ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第二十五話【教団の騎士】
- 2020.06.30
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
その後、山道を出発してから1時間ほどで目的の村に到着した。
道中では助けた男性二人に自己紹介として、名前とパペットマスターという技師でレッド君の
動作テストで旅をしているというような内容を伝えていた。
すると二人はとても珍しがり詳しく話を聞いてくるが、大したことは話せなかった。
もちろん下手な事は言えないという理由もあったのだが、深く設定を作っていたなかったので話したくても話せなかったというところが大きい。
とりあえずは企業秘密という事で何も言わなかったが、ある程度の設定を作ることは今後の課題だと痛感した道のりであった。
「さあ、着きましたよ。本当にありがとうございました」
男性の一人が湖張に改めて礼を言うと苦笑いで小さく手を振る湖張。
感謝されるのは嫌ではないが、照れくさくもある。
「さてと、とりあえずこの人たちを衛兵に突き出したいから案内してもらえます?」
湖張はさっさと厄介ごとを片付けたかったので男性にそう言うと「お安い御用ですよ」といって
助けた男性のうちの一人が村の奥に走っていった。
しかしその男性は5分も経たずに誰も連れている様子もなく小走りでこちらに戻ってきてしまう。
「おや、どうした?」
不審に思ったもう一人の男性がそう尋ねると、首をかしげながら答えが返ってくる。
「いや、それが何か村に変な人だかりができていて妙なんだよ。
衛兵もその人だかりの中にいるようだ」
「なんじゃそりゃ?」
何か様子がおかしいらしい。なので一度レドベージュと目を合わせると、確認しに行こうというかのように
小さく頷いて合図を送ってくる。それに同調するかのように湖張も小さく頷くと「私たちも行ってみましょう」と提案をする。
仕方がないのでロバの台車に山賊を乗せたまま人だかりの近くまで移動する一行。
すると、人だかりの奥には紺色の鎧を着た騎士が3人、馬に乗った状態で人々に演説をしているようであった。
「おい、何があったんだ?」
助けた男性が、人だかりの外側にいる30前後の黒髪の男性にに問いかける。
すると湖張とレドベージュに視線を移すが、助けた男性の知り合いだろうと思ったのか、特に気にせず答えが返ってくる。
「ああ、商店のおやじか。いやね、あの騎士さんたちが見えるだろ?
あの人たちは国の騎士じゃなくって、なんとか教とかいう教団の騎士で困っている人を助けるのが仕事なんだと。
それで自分たちの信仰する神に俺たちが祈れば、今この村で問題になっている山賊どもを追っ払うと言っているんだよ」
「神に祈る?何でそんな事を?」
二人の会話を聞いて不思議に思った湖張が横から話に入る。
「いや、何でも山賊退治に行くにしても場所が分からないから行けないんだと。
だけど俺たちが神様に祈ることで、騎士たちの頭の中にお告げがあって居場所が分かるそうだよ」
「何それ?」
如何にも怪しいと言った表情を出す湖張。
その一方で、現状を教えてくれた男性は腕を組んで考え込む素振りを見せる。
「とは言ったものの、山賊は厄介だからな。そのくらいで追っ払えるなら本気で祈ってみても良いかなって思えてくるよ」
まさに神頼みといったところだろうか。とりあえず祈れば問題が解決するなら駄目元でも祈ってみようかというような雰囲気である。
その様子を見てレドベージュに視線を移すと、首をかしげる素振りを見せる。
どうやらレドベージュ的にも良くわからない状態のようだ。
そうこうしていると、馬上の騎士が群衆に大きな声で訴えかけはじめる。
「さあ皆さん、悪しき山賊を追い払うために我らがメーサ神に祈りを捧げるのです。
さすれば必ず我らに道を指し示すでしょう」
「メーサ神?」
聞いたことが無い名前の神が出てきたので、思わず独り言を呟いてしまう湖張。
そこで男性から少し離れていたところにレドベージュがいたので、彼に近づきしゃがみ込んで小声で質問をする。
「ねえ、メーサ神って聞いたことある?」
「いや、そんな神は居ない。創作だ」
小声でレドベージュがそう答えると、少し険しい顔をする湖張。
天将がはっきりと存在を否定したことで、目の前の騎士たちから感じる胡散臭さは確定的に怪しいに切り替わる。
そこで、その場があまりにも妙な雰囲気になっていたため、まずは一石を投じる手段に出る湖張。
「ちょっと待って、祈る必要は無いですよ。山賊ならさっき捕まえましたから!」
