ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百四十一話【守るための落下】
- 2025.01.20
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
その場に残ったゼンに対して襲い掛かる蛇のような口。
飲み込まれないように何とか体を逸らし、すんでのところで躱す。
「先輩!?」
大きな声を上げるラナナ。飛ばされた体制を直し状況を確認する。
すると目の前には捜索をしていた黒く謎めいた魔物が飛び上がっていた。
地面を割って飛び出てきたが故に、周囲には砂埃が立ち上がっている。
何故このタイミングなのか、何故この場所なのか。異様で異形の魔物は何を考えているのかが全く分からない。
ただただ不気味な姿をさらけ出し、気味の悪い敵意のようなものを周囲に振り撒いている。
「はぁ?何なんだよ、アイツ」
見上げながら驚嘆の眼差しを向けるタウン。あまりにも予想外の事で流石に戸惑いは隠せない。
そうこうしている間に自由落下で地面に舞い戻る魔物。飛び散る草原の草花。
土埃も舞い上がる。
「この!」
上空からラナナが2本の光の矢を放つ。しかし魔物は素早い動きで前進をし、簡単に躱してしまう。そしてそのまま湖張に向かって突進を仕掛ける。
「湖張!」
「このまま叩き切る!」
ハルザートが名を呼び警戒を促すが、湖張は立ち向かう選択をする。
開く鉄扇。そして飛び上がり、すれ違い際に首に目掛けて攻撃を仕掛ける。
しかし刃が首元に近づいた途端、灰色の光の壁が突如として現れ、金属同士がぶつかったような音を立て攻撃を弾いてしまった。
「え!?」
魔法で横方向に飛び距離を取る湖張。それに続くハルザート。
「これならば!?」
剣で魔物に向かって飛び掛かるが、同様に灰色の壁を展開され防がれてしまう。
予想以上に硬い。
「どういう事!?さっきはこんなの・・・」
「学習したのかもな」
湖張の横に位置したタウンが話しかけてくる。
「学習?」
「さっき、あっさりと首を落とされただろ?再生は出来るようだが、やっぱり落とされたくはないんだろ。だから防ぐようにした。分からなくはない話だ」
両手に剣を構え飛び掛かるタウン。両手で魔物に斬りかかるも
同様に灰色の壁で防がれる。
しかし深追いはせずに、すぐさま後方へ飛び距離を取る。そのついでにハルザートに近づくタウン。
「ハルザート、でかい剣を出して全力で叩き斬れるか?それこそあの防御壁を粉砕するくらいで」
「・・・良いだろう。やってみるか」
タウンの要請をすんなりと受け入れるハルザート。力任せも悪くないと感じたようで早速剣に青い光を宿らせ巨大化させる。
そして渾身の力で上から叩きつけると灰色の壁が現れ激しい音を立て拮抗状態になる。
「おいおい、マジかよ。耐えられるもんなのか、アレを」
半分引きつった顔で状況を観察するタウン。見るからに強力なハルザートの一撃を耐えている灰色の壁に対して驚きを隠せない。
「チッ、よく耐える!」
技を解き横方向に飛んで距離を取るハルザート。
剣を再び構え次の一手に備える。
「何か手はある?」
タウンに問いかける湖張。すると小さく息を吐いた後に返答がある。
「むしろ何かあるか?絶賛募集中なのだが?」
「・・・ひょっとして困ってる?」
キョトンとした目で湖張に見られると嫌そうな顔をするタウン。
「何だよ、その目は。大体、ああいう意味が分からない特殊な魔物はそちらさんの方が得意なのじゃないのか?」
「いや、そんな事を言われても・・・。しいていえば力づく?」
「結構脳みそ筋肉なのな」
「何それ、失礼じゃない?」
「コレコレ、ふざけている場合では無かろう」
二人のやり取りに割って入るようにレッド君が話しかけてくる。
その姿に少し期待を持ちつつタウンが問いかける。
「何か策がおありで?」
「フム、策という程ではないが、まずはあの防御壁をどうにかしないといけなかろう。
少し試したいことがあってな」
そう告げるなり上空にいる二人の魔法使いに対して大きな声を伝えるレッド君。
「威力は問わぬ。すまぬが上空からなるべく多くの魔法の弾を打ち込んでくれぬか!?」
その声を聞くなり見つめあうラナナとゼン。そして頷くなり手を魔物に対して向ける。
「湖張、お主も移動しながら地上から魔物に向かって光弾を放ち続けるのだ」
「分かった」
そう言うなり魔物の周囲を走るように横方向に移動しながら小さな光弾の魔法を連発する湖張。
