ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第十九話【燃える淀みの家】

           

「ちょと何で!?何で燃えているの!?」
振り返ると先ほどまでいた家が大きな火柱に包まれて燃えている。
その様子を見て、慌てて家に駆けよる二人。
しかし火の熱と勢いが強く、ある程度の距離までしか近づくことができない。

「むう、まさかこのタイミングで証拠隠滅に走ったか」
「証拠隠滅?という事はやっぱり魔物除けは嘘だったの?」
「そのようだな」
「・・・それよりあの人は?」
家が燃えた事や証拠隠滅をした事も気がかりではあったが、
先ほどの男の行方が気になる湖張。
家の中を覗き込むが、炎の勢いが強く中を見ることが出来ない。
次に体の向きを変えながら周囲を見渡す。

「いた!!」
湖張が思わず大きな声を上げて森の茂みの中を指さす。
そしてレドベージュがその方向を向くと、20メートルほど先の茂みの中に先ほどの男が急いで逃げていく様が見える。

「やはり逃げていたか」
「当たるかな?」
手を男の方にかざし魔法を打とうとする湖張。
しかしその様子に気が付いた男は横方向に飛び、木の陰に隠れてしまった。

「やっぱり駄目だ」
そのまま男の影が森に消えて見えなくなると狙撃を諦める湖張。
「どうする?あの人を追う?」
そう尋ねると、火の柱を見ながら返事をするレドベージュ。

「いや、もう追い付けないだろう。
それよりこの場をどうにせねばならん。このままでは森が焼けてしまう」
家の周囲は木々に囲まれており、引火したら大惨事になりかねない。
確かに男を追うより、この場をどうにかする方が先決である。

「でも火の勢いが凄いよ。消せるの?」
「いや、ここまで燃え上がると我でも消せぬ。
それにこの火柱、少々不自然ではある」

何か違和感を感じたのか、火柱に向けて手をかざすレドベージュ。
「フム、どうやらこれはただ火を起こしたというわけではないな。
魔法を仕込んだ仕掛けか?」
「仕掛け?」
「そうだ、先ほど木の箱から風を発生させる魔道具があっただろう?
それと考え方は同じだ。おそらくこの家の下に家を包む程の火柱を上げる魔道具を仕込んでいたのであろう。
この様子だと、20分もすればこの火は収まりそうだ。
だがこの火力だ。火が消えたとしても家の中の物は全て燃えてしまっているだろうな」
「要するに証拠隠滅は完璧ってことだね?でも火を消すことに関しては、ここで見ているだけで大丈夫?」
「いや、そういうわけにもいくまい。その間に引火の可能性は捨てきれないからな」

そう言うと天を仰ぎ両手を広げて、ほのかに全身が光り出すレドベージュ。
そして光が両手に集まった後、二つの光の玉となり上空高くゆっくりと上がり、木の高さを超えた位置で停滞する。

ピースキーパー赤き聖者019話

「あれは何?」
光の玉を見上げながら質問をする湖張。
「防護の魔法だ。そのまま見ていると良い」
広げていた両手を強く握りしめるレドベージュ。すると光の玉が光の粉に変わり、家の周囲の木々に降りかかっていく。
その様子は火災の前で不謹慎ではあるが、湖張にとっては神々しくとても美しい光景に思えた。

「これでしばらくは燃えないだろう。一安心といったところだな」
両手を下げて湖張の方を向くレドベージュ。
火の勢いはそのままだが、どうやら大丈夫そうである。

「とりあえず、ここから離れるぞ。
人が集まってきたら我らが疑われるかもしれぬ。
よそ者が森の中の火災現場にいたら怪しまれるのも自然の流れだからな」
「そうだね、確かに良くないかも」

レドベージュの提案に頷く湖張。
この場に停滞し続けるとトラブルの元なので二人は急いでその場を離れることにした。

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