ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十七話【犯人発見?】
- 2020.08.30
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
賑やかな街の路地を抜けて再び落ち着いた雰囲気の池に到着する三人。
その途中で湖張はラナナと、とりとめのない会話をしながら歩いていた。
ラナナは一人っ子で両親に、それはそれは大切に育ててもらったらしい。
なので故郷から遠く離れた魔法学校へ寮に入って通うという事は難色を示したとの事だった。
元々なぜ彼女が魔法学校へ通うことになったのかというと、
住んでいた村に最難関の魔法学校であるダラ魔法学校の教授が薬草探しの為に訪れたのだが、
その時にラナナの存在に気づいてしまった事がきっかけであったそうだ。
当時の彼女はまだ10歳で、村でのんびりと健やかに暮らしていたらしい。
彼女の母親も魔法が得意だったそうで、火をおこしたり重い物を浮かせたり等の魔法を教わって
日常生活で活用していたそうだ。
そんな中での出来事である。教授は手が届かない程の高い木の上で実っている木の実を取っていたのだが、
その方法は魔法で小さな爆発を木の上で発生させて木をゆすり、実を落として回収をするというものであった。
そしてそれを見ていたラナナは、特に教わってもいないのに教授が使った魔法を見ただけでその場で習得をしたとの事。
当然のように、その様子を見ていた教授は驚くが、更に目を疑うようなことが起きる事となる。
というのもラナナは爆発の魔法を習得するなり、すぐさま応用をして、より強力な魔法を生み出したのである。
すると彼女は生み出したばかりの魔法を使い、数日前に村の近くで発生した崖崩れで邪魔になっていた巨石を粉砕してしまったのだ。
そしてその放った魔法だが、実は高名な魔導士ですら習得に数年もかかるような高難易度の魔法に性質が近いものであり、
更には魔法の発動が半分の時間で済む工夫まで施されているものであった。
それを見た教授はラナナの眠っている力を見出し、2年の歳月をかけて両親を説得し、彼女を入学させたらしい。
ラナナ本人も当時は魔法学校に行くことは考えていなかったようなのだが、
天才的な魔法の才能と地頭の良さを教授に見出され、半ば強引に入学まで至ることとなった。
普通は16歳からの入学なのだが、彼女の場合は教授の推薦もあり特別枠だったらしい。
学校生活が始まった日は、特に何がやりたいということもなかったのだが、
いざ授業が始まるとなると元々勉学が好きだった事もあり、知識の塊である学校がとても楽しくなったらしい。
特に考古学が気に入ったようで、毎日様々な書物を読み漁っていたとの事だ。
彼女の通っていたダラ魔法学校は魔法だけを研究し教えているだけではなく、
ありとあらゆる学問に対しても学べる学校らしい。
なので彼女は魔法よりも様々な学問の方に興味があったそうだ。
しかしながら魔法の才がずば抜けており、特に努力もなくありとあらゆる魔法を習得していったとの事。
なので考古学をもっと、むしろそれだけをやりたかったのだが
魔法の才が邪魔をして周囲の教授陣がこぞって魔法の研究等に彼女を参加させていた。
その結果、多くの魔法を習得し弱冠16歳の若さで学園史上でも稀に見るハイレベルの魔法使いになったそうだ。
本人曰く「使える魔法の種類が人よりちょっとだけ多くて、威力もちょっと強いだけ」と苦笑いで言っていたが、
話を聞く限り常人レベルではない感じである。
湖張自身も魔法に関しては天才肌の持ち主だったので、彼女の話に共感できる部分も多々とあったが、
それでも凄いと感じる部分も多かった。
会話の中でラナナは、決して自分の事を天才であるという表現は使わなかったが、
その他のエピソード等を聞く限り常人ではありえない事を平然とやってのけているので天才なのだろうという事は容易に分かった。
「さて池についたわけだけど、どうしようかな?とりあえず毒が含まれているかの調査?」
湖張が二人に対して聞くと、ラナナは口に握った手を当てて少し考えてから意見を出す。
「そうですね、水質の調査になると思います。
ただ常に川から水が流れ込んできていますし、これ程までに池が広いと全部の水に毒が混ざっているとは考えづらいです。
むしろ池の水全てに毒が混ざっているのでしたら、周囲の生態系が狂っているはずですので
池の一部分だけが汚染されていると考える方が自然かもしれません。
なのでとりあえずは川の水と池の大半は汚染されていないと仮定して
街へつながる給水管付近の水質を確認しに行きませんか?」
「ふむ、むやみやたらに水質を確認するよりはその方が効率は良さそうだな」
「じゃあ決まりだね・・・とは言ったものの、肝心の給水管ってどこなのかな?」
「とりあえず池の周りを回ってみますか?」
「まあそうするしかあるまい」
レドベージュがそう言うと、湖張は周囲を見渡す。
「ねえ、あそこって何かそれらしい感じしない?」
彼女が指し示した先は、岸を切り崩して池を細く伸ばしていそうな部分で周囲は木々に囲まれていた。
「怪しいですね」
「うむ、怪しいな」
それを見たラナナとレドベージュも同様に怪しがる素振りを見せると、湖張は「行ってみよう」と言って歩き出す。
目的の場所が近くなってくると、細い水の通り道のようなものが街の方へ伸びている事に気が付く。
遠くから見た時は、木々に囲まれていたので先の方は分からなかったが、
近づいてみると水の通り道の先は水が通るトンネルのようになっており、ここが給水管のスタート地点として間違いないと考えられる。トンネルの入り口には鉄格子が備え付けられており、大きなごみの侵入を防いでいるようだ。
また水の通り道付近は土が盛られており水面から2mほど高い位置になっていた。
これにより雨で水位が上がっても、この付近の氾濫をある程度防ぐ目的があるのかもしれない。
「・・・誰かいるね」
更に近づくと、水の通り道を覗き込んでいる30歳手前と思われる男性がいる事に気が付く。
彼は通り道をジッと見つめたまま、微動だにしなかった。
「魚でも釣っているのでしょうか?」
ラナナが小声で話し掛けてくるが、湖張にはそう思えなかった。
「どうだろう、釣り竿もないし違うんじゃないかな?」
湖張がそう答えた次の瞬間、三人の目を疑う行動を男性はとる事となる。
なんと彼が持っていた白い肩掛けカバンから大き目のワインボトルを取り出して中身を水の中に入れ始めたのだ。
「な!?ちょっと何やっているの!?」
あからさまに毒を入れていますと思われる行動をとり始めたので、大声で注意しながら慌てて駆け寄る湖張。
すると男性は驚いた顔を見せた後、慌てた素振りで人差し指を立てて口の付近に当て静かにさせるような素振りを見せる。
そして次の瞬間、男性の近くの水の通り道から体長が2m近くある黒くて大きい蟻のような虫が這い上がってきた。
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