ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百五十六話【兄弟子について】
- 2025.12.11
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「もう食べられません・・・」
テーブルに突っ伏すラナナ。弱々しく声を絞り出す。
夜も更け、今はマスターの好意で用意してもらった宿の部屋で寝るだけの状態になっている。
「流石に料理を出しすぎだよね。お礼しすぎ」
湖張も椅子の背もたれに寄り掛かりぐったりしている。
イガザンを倒した後は、まさにお祭り騒ぎになっていた。
「いつぞやの宴会好きな村を思い出しますね」
次々に出される食事に翻弄された事はかつての宴会好きの村を思い出させられる。
ラナナがそう呟くと、湖張は姿勢を変えずに受け答える。
「あー元気にしているかな」
「まあ、元気でしょうね」
「だろうね」
「・・・そいうえば結局、兄弟子さんは戻ってきませんでしたね」
「あー」
気のない返事の湖張をジッと見つめるラナナ。そしてさらに踏み込む。
「明日、籠っている山に行ってみます?」
すると湖張は天井をジッと見つめながら少し考える素振りを見せる。
「いや、良いよ。それより先を急ごう。ゼンさんの依頼もあるし」
「そんな、折角会えそうなのに」
「・・・会いたくないのが本音かな」
その返答に気分を害したのかと感じ、少し失敗した表情になるラナナ。それに気づいたかのようなタイミングで湖張は前のめりに姿勢を変えて話しかける。
「ああ、別に兄弟子が嫌いとかそういうのじゃないよ?前にも言った通り鬱憤は溜まってはいたけれども、尊敬していた部分はあるんだよ。ただ、会いたくない理由があってね」
「理由・・・ですか?」
「まあそれは手合わせが関係しているのだけれども・・・圧倒したとは前に伝えたけれども、その話には裏があってね」
「裏・・・ですか?」
「そう、兄弟子は本当に強い人なの。それっこそタウンさんとだって引けを取らずに渡り合えると思うよ?そのくらい強い人。だからずっと対策を練っていたの」
「常にどうやって倒すかを考えていたと言っていましたよね」
「うん。動きも見慣れていたから倒すなら初手と思っていたの。だから一撃で倒せる、まさに必殺技だよね?それを誰にも見せず、知られずに準備しておいたんだ」
「それを10秒で決めたのですね?」
「あっちも驚いたと思うよ?兄弟子にとっても私の技や動きは見慣れていたはずだから、油断もあっただろうね。お互い手の内は知っているから、いきなりは仕掛けてこないと踏んでいただろうし、その中で見たことが無い技だもん。前知識が邪魔をしたんだろうね。戦いはさ、基本初見同士、手の内が分からない同士だから見たことが無い技を放たれたというのは言い訳にしか過ぎないのだけれども、さすがにずっと見てきた妹弟子が謎の技を放つのは予想できないって」
「つまり秘密の技があったから倒せただけとお考えで?」
頷く湖張。
「そう。だけど次はうまくいくとは考えにくいんだ」
そう言うと窓の外を見る湖張。そして話を続ける。
「次に会ったら、きっと手合わせを申し込まれる。油断はせずにね。それに山に籠って修行もしっかりしているのでしょう?強くなっていると思う。私も皆との旅で得たものは多かったけれども、手合わせをしたら無事でいられないかもしれない。それで旅に支障が出るのは嫌なんだよね」
「支障って・・・そんなに強い方だったのですか?」
「そうだよ。だからおじいちゃんが戦う事を禁じていたのも不思議に思っていなかったんだよね」
そう言ってレドベージュに視線を移す湖張。
「とういう訳でさ、明日はもう出発で良い?マスターには村に帰るように伝えてもらおうと思うけれども、直接は合わない方が良いと思うんだよね」
頷くレドベージュ。
「うむ、湖張がそう考えるのならば構わぬ。それが最善なのであろう?」
「まあね。それにまた勝っちゃったら、それこそ村に帰ってもらえなくなりそうだからね。早く帰って芭蕉心拳を継いでもらいたいんだ」
苦笑いを彼女が見せると、ラナナも同じような表情になる。
二人の様子を確認すると、レドベージュは手から光の粉を放ち部屋中に巡らせる。
「ではそろそろ眠ると良い。今日も色々とあった。疲れたであろう。ゆっくり休むのだ。コレで心も落ち着くであろう」
「そうだね、おやすみ」
そう言ってベッドに向かう湖張。ラナナも軽く頷いた後、ベッドに向かう。
「ユカリも寝ますよ」
ラナナが床に座っていたユカリに声をかけると、機嫌が良さそうにベッドに飛び乗ってくる。
二人が布団をかけ終わった事を確認すると、レドベージュは部屋の灯りを消し、静かに見守るように朝を待つことにした。
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