ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十三話【木漏れ日の中の少女】

           

特に問題もなく順調に歩いて行くと、村を出てから三時間ほどで目的の街まで到着した。
街は大きな川に沿って作られており、恐らくこの川は生活用水としても利用されていると容易に想像が出来る。
町全体は石積みの砦のように囲まれており、魔物対策と同時に水害対策も取っているのかもしれない。

街への門をくぐり中に入ると、活気あふれる街並みが目に入ってくる。
今まで訪れた村に比べると規模が違う事は一目瞭然であった。

「すごい活気だし、すごい人の量だね。
こんなに人がいても、仲間の居場所は分かるの?」
湖張は額に手を当てて、人を探すかのような素振りを見せると、レドベージュは上空を見上げる。
「うむ、問題ないぞ。もう近いところまで来ている。
とりあえずラナナのところまで行くぞ」

そう言いながら西の方角を指さすレドベージュ。
すると湖張は「分かった」と言って指し示された方向へ歩き始める。

広い路地から狭い路地へ、そして出店が並ぶ路地へと次から次へ景色が変わる街並みを見ながら先に進む二人。
ここにきて、どんな相手なのか急に気になりだし始める湖張。
レドベージュの話によると、とても良い子との事だが実際に会って確かめないと何とも言えない。
そのせいか、心なしか早歩きになってしまっている。

その調子で寄り道もせずに路地を抜けると、建物のない池のあるエリアに到達する。
街の中の公園として、そして生活用水として利用するための池として作られたのであろう。
街に隣接する川から水を引いてきているようである。

公園には大きな木々も生い茂っており、先ほどまでいた騒々しい街の雑踏の中で見た情報量の多い光景ではなく
静まり返った緩やかで優しい風景がそこにはあった。

不思議な事に静かな空気に包まれると、先ほどまでは早歩きではあったのだが、急に歩みがゆっくりになってしまった。
ひょっとしたら、街の騒々しさに影響されて歩く速度が速くなっていただけなのかもしれない。

ゆっくりと池の周囲を歩いていると、次第に木々に囲まれたエリアに移り変わっていく。
鳥のさえずりが聞こえてくると、心なしか神秘的な空間に思えてきた。

更に先に進むと、目の前に大きな大木が目に入ってくる。
この地区の象徴的な木なのか、周囲の木々と比べても一際目立つ大きさである。

そして大木の下には一人の少女が立っていた。
見た目は身長が150cm前半くらいの小柄で、腰の位置まで長く伸びた毛先にウェーブが掛かっているブロンドの髪が特徴的ある。
そんな細身の彼女は大木に向かって手をかざしている。

色白で華奢な手の先には綺麗な青色の蝶が今にも触れそうな位置で舞っており、あたかも少女と遊んでいるかのようであった。
そして、大木が作り出した木漏れ日が少女の姿を照らしていることもあり、その光景はとても神秘的で美しいものだと感じてしまい、
湖張は見とれるように立ち止まり、無意識のうちに固まってしまった。

そうこうしていると、レドベージュは湖張の袖を小さく引っ張る。
それにハッとすると、彼は少女に向けて小さく指をさす。
どうやら彼女がもう一人の仲間らしい。

このタイミングでレドベージュが声を出さずにジェスチャーで知らせてきたという事は
恐らくラナナを驚かせないために、最初は自分から話しかけて欲しいのかと感じ取る湖張。
そう受け止めると、レドベージュに向かって軽く頷いた後に、ゆっくりとラナナに近づくのであった。

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