ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第四十六話【山賊の証言】
- 2020.09.30
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「・・・とりあえず、取っちめて何でここにいるのか聞き出そうか?」
半分呆れた顔で湖張がレドベージュに尋ねると、ラナナが少し慌てた素振りを見せる。
「え?いきなりですか!?確かに柄が悪そうではありますが、いきなり襲撃するのですか?」
「あーそっか、ラナナは知らないんだった。
昨日さ、今まで何があったかを話したでしょ?
その時に出てきた山賊いたじゃない?それがあの人たちなの」
頭を掻きながら湖張が説明をすると、湖張から視線を山賊に移すラナナ。
「あれ?お話ではメーサ教の騎士に身柄を託したのでは?」
「そう、だから取っちめて理由を聞き出そうかなと」
そう言うと、レドベージュは湖張の前に立ち手を上げて行く手を阻むようにする。
「いや、いきなり手荒な真似はしなくても良かろう。
とりあえず話しかけて何故ここで自由にしているのかを聞くことから始めれば良い。
取り押さえるのは逃げようとしたらで良いだろう」
レドベージュがそう提案すると、湖張はゆっくりと歩きながら「はーい」と返事をする。
そして3歩ほど進むと、立ち止まりくるりとラナナの方に振り返る。
「ねえラナナ、山登りの時にかけた高く飛び上がれる魔法を掛けられる?
山賊たちまでの距離がちょっとあるからさ、ジャンプして一気に近づけないかな?」
目標までの距離は50mほど離れており、確かにここから走って追い付く間に逃げられる可能性がある。
なので一気に飛んで追い付こうという提案にキョトンとするラナナ。
「・・・えっと、出来ますよ。高さはそこそこにして距離を長く飛べるように調整します。
ただ着地は気を付けてください。坂道とは違って、高い位置から飛び降りることになりますから。
出来れば着地の直前に浮遊の魔法で衝撃が無いようにする方が安全です」
「あー大丈夫。心配ないよ」
「分かりました」
そう言うと魔法をかけるラナナ。緑の光が三人の足元を包み込む。
「あれ?皆で行くの?」
魔法は自分だけに掛かるものだと湖張は思っていたのだが、全員に掛かっている様子を見てラナナに確認を取る。
「それはそうです。一人だけ飛び込む訳にはいかないじゃないですか。
それに山賊が何て言うか聞きたいですし」
「そっか。じゃあとりあえずあの人たちの進行方向に着地して行く手を阻む事から始めよう」
「うむ、では行くとするか」
「了解。せーの!」
湖張の言葉が合図になるかのように、一斉に飛び上がる三人。
すると地上から10mとはいかないまでも、結構な高さまで飛び上がる三人。
そして水平距離は山賊を飛び越える位の丁度良い位置まで移動する事が出来た。
着地に関しても問題なく、ラナナとレドベージュは着地の寸前で魔法で浮き上がりゆっくりと地面に足をつく。
一方湖張は地表付近で手から強い風の魔法を放ち落下の速度を緩め、さらに着地と同時に屈んで勢いを無くし、綺麗に着地をする。
また、彼女の放った魔法は地面に当たると爆風の様なものを発生させ、目の前にる山賊たちに衝撃を与えると同時に威圧する事にも役立った。
「・・・さてと、何でアナタたちがこんなところを歩いているわけ?」
冷めた目をしながら、砂埃の中から現れて問いかける湖張。
「あ・・・あわわわわ!」
腰を抜かしてその場に座り込む山賊たち。その表情は恐怖に怯えていて少し可哀そうにもなってくる。
そうなると腰に手を当ててため息を一つつく湖張。
「もう、そんなに怯えないでよ。まるで私の方が悪者じゃない。
とりあえずあの騎士たちに連れていかれたアナタ達が何でこんなところで自由に歩いているのかを
正直に話したら、悪いようにはしないわよ」
湖張の発言を聞くと、仲間同士でアイコンタクトを取り合い、一人が頷くと全員も頷く動作を見せる。