大きい声で湖張がそう言うと、群衆は一斉に彼女に視線を向ける。
その様子を確認すると、台車の横に移動してまた大き目な声を出す湖張。
「はい、この通り縄で縛って連れてきました。
他の仲間がいるかもしれませんが、後は衛兵さんたちがこの人たちが起きた後に聴取を取れば残りがいたとしても場所が分かって捕まえられるでしょう。
だから多分もう大丈夫です」
湖張の話を聞くなり駆け寄る群衆。そして縛られた四人の山賊を確認すると、歓声が沸き上がる。
「おおお!本当だ!!」
「そうだ、俺はコイツに金を取られたんだ!!」
ありとあらゆる方向から興奮した声が聞こえてくる。
中には山賊に石を投げつける物もいたが、そうなると山賊自身の命の危険もあり聴取どころではなくなるので
流石に衛兵が止めに入った。
「・・・さてと」
とりあえず山賊の事件はこれで落ち着くと感じたので、次は怪しい騎士に意識を向ける湖張。
すると騎士たちは何か相談をしているようだった。しかしその打ち合わせもすぐさま終わり、馬に乗ったままこちらに近寄ってくる。
「アナタがこの山賊を倒したのですか?」
騎士のうちの一人が湖張に話しかけてくると、ジッと相手の目を見ながら返答をする。
「そうよ。武術の心得があるからね」
「そうですか、お怪我は?」
「ないわ」
「そうですか、それは良かった」
その騎士は全身を鎧で覆われているために体の特徴は分かりづらかったが
背は高いようである。また、意外と声が低い。
そんな感じで相手の特徴を調べるためにじっくりと観察をしていると、彼が持っている盾に目を疑う模様が描かれていることに気が付いた。
それは昨日燃えた家で見た太陽のマークである。
「そのマークは?」
内心、大きな声で驚きを表現しそうではあったが怪しまれては元も子もないので
あえて冷静に質問をする湖張。
すると、騎士の男は盾を見せるようにして答える。
「これですか?これは私たちが信仰するメーサ教の紋章です」
「メーサ教?」
「ええ、メーサ様を唯一神として崇めることで、世の人々は一つにまとまり平和な世の中になるのです。
私たちはその教えを世に広めながら、平和のために活動をしています」
どうやらあの太陽のマークはメーサ教という宗教団体の紋章らしい。
まさかこんな所で情報が得られるとは思えなかったので思わず興奮気味にあれやこれやと聞いて話を進めそうになるが
ここはあえて冷静に振舞い、少しずつ情報を集めるべきと考える。
「教えを広めるのに、アナタ達の様な武装した力は必要なの?」
まずは素朴な疑問をぶつける湖張。正直なところ布教活動をする者の姿には到底思えない。
また、武装した宗教団体というのにも違和感があったので、その様な質問を投げかけた。
すると、馬上の男はゆっくりと返答をする。
「ええ、本来でしたらこのような物々しい身なりで話をするべきではないのですが、
残念ながら、世の中には思いだけではどうしても守れない事があります。
その為、我々は世の中の平和を守るために力が必要と考え、メーサ神の騎士として力を振るっているのです。
「ふうん。じゃあアナタ達は教えを広めながら慈善活動として山賊を捕まえようとしたわけ?」
「ええ、そんなところですね。貴女も入信してご一緒に活動しませんか?」
質問に対する答えの中に勧誘を混ぜてくるあたり、誘いなれているのかと感じるが
そのまま話をあちらのペースに持っていかれるわけにはいかない。
また、レドベージュは今の状態だと喋れないので、もう少し頑張らねばと密かに思う湖張。
「せっかくだけど遠慮するわ。それともう一つ教えて。
そのマーク・・・いえ紋章を持っている人はメーサ教という事?」
「ええ、この紋章はメーサ教の証です。誇り高い太陽の紋章、貴女もいかがですか?」
「ですから遠慮しますって」
隙あらば勧誘する姿勢に呆れ顔になるが、今の話から森の家で取り逃がした男はメーサ教徒である事がほぼ確定した。
ひょっとしたらメーサ教徒の家を使っただけで、昨日の男は違う可能性は捨てきれてはいないが、
男が着ていた紺色のローブは目の前の騎士の紺色の鎧と同じような色なので、ほぼ間違いはないであろう。
(さて、次は何を聞き出そうかな)
湖張が次の手を考えようとすると、後ろに控えていた別の騎士が意識を失っている山賊に近づく。
「息はあるようだが、まだ気絶をしているようだな。
よし、このままにする訳にもいかないから、この者達は我らが預かろう」
そう言うと馬から降りて山賊に触れようとする騎士。いきなり何を言い出すのか理解できなくて一瞬固まるが、すぐさま湖張は止めに入る。
「ちょっと待って、何でアナタたちが連れて行こうとするの?
