ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十二話【新しい仲間を求めて】
- 2020.08.09
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「湖張ちゃん、行っちゃうのかよぉ!」
一夜明け、村の入り口の前で村人総出で見送られている湖張たち。
あの後はうまい具合に二人は部屋に潜入する事に成功し、早々に休むことが出来た。
一方村人たちは湖張が姿を見せなくても相変わらず夜通し飲み続けていたようである。
やはり飲むきっかけが欲しいだけだったのかもしれない。
しかしながら湖張に対しては本当に感謝をしているようで、
朝が早い時間だったにもかかわらず、多くの村人が見送るために集まってくれた。別れの時が皆辛そうである。
「ごめんなさい、でももう行かないと。色々と親切にしてくれてありがとうございました」
湖張が笑顔で挨拶をするが、その姿を見て泣き出す村人も数人いたので少し気まずくなる。
「いや、湖張ちゃんには本当にお世話になったから別れが辛いよ。また来てくれよな!」
一人の男性がそう言うと「分かりました」と言ってから小さく頷く湖張。
と、その時である、昨日馬車の御者をしていた男性が村人の前に立って大きな声で提案をし始める。
「そうだ、そうしたらこの村の英雄という事で、湖張ちゃんとレッド君の石像を作ろうぜ!」
「は?」
突然のとんでもない提案に顔をしかめる湖張。
しかしながら村人のやる気には火がついてしまったようだ。
「おお、それいいな!」
「やろうぜ!」
「賛成だ!」
「あああああ、何でこうなるの・・・」
唖然とする湖張。しかしながら、こうなるとこの村の住人は止められないという事は
この二日間の宴で分かっていたので、諦めることにした。
「・・・じゃあ私たちは行きますので、皆さんお達者で」
苦笑いで村を後にする湖張とレドベージュ。
すると村人たちは大きく手を振り、別れを惜しみながら見送ってくれた。
「何か凄い村だったね」
村が見えるか見えないかの位置まで移動すると、歩きながら湖張はレドベージュに話しかける。
「うむ、愉快な住人たちであったな。
でもあの光景は湖張が村の平和を守ったから見る事が出来た光景だ。
良くやったな」
「私だけじゃなくって、レドベージュもでしょ」
「ふむ、そうでもあるか。でもまあこのような感じで旅をしていけば良い。
大丈夫そうか?」
「うん、大丈夫だよ」
「そうか。ならば良かった」
その答えを聞くと、心なしかレドベージュは安心した素振りを見せた気がしたので
ひょっとしたら、自分を赤き聖者に加入させて辛い思いをさせていないかが心配なのかもしれないと感じた湖張。
実際のところ、特に嫌な事は無いので心配かけないような姿勢を見せた方が良いかなとも思えてきた。
「ねえレドベージュ、赤き聖者になってまだ数日しか経っていないけど
毎日いろいろな事があって、個人的には楽しんでいる部分もあるよ。
だから心配しなくて良いよ」
湖張が歩きながらそう言うと、レドベージュは数秒の間だけ視線を湖張に移す。
「そうか」
そう一言だけ返すと、今度は彼の視線は遠くの空に向けられていた。
「さてと、今日は更に東にある街を目指すんだよね?
そこにもう一人の仲間がいるんだよね?」
昨夜のうちに本日の予定を打ち合わせていたので、再確認の意味でそう聞くとレドベージュは頷く。
「うむ、そこにラナナはいるようだ」
そこまで聞くと、湖張は少し考えているかのような表情でレドベージュをジッと見つめる。
「む?どうかしたのか?」
湖張の視線に気が付くと、不思議に思ったのかレドベージュが問いかける。
「そういえばさ、何で仲間の居場所が分かるの?」
その問いを聞くと、一呼吸の間を置いた後に答えが返ってくる。
「・・・ふむ、少し引かれるかもしれないが、まあ良かろう。
実は湖張もラナナも赤き聖者の候補者として申し分ないと判断した時に
こっそりと居場所が分かるように仕掛けをしておいたのだ」
「仕掛け?」
「うむ、拳ほどの大きさの魔道具があってな、それは位置を知らせるために
微量の魔力を常に放ち続けているのだ。そして我はその魔力を辿っているにすぎん。
そしてその魔道具だが、湖張とラナナには気付かれないように二人の上空50mの位置を飛び、
常に二人の頭上をついて回っていたのだ」
「え!?」
その話を聞くなり、自分の頭の上を見上げる湖張。
「ああ、既に湖張とは合流しているから魔道具は無いぞ」
「そうなの?」
「うむ、こんな事をやっておいて何だが、常に尾行させて所在地を分かるようにしていたのだ。
やられている本人からしたら薄気味悪い行為であろう?」
「ああ、まあそうだね、犯罪の臭いがする行為だね」
「すまぬな」
「・・・まあ良いよ。必要だからそうしていたのだろうし、今はそんな事していないのでしょう?」
「そう言ってもらえると助かるな」
「それに正直に言ってくれたのだから、やましい事は無いと捉えておくよ」
「うむ、助かる」
「でもそれで合点がいったよ。レドベージュと初めて出会った場所って洞窟の中だったでしょ?
何で私がそこにいるのが分かったのか、前から疑問だったんだよね。
結局はその魔道具が居場所を教えていたという事でしょ?」
「うむ、その通りだ」
「でも上空50mの位置に魔道具があるんだよね?
洞窟の中だと遮るものがあるから、50m上にはいられないんじゃない?」
「いや、あの程度の洞窟であれば、そこまで深く埋まっているわけではないから、魔道具は洞窟の上空で追尾出来る。
なので大体は分かったぞ」
「まあ一本道でもあったしね」
「うむ」
そう会話をしてから数歩だけ歩くと、湖張はハッとした表情でレドベージュを見つめる。
「ひょっとして今さっき遠くの空を見ていたのって、その魔道具を確認していたの?」
「うむ、その通りだ。呆れたか?」
「いや、そんなことは無いけど・・・。まあ強いて言えばレドベージュの行動って
全てに何かしらの意味があるのかなとは思えたかな」
湖張が顎に手を当てながらそう言うと、首を振るレドベージュ。
「いや、そんな事は無いぞ。むしろ無意味な行動も多い」
「そうなの?」
「うむ」
「・・・あーそういえば、この前は不貞寝をしていたよね」
「よりによってそれを例に挙げるか・・・でも確かにそれは無意味な行動ではあるな」
「でもそれって、気分を落ち着かせるというか、気持ちを整理させるためには必要な行動なのかな?」
「いや、そこまで深く考えなくても良いぞ
「それもそうだね」
本日の天気は心地よい晴れ。街道の脇には小さな草木が生い茂り、可愛らしい蝶がひらひらと舞うように飛んでいる。
空を見上げると白い雲と大きな鳥の姿が目に映り、長閑な空気が心地良く感じる。
そのような環境の中、二人はとりとめのない会話をしながら隣の街を目指して歩いて良くのであった。
<NEXT→>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十三話【木漏れ日の中の少女】
<←PREV>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十一話【宴会二日目】
-
前の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十一話【宴会二日目】 2020.08.03
-
次の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十三話【木漏れ日の中の少女】 2020.08.10