どうやら提案を飲むことを決めた様子だ。
すると、真ん中に座っていた黄色い服を着た山賊が話し始める。
「分かった、正直に話す。だから手荒な真似は止めてくれ
・・・実はな、俺たちはここら辺の山賊ってわけじゃねえんだ。
確かにごろつきと言われれば反論は出来ねえが、元々は山賊が家業ではねえんだよ。
悪ガキだった俺たちは数年前に故郷を追い出されて、各地を転々と旅をしては小銭を稼いでいたんだ。
もちろん真っ当な仕事ばかりだぞ?荷物運びが中心だった。
正直なところ故郷を追い出された事によって、それまでの行いの反省はしていたんだ。
ただよ、やっぱり稼ぎは少ないし中々落ち着ける場所も作れないしで何年もの間、困っていたんだ。
そしてそんな中でメーサ教とかいうあの騎士達から声が掛かってな。
金をやるから山賊まがいの事をやって村人を困らせろって言うんだよ。
更には奪い取った物は全て貰って良いというじゃねえか。
提示された報酬も悪くわねえし、引き受けることにしたんだ」
その話を聞くと驚いた表情でレドベージュと顔を合わせる湖張。
「ちょっと待ってよ、じゃあアナタ達を連行したあの騎士たちは
実はアナタ達の雇い主だったって事?」
「ああ、そうだよ」
「何でそんな事を!?」
「何でもメーサ教の信者を増やすことが目的だと言っていたぜ。
筋書きとしてはこうだ。まずは俺たちが山賊として村人を困らせるだろ?
そこでメーサ教の騎士達が現れて、村人をメーサ神に祈らせるんだ。
そうしたら山賊の居場所が分かったとか騎士達が言って俺たちを退治しに行く。
そして山で俺たちと落ち合って報酬を貰ってその場でお別れだ。
俺たちは誰にも見つからないように他の地域に移動して、
騎士達は山賊を退治したと言って村に戻るんだ。
そうすると、今後は山賊が出なくなるので村は平和になるだろ?
そして村人が平穏を感じ始めたところでメーサ神への祈りが奇跡を起こしたという事にして
信者を増やそうというものだ」
「何それ、インチキじゃない!?」
湖張が呆れながらも怒り気味にそう言うと、山賊も頷く。
「ああ、とんだペテンだぜ。
だけどな、そんなペテンも上手くは行かなかったんだ。
だってお嬢さんたちが俺たちをぶっ飛ばして捕まえただろ?
するとあの騎士達の予定も狂っちまったんだ。
更には俺たちからあいつらの魂胆がバレるのも恐れたんだろうな。
だから俺たちを引き取ったんだとよ。
だがもう山賊で信者を増やす作戦は使えなくなったという事で、
俺たちはお役御免でこの地を離れることを条件に開放されたんだ。
それが今日の朝で、今はその帰り道だよ」
「なるほどね。それであまり人が通らないこの付近を歩いて他の地域へ移動しようとしていたのね?」
「ああ、その通りだ」
そこまで話すと、怖い顔をしていない湖張の雰囲気から再び倒されないと判断したのか
山賊たちは立ち上がる。
「・・・それでさ、もう行って良いか?」
伺いを立てるようにそう質問してくるとレドベージュと視線を合わせる湖張。
するとレドベージュは許可をするかのように小さく頷くと、湖張も合わせるように頷いた。
「分かった。もう行って良いよ。でもちょっと待って」
そう言うと湖張は山賊に十数枚の金貨を渡す。
「え?これは?」
驚きと困惑の表情を見せる山賊。
「元々は真っ当な仕事をしていたのでしょう?だったら私からの依頼も引き受けてくれないかな?
これから先に向かう場所でメーサ教に騙されそうな人たちがいたら止めるように声をかけてくれない?
その位の金貨があれば、しばらくは食べるのにも困らないでしょう?
それはこの依頼の報酬だよ。
あとさ、東の方に大きな川に沿った街があるでしょう?
あそこの商人が隊商を組んで遠方への商談に行くのだけれど、
その時の護衛を募集していたよ。報酬も良かったし、それに募集してみたら良いんじゃないかな?
ここら辺だと山賊として顔が知られている可能性があるから生きづらいでしょ?
