ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第四十七話【宴会の村、再び】

           

山賊達の姿が見えなくなってから、彼らが教えてくれたアジトに向かうと、
そこにはお金の他に、指輪や宝石といった盗品が手付かずの状態で保管されていた。
アジト自体はそこまで広くはないが、人の気配もなく木々に囲まれており見つかりづらい位置にあったので
潜伏場所としてはうってつけの場所ではあった。

盗品が保管されていた場所は洞窟の一番奥で、麻袋の中に雑な状態で詰め込まれていた。
また、お金は別の袋の中に分けて保管をされていたのだが、証言の通りあまり使っていなかったのか結構な額が入っていた。

「そこまでは多くない量だね。これって全部あの村の人たちの物なのかな?」
「うむ、そうかもしれないな。中には他の村や町の者が所有者の可能性はあるが、
このくらいの量ならば、一つの村から取られた物と言っても不思議ではない」
「そっか。じゃあとりあえずあの村に持って行って確認すれば良いよね?
衛兵さんに話して皆に返してもらおうか」
「うむ」

レドベージュが頷くと、ラナナはお金の入った袋を盗品の入っている麻袋の中に入れて一つにまとめ、
浮遊の魔法を掛けてゆっくりと浮き上がらせる。

「貴金属がそれなりに入っていて重いのでこうしましょう。
これでしたら落とすこともないですし、私以外の人は引っ張る事は出来ないので取られることも無いので安心です」
「そうだね、ありがとう」
湖張がそう返事をするとニコっと微笑むラナナ。そして麻袋の口を縛っている紐を引っ張りながらゆっくりと移動を開始する。

山賊達のアジトから目的地である村の距離は、徒歩で一時間といったところであった。
道のりは順調で、心地よいそよ風が吹いている。
手土産ではないが、盗品を持って村に行けば皆が喜ぶと思うと気分までが心地よくなってくるが、
一方でまた盛大に宴会が開かれるのだろうなと思うと、今から苦笑いが出てきてしまう。

そんなこんな考えているうちに村に到着をする一行。
村に入るなり、数人の村民が湖張の姿に気づき満面の笑みで走り寄ってくる。

「あれ?湖張ちゃんじゃねえか!?また来てくれたのかよ!」
「あらーしばらく会えないと思ったのにどうしちゃったの?うれしいわ!」
「ははは、ちょっと色々あって今日も来ちゃいました。
ところで衛兵さんは何処にいますか?ちょっとお話があるのですが」
湖張が村民にそう話すと、男の村民が宿屋に指を差す。

「ああ、確かさっき宿屋にチラシを持って入っていったぜ」
「チラシですか?」
「ああ、何か知らせたい内容があるんだと」
「そうですか、じゃあ宿を取るのもついでに出来ますね。ありがとうございます」
「お?ということは今日も泊まっていくのかい?」
嬉しそうな顔で男がそう聞いてくると、苦笑いで答える湖張。
「・・・ええ、この時間なのでそうしようかと」
「よし、仕事を切り上げる準備だな」
「うん、そうだねえ」
湖張の答えを聞くなり、村民達はそう言ってその場からそそくさと散っていった。

「・・・どういうことでしょうか?何か様子が変じゃありません?」
村民たちの妙な雰囲気に疑問を持つラナナ。それに遠い目をした湖張が答える。
「ああ、多分もうちょっとしたら分かるよ。
とりあえず食べすぎには気を付けてね。断る勇気は必要だからね」
「へ?」
ため息を一つついて歩き出す湖張、目的地はすぐ近くにある宿屋である。

宿屋の扉を開けるなり、カウンターに立っている宿屋の主と目が合う。
また、カウンターの向かいには衛兵が立っており、一度に要件が済ませられそうな構成であった。

「お?湖張ちゃんじゃねえか!?いらっしゃい!」
「どうも!先日はありがとうね。また来てくれて嬉しいよ」
そう挨拶されると、ゆっくりと歩いて近づく湖張。

「こんにちは。えっと、とりあえず一部屋お願いしていいですか?」
「分かった、宴会だな」
「・・・いえ、そうじゃなくって」
「がっはっは、まあ良いじゃねえか。それにしても今日はえらいべっぴんさんを連れているんだな。
お友達かい?」
そう聞かれると、少し固まりながらも軽く挨拶をするように頷くラナナ。
いきなりのハイテンションに戸惑っている様子である。