ここは衛兵に引き渡して、然るべきところで処罰を受けさせるべきじゃないの?」
その意見を聞くと、群衆の中でも同意するように頷きながら行く末ジッと見つめる者がいたが、騎士は何食わぬ顔で反論をする。
「確かに衛兵に任せるのも一つの手です。ですが、ここの村の衛兵は2人しかいません。
4人が目を覚まして隙をついて暴れ出したら村全体が大惨事になりかねません。
なので私たちが山賊を預かった方が安全だと思いますが如何でしょう?」
騎士の意見を聞くと、今度はそれに賛同するような素振りを群衆の一部は見せている。
当然と言えば当然だが、群衆にとっては安全が第一優先のようだ。
「確かにそれも一理あると思うけどさ、でもアナタ達が人を裁く事は出来ないんじゃないの?
あくまで国の法に従うべきじゃないの?
反論する湖張。その時であった、群衆の一人が話に横から入ってくる。
「ここは外れの村だから、皆で黙っていれば何も問題にならないさ。
お嬢ちゃんの言う事も分かるけどさ、俺たちは早くて確実な安全が欲しいんだよ。
逆に言えば、安全さえ手に入るなら衛兵だろうが、こちらの騎士様たちだろうが
誰がこいつらを裁こうがどちらでも良いんだ。衛兵さんだってこんなゴタゴタ嫌だろ?」
そう言って群衆の中にいた衛兵に話を振ると、同調するように頷く衛兵。
「そうだな、本当ならば俺の仕事なのだろうがそちらの騎士さんの言う通り
人数的に手に余るというのも本音だ。なので騎士さんたちに引き取ってもらえると助かるな」
「そんな!」
予想外の展開に戸惑う湖張。レドベージュに目を向けると首を横に振っている。
恐らくこれ以上は反論するなと言っているのであろう。
「それでは我らがこの者達を預かろう。
皆さんは普段通りの生活に戻っていただいて結構だ」
そう言うと、山賊を担いで分担して馬に乗せる騎士たち。
手際は案外と良く、あっという間に馬に乗せたと思ったら、そそくさとその場から離れて、
村の外まで出て行ってしまった。
「・・・行っちゃった」
あまりにも早い撤収だったので呆気にとられてしまった湖張。
本当にこれで良かったのか疑問が残るが、どうする事も出来なかったのも事実である。
その様子を心配したのか、山道で助けた男性が話しかけてくる。
「まあこれで山賊は居なくなったんだ。釈然としないかもしれないが美味しい物でも食べて今日はゆっくりしてくれよ。ご馳走するからさ」
「あー・・・」
とりあえずどうするべきか迷ってしまったのでレドベージュに視線を向けると、頷きの返答を確認する。
それを見ると「まあいいか」と呟く湖張。太陽の紋章はメーサ教の物という事が分かっただけでも良しとする事にした。
「わかりました。ただご馳走の前に宿屋に行って良いですか?
今晩の宿を確保したいんです」
「ああもちろん。じゃあまずは宿屋の案内からだ」
そう言うと、男性は宿屋があると思われる方向を指さし、軽快な足取りで道を案内し始めた。
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