そうしたら隊商についていって、稼いだお金を元手にしてそのまま遠方に移住するのも良いんじゃないかな?」
「・・・良いのかよ、俺たちなんかにそんな親切をして」
「悪いと思ったら、そのお金を持ってさっさと隊商に参加して真っ当な生活を送りなさい!」
湖張が笑顔でそう言うと、山賊たちは深く頭を下げてから無言でその場を去る。
その後ろ姿が小さくなることを確認すると、レドベージュは湖張に話しかけてくる。
「まさかあんな風に切り出すとは思わなかったぞ」
「まあそうだろうね。でもさ、あんな話をされた以上あそこで取っちめて衛兵に突き出すのは違うと思うし、
いずれ釈放された時もあのままじゃ小悪党のままの様な気がしたんだよね。
そもそも結局のところ、金銭的な問題からメーサ教の騎士に利用されたようなものじゃない?
それだったら少し金銭的にサポートして、今後の食い扶持を案内する事で
踏み外した道から真っ当な道に戻る手助けをした方が長い目で見たら平和に繋がるんじゃないかなって思ったんだよね。
実は昨日一人で街を見て回っていたでしょ?
その時に隊商の護衛を募集する張り紙を見たんだよね。
あの人たちはそこまで強くはないけれど、見た目は割と怖いから護衛にはもってこいじゃないかな。
それに渡した金貨ついてだけど、三食と宿泊費はレドベージュが出してくれるし、
特に私は欲しい物がある訳じゃないからね。あと来月にはまたお給料をくれるんでしょう?
それだったら平和を買ったという事で良い使い道じゃないかな?」
苦笑いを見せながら湖張がそう言うと、レドベージュは小さく頷く。
「うむ、天晴とでも表現するべきなのかもしれぬな」
そう言うと、先ほど男達に渡した同額の金貨を湖張に渡すレドベージュ。
「え?何で?」
不思議そうに尋ねる湖張。
「平和を金貨で買ったのであろう?そうしたらそれは必要経費だ。
個人で負担する必要はあるまい」
「そうなの?」
「そうさ」
レドベージュがそう言うと、湖張は少し考えてから金貨を懐に戻す。
そして、ふとラナナに視線を移すと輝いた目で湖張を見つめている。
「うん?どうしたの?」
「湖張姉さまってとっても素敵ですね!」
「・・・そうかな?」
「そうですよ!こんな事は中々出来る事じゃありません」
「いや、そんな褒められた事じゃないよ。最初は取っちめようとしたし」
苦笑いでそう返すと、ラナナもクスッと小さく笑う。
と、その時であった。
「おーい!」
大きな声で自分たちを呼ぶ男の声が聞こえる。
それは先ほど立ち去った元山賊達であった。
「え?何で?」
驚きの表情で見ている間に、再び走ってこの場に戻ってくる男達。
「どうして戻ってきたの?」
顔をしかめてそう尋ねると、一人が話を切り出してくる。
「いや、さっき奪い取った物は全て貰って良いと騎士達に言われたって伝えただろ?
実はそれらは、まだ手付かずで残しているんだ。
というのも、ここら辺で金品を売ったら足が付くだろ?
だからアジトに全て置いたままなんだよ。
そしてその場所だが、ここから東に行ったら小さな池があるんだが、
その近くに小さな洞窟があってそこが俺たちのアジトだったんだ。
確かに金は少し使っちまったが、人里に行っても足が付くからそんなには使えてないんだ。
金も殆ど残っているよ。
悪いけどよ、お嬢ちゃん達で返してくれねえか?」
思いも寄らない事を伝えに戻ってきた男達に思わずキョトンとしてしまう湖張。
「う・・・うん、それは良いけど、よく正直に話したわね」
「真っ当な生活を送れと言ったのはお嬢ちゃんだろ」
照れくさそうに話す男を見ると微笑む湖張。
「分かった、じゃあ後は私たちに任せて早く行きなさい」
「へへ、すまねえな」
そう言って再び立ち去る男達。
「正しい事の連鎖だな」
彼らの後姿を見ながらレドベージュがそう呟くと、湖張は満足そうな顔で「そうだね」と返した。
心なしか、その時のレドベージュは嬉しそうな雰囲気を出しているように感じられた。
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