撃を与えることが出来たので、先手としては上出来と感じられる。

しかし次の瞬間、二人はその目を大きくして驚愕する事になる。
というのも、全くと言っていい程に効き目が無く、一斉に5人の守護者達が前方に飛び出してきたのだ。
そして中央に立っていた全身鎧の騎士は離れた位置で立ち止まり両手を二人にかざしたと思うと、小さな青色の光弾を大量に放ち攻撃を仕掛けてくる。

「ラナナ!?」
迫りくる光弾に危険を感じ取ると、ラナナを気にする湖張。
するとラナナは前方に赤い防御壁を展開し湖張に視線を向け訴えかける。
「避けて!!」
普段の丁寧な口調ではなく、余裕が無い咄嗟に出た言葉を放つと、湖張は横に飛んで光弾を避ける。
一方ラナナは展開した防御壁で光弾を全て防ぎ切った様子だ。
しかし安心する隙は無く、ラナナの目の前に司祭が接近してきて握りしめたメイスを振り上げ襲い掛かる。

(しまった!?)
光弾に気を取られて敵の接近を許してしまい、窮地に立たされるラナナを見て焦る湖張。
そして攻撃を阻止するべく覇王拳を放とうとする。
しかしその時である。魔法使いの女性の様な姿をした守護者が手に持った長い杖を振り回し湖張に襲い掛かる。

「邪魔をしないで!」
魔法使いの攻撃を高く飛び上がってかわし、上から司祭に目掛けて技を放つ湖張。
「覇王拳!」
彼女の技が司祭に向けて飛んでいくがタイミングが間に合わず、司祭のメイスはラナナの防御壁を強く打ち付け、粉々にしてしまった。

「そんな!?」
強固な防御壁を一撃で破壊されたので驚愕をするラナナ。そしてタイミングが悪い事にその場面で湖張の放った覇王拳が司祭に命中し、
爆風と砂塵を発生させてしまいラナナの視界を遮ってしまう。
それにより、一歩下がるようによろめいて顔を背けてしまうラナナ。
しかしそのままでは第二の攻撃でやられると感じ取り、周囲を確認しないまま後方に飛ぶラナナ。
だが彼女への追撃は終わらず、一般市民の様な服装をした手に短剣を持った守護者が上空から飛び掛かってきた。

「でやぁぁぁ!」
ラナナに降りかかる寸前で横から飛び蹴りを短剣の守護者に対して浴びせ、相手を飛ばす湖張。
間一髪のところであった。しかし守護者の攻撃が止むことは無く、着地した湖張に目掛けて
槍を持った守護者が突進をしてきて素早い突きで襲い掛かる。

(早い!)
身を反らしギリギリのところで攻撃をかわす湖張。そして体の前を槍が通過したタイミングでラナナは槍の守護者に向けて
小さな炎の玉を放つ。
しかし槍の守護者は攻撃を仕掛けた直後だというのにも関わらず、身軽に横方向へ飛び魔法を避けてしまう。
その動きに驚きを隠せないでいる間に、少し後方にいた騎士が再び大量の光弾を二人に目掛けて放ってくる。

「また来るよ!」
湖張が合図をするなり今度はラナナも防御壁を展開するのではなく回避をし、数多くの光弾が横を通過していく。
しかしその時であった、長い杖を持った守護者がラナナを足止めをするかの如く杖を振り回してくる。
「もー!」
このタイミングで襲ってきたことに苛立ち、防御壁を展開し叩きつけるように守護者に向かって突き出すラナナ。
すると守護者は正面から衝撃を受け、3mほど後方に飛ばされる。

「ラナナ、撤退!!」
そのタイミングで大きい声で指示を出す湖張。
「引くのですか!?」
守護者を飛ばした直後での事だったので確認を取るラナナ。
「駄目、攻撃が全然効いていない!短剣の人も今の杖の人もピンピンしている!」
「え!?」
湖張の言葉を聞くなり、突き飛ばした直後の杖の守護者に視線を移すラナナ。
すると、すでに立ち上がり杖を構えている姿が目に入る。
弱るどころか今にも襲ってきそうな雰囲気であった。

「まだ余裕があるうちに、早く!」
「分かりました!」
そう言うとラナナは体を宙に浮かせ、床をすべるように高速で撤退を始める。
そして湖張は殿を務めるかの如くその場からは直ぐに離れず、
数発の光弾を地面に向かって放ち小規模の爆発を発生させ、辺りに煙を巻き散らして視界を遮った。

「湖張姉さま!?」
爆発音に反応して振り返るラナナ。その声の直後に湖張は全速力で撤収を始める。
「振り返らないで!早く逃げて!私も逃げる!」
湖張の行動を確認するなり再び高速で撤収をするラナナ。
そして二人は急いで闘技場を後にするのであった。

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