「そんなところです。私の仲間ですよ」
「そうかい、じゃあ前と同じ部屋でいいだろう?あの部屋は一番広いからな」
「普通の部屋でいいですよ?」
「いや、湖張ちゃんはこの村じゃVIPだからな。最上級の部屋意外には泊めさせられねえよ」
胸を張り腕を組んでそう言われると、苦笑いでその部屋の鍵を受け取る以外が出来なくなる湖張。
しかしそうなる事も大体は予測が出来ていたので抵抗はせずに
今度は衛兵に話を振る。

「さてと、実は今日は衛兵さんに用事があったのですよ。
ここにいて良かったです」
そう言われると、不思議そうな顔を見せる衛兵。
「自分にかい?」
「はい、そうなんです。ここにチラシを持って行ったと外で聞いて来たんですよ」
そう聞くと、チラシを取り出す衛兵。

「ああ、これかい?実は近くでグレルフの群が出たらしくてね、一匹一匹はそこまで強い魔物ではないのだけれども
群れると厄介で危険だし、人を襲ってくる可能性もあるからね。
だから注意喚起という事で宿屋にこれを貼ってもらおうと思ってさ」
「あーそうなんですね」
そう言ってチラシを覗き込む湖張。

「あ、そうだ。魔物と言えばこの前の魔物ってあれから同じ種類の出ました?」
魔物のチラシを見て以前倒した芋を食べる魔物を思い出した湖張。
本題に入る前にその後が気にはなるので尋ねる事にする。

「ああ、あれ以来は出ていないよ。
あ、でもまたメーサ教の騎士が来てさ、硬い魔物で困ってはいないかって言ってきたよ」
「え?」
衛兵の答えを聞いて驚いた表情を見せる。ここに来て再びメーサ教の騎士がここに現れる事が想定外だったからだ。
ましてやレドベージュですら見た事も無いあの魔物について話題を振ってくる事は何か臭う感じがする。
そして一度レドベージュと視線を合わせた後、再び衛兵に話しかける。
「どういう事ですか?」
「いや、どうにもこうにも突然また現れてそんな事を言い始めるんだよ。
だけど湖張ちゃんがぶっ倒してくれたから問題ないって言ったら、そそくさと退散していったよ。
それ以来は来なくなったね」
そう聞くと、少し考える湖張。

「・・・そうですか。分かりました。
そうだ衛兵さん、マスターにもお願いがあります。
メーサ教が今後この村に来ても追い返してください。
また村民の人たちが信じそうになっても止めてください。彼らはインチキなんです」
湖張がそう切り出すと、衛兵と宿屋の主は目を合わせた後、首を縦に振る。
「お、おう。湖張ちゃんがそう言うならそうするけどよ、どうしたってんだ?」
不思議そうな宿屋の主を見ると、カウンターの開けた場所を見つめる湖張。

「すみませんそこの場所、ちょっと借りて良いですか?」
「あ、ああ良いぜ」
「ラナナお願い、ここに袋の中身を出してもらえる?」
「分かりました」
そう言うと、カウンターの上に盗品の数々を袋から取り出すラナナ。
それを見るなり宿屋の主と衛兵は目を丸くする。

「これは!?」
「実はこの村に来る途中、例の山賊達に会ったのですよ。
でもあの騎士達に連れていかれたのに、のうのうと歩いているはおかしいじゃないですか?
だから話しかけてみたら、実はあのメーサ教の騎士達に雇われて山賊をやっていただけらしいんですよ」
「は?なんだそりゃ?」
「最初、皆さんがメーサ神に祈れば山賊を退治出来るって言っていたじゃないですか?
実はあれ、自分たちで雇った山賊をやっつける事で信者を増やそうという魂胆だったんらしいのですよ」
「ああ?なんじゃそりゃ!?インチキじゃねえか!」
「そう、インチキです。
それでですね、山賊達も反省をしていまして、その証拠に奪った物を返してくれたのですよ。
それがこれらです。それを私たちが預かって届けに上がったというわけです」

湖張の話を聞くなり、宿屋の主は驚いた表情で奥の部屋に向かって大声で話しかける。
「おい、若いのいるか?急いでダッシュで飛んで来い!」
不思議な急かし方をすると、奥から20前後の男性が小走りで姿を見せる。

