ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第五十話【様子見の朝】

           

朝食を軽くとるために食堂に行くと超宴会はまだ続いていた。
ここまでくると呆れるを通り越して、村人の体力についつい感服してしまう。

「お、湖張ちゃんおはよう!!」
「昨日はうるさくて眠れなかったかい!?」
「おら、朝っぱらから絡んでるんじゃねえ!」

上機嫌で話しかけてくる酔っ払い達を追い払う様に宿屋の主が近寄ってくる。
「いやあ、すまねえな。朝っぱらから見苦しくてな!」
顔を真っ赤にしながら宿屋の主が大きな声でそう言うと、苦笑いの湖張。
この様子からすると、宿屋の主も一晩中飲み明かしていたのであろう。
「いえいえ、楽しんでいるようで何よりです。
それより、軽く朝食を取りたいのですけど良いですか?」

そう話を持ち掛けると、満面の笑みで宿屋の主は大きく頷く。
「もちろんだとも!何を食う?肉か?肉がいいか!?」
「いや、流石に朝からそれは・・・スープとサラダでいいよね?」
話の途中からラナナに確認を取るように尋ねると、彼女はゆっくりと頷く。

「そうかそうか。あとパンも食うよな?」
ラナナの様子を見た後に更にそう聞いてくる宿屋の主。
すると、それに反応をするように湖張が話しかける。

「あ、そのパンですが今はいいので、お昼用に頂いていいですか?
と言うのも実は今日もちょっと出かけてこようと思うのですよ。
なので外出先で食べようかと。
そしてまた夜には戻ってこようと思いますので、ついでにもう一泊の予約もここでして良いですか?」

そのお願いを聞くと、常に上機嫌な表情である宿屋の主は、さらにとても嬉しそうな顔を見せる。
「おう、もちろんだとも!今日だけではなく明日も明後日もいいぞ!」
「いや、流石にそれは・・・」

湖張の反応にはお構いなしの様子で厨房に向かい大声を上げる宿屋の主。
「おーい、湖張ちゃんとラナナちゃんの朝飯を用意してくれ。
サラダとスープだ。大至急な!
あと、昼飯にパンを用意しといてくれ!フルーツも一緒に入れとけよ!」
「へい!!」

厨房から元気な返事が返ってくると、宿屋の主は比較的に静かな席に湖張たちを案内する。
「ほら、ここなら落ち着いて食べられるだろ?ゆっくりしてってな!」
そう言うと、再び宴会の席に戻る宿屋の主。
一応接客もしつつ自分も楽しむスタイルのようだ。

「朝から賑やかですね」
微笑みながら、そうポツリと言うラナナ。
昨日から村人の前では黙りっぱなしだったので不快に思っていたのではないかと湖張は心配をしていたのだが、
未だに続いている宴会を見るその顔は、別に嫌そうではないと感じ取れた。
「ラナナはさ、こういう雰囲気は苦手?」
何気ない素振りで質問をする湖張。今後の事も考えると、より正確に人となりを知っておいた方が良い気がしたからだ。
するとラナナは苦笑いを見せて答える。

「そうですね、正直なところどうやって振舞って良いのか分からないというのがありまして、
どうしても戸惑ってしまいますね。学校に通っていた頃は物静かな人ばかりで、ここまで大騒ぎのイベントは有りませんでしたし。
でも皆さんが楽しそうなので悪い事ではないと思います。なので好きか嫌いかでは答えられないですね。
ただ、この宴会が開催された事は嬉しい事だとは思えます。
というのも盗品が持ち主の手元に戻った時、皆さんはとても嬉しそうな顔をしていたじゃないですか。
その時の喜びの延長がこの超宴会だと考えると、開催をするきっかけに携われて良かったとは思えますね」

ああ、この子は本当に良い子なんだ。

決して得意ではない事に対してただ単に否定をするのではなく、
肯定する視点をしっかりと持って発言をする姿勢を見てそう思う湖張。
先ほどの微笑んだ顔もきっとその様な思いから出たに違いない。

「湖張姉さまはどうなのですか?」
そうこうしているうちに、今度はラナナが質問を返してくる。

「そうだね、ラナナと同じような感じかな?」
薄っすらと微笑んでそう答える湖張。簡単に返してしまったが、実際のところ同じような気持ちはあったので間違いではない。
「・・・とは言ったものの、もう少しさっぱりしたものは食べたいかな?」
同じだけと簡単に返すだけではそっけ無さと面白味の無さを感じるので、苦笑いで一文を追加すると、
同じような表情でラナナも答えてくる。

「そうですよね、昨日は肉類が多すぎです」
「そうそう、胃もたれしちゃうよね」
そう二人で仲良くぼやいていると、厨房から山盛りのサラダと
野菜たっぷりのスープが二人の目の前に配膳される。

「はい、お待ちどおさま」
「うわ、これはまた大量ですね」
「ですね」

笑いの無い目で目の前の大盛サラダを見つめる湖張とラナナ。
しかし厨房から出てきて料理を提供した男性は良い笑顔で答える。
「いやいや、このくらいだったら案外といけちゃうよ。
それにパンは今はいらないんだろ?なら余計にこれくらいはいけるって。
スープもあっさり目にしといたから食べやすいよ。だからたくさん食べていってくれよな」
そう言うと、取り皿とドレッシングも机に並べて厨房に戻る男性。

「まあ食べてみようか。案外といけるらしいから」
「そうですね。新鮮そうですし、とりあえず頑張ってみますか」

そうやり取りをすると、取り皿に盛り付ける二人。
瑞々しい野菜たちは非常に食べやすく疲れたお腹に染み渡る感じがした。
また刻まれた野菜がふわっと膨らんでいただけで見かけよりも量は少ないようだ。
よって思いの外、山盛りのサラダは攻略できそうな雰囲気であった。

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