ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第四十一話【宿屋への帰り道】

           

宿屋への帰り道も、湖張とラナナは楽しそうに会話をしながら歩いていた。
ラナナに対する第一印象は一応警戒されていたという事もあるのだろうが、隙の無いタイプの人間という感じではあったが、
いざ話してみると親しみやすく、妙に話しやすい相手であった。

「メーサ教・・・ですか?」
帰り道で話した内容は、今まで赤き聖者として旅をしていた中で起きた事が主なものであった。
その中でメーサ教について何か知らないかと聞く湖張。
話の流れとしてどうしても関わってくる内容なので自然の流れでもあった。

「そう、メーサ教。
レドベージュも実態は分からないんだって」
「レドベージュ様もですか?」
「様はいらないぞ」
「・・・レドベージュもですか?」
「うむ、それで良い」
ぎこちないやり取りをした後に、少し考えるラナナ。

「・・・ごめんなさい、私もメーサ教については分からないです。
正直なところ聞いたことがありません。
ただ、最近になって信者が急増している新興宗教があるという噂を学校で小耳に挟んだことがあります。
ひょっとしたら、それがメーサ教だったのかもしれませんね」
「新興宗教?新しくできた宗教って事?」
「はい」
その話を聞くと、レドベージュは少し考え込む。

「ふむ、確かに我も聞いた事が無い団体なので新興宗教なのだろうな。
どのような内容かは聞いてはいないか?」
彼の質問を聞くなり、少し上を向いて考えるラナナ。
何かを思い出そうという雰囲気が伝わってくる。

「そうですね・・・内容ではないとは思いますが、とにかく信者を集める事に力を入れていると聞いたことがあります」
「信者を?」
「はい。・・・ってその話がメーサ教だという確証は有りませんからね!?」
何となくメーサ教の話をしているような雰囲気になっていたので、慌てて違う可能性もある事を訴えるラナナ。
すると腕を組んで考える素振りを見せる湖張。

「そっか、要するにまだ調べる必要があるって事だね。
まあ気長にいけば良いよね?」
確認をするように彼女はレドベージュに問いかけると「そうだな」と一言だけ返ってくる。
メーサ教の実態を掴むには、もう少し時間が掛かりそうだ。

「話を聞く限り、赤き聖者の仕事は戦うだけではなくて、こういう調査も行うのですね」
メーサ教の話がひと段落着いたところで、ラナナが感じた事を訪ねてくる。
「うーん、そうだね。そんな感じかな?
あ、でもこの前は観光にも行ったね」
「観光ですか?」
ニッコリと話した湖張の言葉に、不思議そうな顔で聞き返すラナナ。

「そう、レドベージュや神様の生まれ故郷に塔が隠されていて、
そこで私たちが住む場所の成り立ちから、神様についての勉強をしたの」
湖張が何気なくそう言うと、その場で立ち止まるラナナ。
その表情は固まっている。

「うん?どうしたの?」
不思議そうに問いかける湖張。
と、次の瞬間ラナナは湖張に飛びついてくる。

「ちょっとそれはどんな内容なのですか!?詳しく!!詳しく教えてください!!」
「え!?えええ?!」
目を大きくし、必死の表情で訴えてくるラナナ。それに戸惑う湖張。
どうやら塔での話は、ラナナの知識欲を刺激してしまったようだ。

「あー、えっと・・・
うん、ちょっと落ち着こう」
そう言ってラナナの両肩をポンと優しく叩いて静止させる湖張。
そしてレドベージュに視線を移す。

「うん、私では説明がきっと不十分になる。
レドベージュ、お願い」
話をレドベージュにパスをすると、ラナナは期待の眼差しで彼を見つめる。
その眼差しと視線が合うと、一つため息をついた後にレドベージュは返事をする。

「・・・まあ良かろう。湖張だけに教えるのも不公平ではあるし
ラナナも赤き聖者なのだ。知っていても良かろう」
「本当ですか!?」
満面の笑みのラナナ。しかしレドベージュは両手を小さく上げて静止を促す。

「とは言ったものの、少し長い話になる。
落ち着いて話をするために宿に戻ってからで良いか?」
「もちろんです!」
心なしか、ラナナの目が輝いているように見えると、苦笑いをしながら湖張が二人に話しかける。

「そうしたら少し話が長くなると思うから、私はちょっと街を散策してから戻ろうかな。
折角来たのだから色々見てみたいし」
二人の様子を窺いながら、街を少し見て回りたいと申し出る湖張。
言葉には出さなかったが、また難しい話を聞く気分になれなかった事と、ここまで賑やかな街にはあまり訪れた事もなかったので
純粋に見て回りたいと思ったからだ。するとそれを察してくれたのか、レドベージュは小さく頷く。

「ふむ、それも良かろう。こういう場所の見分を広める事も重要だ。
行ってくるが良い。ただ、夕飯までには戻るのだぞ?」
「何それ、お母さんみたい。大丈夫だよ。ちょっと見たらすぐに戻るから」

再び苦笑いを見せる湖張。そして片手を小さく上げて二人に挨拶をすると、
出店が広がる賑やかな路地の方に向かう事にした。

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