「おい、お前この前あの山で山賊に指輪を取られたって言っていただろ?
その中にあるか?」
「え?」
宿屋の主にそう言われると、驚いた表情を見せた後に慌てて盗品の中身を探し始める男性。

「あった!ありました!!これですよこれ!」
そこには銀色の指輪があり、急いで自分の薬指にはめる男性。
「あ、それはアナタの物なのですか?」
湖張がそう尋ねると、男性は急に涙を流し始める。
「はい、そうなんです。これは結婚指輪でして、大切にしていたんですよ」

「あ・・・そうだったんですね。良かった、取り戻せて」
どうやら指輪は金銭的価値以上の価値を持っていたものらしい。
その答えを聞くなり、自然と笑みがこぼれる湖張。

「さてと、じゃあ衛兵さん、後はお願いできますか?
被害にあった方々にこれらを返品して欲しいのですよ。
ただ、お金に関しては少し使われちゃったそうですので、皆で少しずつ痛み分けしてもらえればと・・・」
湖張がそう切り出すと、大きく頷く衛兵。
「そういうことか!分かった、任せてくれ!!本当に湖張ちゃんはこの村の恩人だな!」
「えへへ」
そう言われると照れくさくなる湖張。
しかしその流れで宿屋の主に視線を移すと、驚きの様な表情で腕を組んだまま体全体が震えていることに気が付く。

「おい若いの、泣いている場合じゃねえ。
今すぐ村全体に号令を掛けろ」
「うん?号令?」
ようやく口を開いた宿屋の主の発言に疑問を持つ湖張。

「これよりこの村では、超宴会を開催する!」
「は?超?宴会?」
あまりにも意味が分からない単語が出たので、鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見せる湖張。

「ああ、これは宴会でもねえ、大宴会なんて生ぬるいものじゃねえ。
後先考えない超宴会だ!」
「はぁぁ?!」
「おおおおおお!」
とんでもない事を言い始めるので、思わず大きな声を上げる湖張。
一方衛兵と指輪を返してもらえた男性は雄叫びにも近い歓声を上げる!

「分かりました!俺、今から皆に声かけてきます!
ついでに何か盗まれた奴は宿屋まで取りに来いって広めてきます!」
「おう!そうやって武勇伝を広めた方が、皆はより湖張ちゃんを持て成すってもんよ!」
「え?ちょっと!」
「止めても無駄です!馬と自分は急には止まれません!」

そう言うなり凄い勢いで宿屋の外に飛び出す男性。
「みんな聞いてくれ!湖張ちゃんが山賊から盗まれた物を取り返してきてくれたぞ!
宿屋にあるから、何か盗まれた奴は今すぐ取りに行くんだ!
あと、今日はこれから超宴会だからな!仕事なんか止めて宴会の準備してくれ!」
「うおおおおおおおお!」

外から物凄い歓声が響いて伝わってくる。
その様子を見ると、再び遠い目をする湖張。

「・・・あーあ」
そう呟くと、袖を小さい力で引っ張ってくる事に気が付く。
その方向に視線を向けると、心配そうなラナナが目に映った。

「あの・・・これは?」
ため息を一つつく湖張。
「ああ、えっと・・・ここが宴会好きの村という事は言ったじゃない?
うん、まあそういう事よ。ただ予想の遥か上の展開になっちゃったけどね、はは」
乾いた笑いでそう言うと、レドベージュは二人にタオルを渡してくる。

「え?タオルですか」
不思議そうにタオルを見つめるラナナ。すると湖張は宿屋の主に話しかける。
「すみません、早速で悪いのですけど浴場を使って良いですか?
とりあえず汗を流したいんですよ」
「ああ、かまわないぜ!直ぐに用意をさせるから30分ほど時間をくれよな!」
気前よくそういう答えが返ってくると「ありがとう」とお礼を言う湖張。

「じゃあとりあえず部屋に荷物を置きに行こう。
そしてお風呂に入って・・・後はまあ流れに流されない程度にしよう」
そう言いながら苦笑いで部屋に向かう湖張。そしてラナナは心配そうな表情で後ろについていくのであった。

<NEXT→>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第四十八話【超宴会を抜け出して】
<←PREV>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第四十六話【山賊の証言】