すると魔物は当然のように灰色の壁を展開して魔法を防ぎ続ける。湖張の軌道に合わせて壁も移動していく。
その姿を確認するなり、上空からも魔法の弾が霰のように降り注いでくる。しかし同様に灰色の壁が上空からの攻撃に対しても現れて防ぎきっている。
「フム、ではこれはどうだ?」
今度はレッド君が湖張の反対側に移動するなり横方向に手を払うと、周囲には数多もの光弾が横方向に散らばる。そして魔物に向かって手をかざすなり、光弾は弧を描くように魔物に向かって高速で飛び掛かる。
すると灰色の壁の発生は無く、数多くの光弾が見事に命中する。
「お、当たったぞ?」
その様子を見逃さなかったタウン。レッド君を追って近づくなりそう呟く。
「フム、どうやら手数があれば防ぎきれないようだな。むしろ防げて二方向か?」
「なるほど、そういう事ですか」
「うむ、この人数だ。攻め方としては不可能ではなかろう」
ここでニヤッと見せるタウン。そして上空の魔法使いに大声を伝える。
「ゼン、ラナナ!お互いに距離を取って別方向から魔法で援護してくれ!」
次に湖張に向かって声を上げる。
「湖張、遠くから同じように魔法を頼む!」
「分かった!」
その声が返ってくるなり、そばにいるレッド君に対しても依頼をするタウン。
「すみませんが、援護射撃をお願いしても?」
「構わんよ」
軽くペコリと頭を下げた後に、少し離れた位置にいるハルザートに作戦を伝える。
「どうやら二方向しか防げないようだ!援護射撃の中、俺らでぶった斬るぞ!」
手を上げて答えるハルザート。それを確認するなり号令を上げるタウン。
「作戦開始だ!」
上空から降り注ぐ魔法。
そして湖張とレッド君も決して弱くはない攻撃力の魔法を放つと4方向からの攻撃になり魔物は防ぎきれずに、直撃を何発も食らう。
魔法の合間を見て飛び込むタウン。そして数発斬りつけた後にまた回し蹴りを首の根付近に当てると、再び大きく吹き飛ぶ魔物。
「・・・あの人の蹴り、本気だとあんなに強いの?」
出鱈目な威力の蹴りに半分呆れながらも魔法を放つ湖張。
手から放たれた雷は魔物を貫く。
「今度は私の番だ!」
剣を両手に強く握りしめて魔物を薙ぎ払うハルザート。
同様に攻撃は見事当たり、胴体の硬い外装が少し砕け飛ぶ。
「狙う!」
砕けた外装の下に狙いを定めるラナナ。そして光の矢を放つと貫通をして矢が消えた後に灰色の血しぶきが一瞬だけ噴き出す。
「効いたようだな!」
攻勢に乗るタウン。剣で斬りかかると、今度は灰色の壁に防がれてしまうがニヤッと見せ声を上げる。
「ハルザート!やっちまえ!」
彼の視線の先には崖を背にした位置からハルザートが巨大な青い剣を横方向に振りかざしている姿があった。
フルスイングで魔物を叩き斬ると外殻を砕け散らしながら転がる魔物。そして腹部をさらけ出す。
「やったか」
倒れる魔物をジッと見て呟くハルザート。太い四脚の裏側が自分に向けられており横方向に倒れた魔物はこのまま立ち上がれないように見える。
「やるじゃねぇか」
感心したような表情を見せるタウン。勝ちを感じ取った様子である。
しかしその一方、湖張は少し神妙な顔つきであった。
(何だろう?違和感がある・・・)
理由は分からなかったが、まだ終わりを感じ取れなかった湖張。と、その時であった。
急に魔物の四脚がそれぞれ縦に割れて、中から首と同様の形状をしたものが口を開いてハルザートに狙いを定める。
「何!?」
慌てて巨大な青い剣を盾にするように構えるハルザート。その直後に四本の強力な砂の流れが彼を襲う。
懸命に防ぐハルザート。しかし数秒間耐える事は出来たが、強力な流れの前に吹き飛ばされてしまう。そして背後にある絶壁の空に投げ出されてしまった。
「ハルザート!」
違和感を感じていた湖張はすぐさま飛び出す事が出来ていた。
崖に向かって飛び出し、投げ出されたハルザートを抱きしめると、体勢を直そうとする。
しかし魔物に視線を移すと、再び足のような首から砂の流れの狙いを定めている事に気づく湖張。このままだと狙い撃たれると感じ取る。
(このままじゃやられる!)
そう感じるなり崖の下を見る湖張。そして決心する。
(下だ!)
その場にとどまるのではなく、いっその事崖の下まで落ちる事を選択する湖張。
自由落下では無く、魔法の力で一気に崖を落ちる事を選択した。
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