ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第二十九話【観光の後の帰り道】
- 2020.07.25
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「よっ、ほっ、よっと!」
小刻みに声を出しながら、テンポよく川の上に頭を出している岩の上を両手を広げながら飛び移る湖張。
その姿は少し楽しそうである。
講習会が終わった後は、ゆっくりと昼食を終わらせた後に少し休憩をしてから塔を後にした。
帰りの山道は下り坂が多かった事と、少々の高さぐらいの崖であった場合は飛び降りて近道を取った事もあり、
あっという間に下山をしていた。
今は山を登る前に渡った川を戻っている最中である。
天気は相変わらずの曇りではあったが、行きよりは若干ではあったが雲の合間から晴れ間が見える。
帰り道の途中でレドベージュは時折、あの花は食べられたり、この草は熱さましになったりというような
見かけた植物についての豆知識を教えてくれた。
湖張は今までの生活で食べられる植物であったり、薬草になる植物であったりの知識は経験として蓄えてはいたが、
レドベージュが教えてくれる内容は、知らなかった事ばかりで、とても新鮮であった。
「レドベージュって博識だよね」
次から次へと新しい知識を出してくるレドベージュに尊敬の眼差しでそう伝える湖張。
「まあ長年生きているというのもあるが、そもそも我は人の繁栄を手助けする立場の者だ。
人にとって有益な情報を多く持っていて当然だ」
「そっか、そうだよね。もともとはこの惑星の繁栄が役目なんだもんね」
「うむ、その通りだ」
穏やかな雰囲気で会話をしながら村に向かう二人。
道中ではたまに野生の動物の他に魔物も見かけることがあったが、
特に害も無さそうなので、そのままにしておいた。
「そう言えば今日も盛大なお祭り騒ぎなのかな?」
「うむ、そうであろうな」
「元気だよねぇ」
「ただ単に酒が好きなだけなのだろう」
「そうかもしれないね」
ふと、今夜も宴会を開くようなことを出発前に村民が言っていたのを思い出し
とりとめのない会話をする。
と、その時であった。村の方から馬に乗った人が迫ってきていることに気づく。
「いたー!湖張ちゃーん!!」
少し離れたところから自分の名前を叫びながら近づいてくるのは、昨日滞在した村の住人であった。
昨夜の宴会で見覚えがある顔である。遠くからだと分からなかったが、
近づいてくると、その表情から慌てている様子がうかがえる。
「いた!やっと見つけたよ!!」
「どうしたんですか?」
湖張の前で馬を止めるなり、慌てて話しかける男性に湖張は反応すると、
よっぽど慌てていたのか、馬から降りようとしたときにバランスを崩して落馬してしまう。
「ちょっと、大丈夫ですか!?」
「イテテ・・・。大丈夫だけど、それどころじゃないんだ。
魔物が!村に魔物が出たんだよ!!」
「え!?」
予想もしていなかった事を告げられると、当然のように驚く湖張。
一度レドベージュに目を合わせた後、村人に詳しく事情を聴く事にする。
「魔物ってどういう事です?被害は!?」
「いや、それがさ・・・被害は追っ払おうとした衛兵が打撲したのと
畑が荒らされているくらいなんだよね」
「へ?」
「いや、急に村の敷地内に魔物が入り込んだと思ったらさ、
一目散に畑に向かって芋を掘って食べているんだよ」
「芋?」
「そう、芋。ちなみにキャベツには全く見向きもしない」
「はぁ」
「たださ、それでも芋は大切な食糧だからさ。衛兵が追っ払おうとしたんだよ。
そこで遠くから弓矢で魔物を追っ払おうとしたんだけどさ、
矢が弾かれて刺さりもしないんだ」
「相当硬いという事?」
「ああ、そのようなんだ。でも魔物は怒っちゃってさ、衛兵に体当たりをしてそのまま打撲だよ」
そこまで話を聞くと首を傾げる湖張。
「うん?打撲だけで済んだのですか?魔物が襲ってきたんですよね?」
「ああ、それがさ・・・一発やり返したら気が済んだのかな?また畑に戻って芋掘りを再開しちゃったんだよね」
「へ?」
「よっぽど芋が好きなようなんだよな」
「でもそれは放ってはおけないですよね。このままだと芋が食べつくされちゃいますよ」
「いや、それがさ・・・その魔物って芋を掘るのが下手っくそでさ。全然収穫できてないんだよ。
しかも一個一個味わっているのか、とてもゆっくり食べているから、全くと言っていい程に被害が無いんだよね」
「・・・うん?」
「本当に奇妙だよ。ただ芋をゆっくりと食べているだけなんだよね」
そこまで話を聞くと、眉をひそめながらレドベージュと目を合わす湖張。
今の状況が良く分からないという事を表情で表すと、レドベージュは首を傾げる素振りを見せる。
どうやら彼も良く分からないようだ。
「えっと・・・とりあえず私はどうしたらいいです?」
結局のところ、自分のところに慌てて来た理由が分からなくなってきたので村人に尋ねると、
彼は両手を合わせてお願いをする姿勢を見せる。
「ごめん湖張ちゃん!あまり実害は無いとは言っても、これから何が起こるかは分からないから不安ではあるんだ。
悪いけど退治をお願いできないか!?衛兵はどうにもできそうには無いから、頼れるのは湖張ちゃんだけなんだ!」
「あー・・・まあそうなりますよね」
そう反応してから横目でレドベージュを確認すると、頷いた素振りで答えが返ってくる。
「分かりました。そうしたら案内してくれます?」
「おお!ごめんね、疲れているところ」
「いえ、平気ですよ」
その答えを聞くと、男性は馬に飛び乗る。
「流石にこの馬に湖張ちゃんとレッド君は乗せられないから、
先に戻って馬車を連れてくるよ!
それまでは悪いけど村に向かって歩いてもらって良いかい?!」
「あ、いえ・・・私たちは歩いて村に戻りますよ」
「いや、少しでも早く村に戻ってもらった方が良いからさ」
「あー」
「とにかく今から馬車を連れてくるから、また後でな!」
そう言うと慌ただしく男性は村に戻っていった。
「どう思う?」
男性の後姿を見ながらレドベージュに話しかける湖張。
「うむ、はっきり言って全く分からん」
「やっぱりそうだよね」
「とにかくまずは魔物を確認してからだな」
「分かった」
そう簡単にやり取りをすると、二人は少しでも村に近づけるように再び歩き始めた。
<NEXT→>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十話【芋を食べる魔物】
<←PREV>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第二十八話【この惑星(ほし)と神について-5】
-
前の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第二十八話【この惑星(ほし)と神について-5】 2020.07.20
-
次の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第三十話【芋を食べる魔物】 2020.08.02