ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第二十八話【この惑星(ほし)と神について-4】

           

湖張とのやり取りが一段落つくと、柱の彫刻をジッと見つめるレドベージュ。
「・・・そう言えば本来伝えようとしていた内容からずれてしまったな。
まあ良い、話を戻すとしよう。
我ら従者と民を与えられた三人の神は共に手を取りこの世界を作り上げていった。
村を作り、それが町となり、そして国になっていった。
また、国になる頃には神という存在は絶対的すぎるので常に頼られてしまい
人の発展を阻害すると考えられた。
そこで空高くに神の住む地 ”天” を作りそこから人の発展を見守ることにした。

そしてもし人の手に余るような問題が起きた時は、天からの使いが力を貸すという流れだ。
赤き聖者もその一環だな。

その方針は間違いではなかった。我らが天に移住した事により、
人は自らで考え、発展をしていった。
時には争いも起きたが、おおむね順調であった。

その一方で新たに作った天の方も順調であった。
住む場所を作っただけではなく、三神や我ら永久リビングアーマーのサポートをするために
新たに天使という存在を作り、それぞれの神の配下につけ組織立った行動をとるようになった。
天からこの惑星を見守るには三神と我らだけでは手が足りなかったという理由も大きかったな。
天使達はそれぞれの神に忠実に仕え、この惑星の為に尽力をしていた。
更には天ではこの惑星の存続を盤石なものにするために様々な技術研究をも行い、
行く末は安定していると思われていた。

しかし、それも永遠には続かなかった。
地上で暮らしていた三神に与えられたそれぞれの民は別々のエリアに住んでおり、民同士の交流は無かったのだが、
そんな中リンキ神の民に問題が起きた。
というのも謎の伝染病が流行り、リンキ神の民の国が傾いてしまったのだ。
そこでリンキ神は自らの力を流行り病が蔓延している国中に振りまいて
民の衰弱を抑え、病原菌がこれ以上活発にならないようにした。

そのリンキ神の行動によって、事は収まるかと考えられていた。
しかし伝染病が収束しつつある中でリンキ神は急に神の立場を放棄すると宣言したのだ。
というのも、国家が転覆するほどの伝染病を未然に防ぎきれなかった自分は神の資格が無いと考え、
他の神に後を託し、神である事と不老不死である事を捨て、自らは人として生きる事にしたのだ。
その影響で、従者であるリティーも体を封印し思念体となって人の世に干渉をしないようになった。
また、リンキ神に仕えていた天使達は本人たちの希望でウーゾ神に仕える事になった。

しかし、よりによってそのタイミングでウーゾ神が反乱を起こしてしまった。
ウーゾ神自らの口からは語られてはいないが、どうやらラリゴ神のやり方に不満を持っていたようで、
様々な研究物が保管されてある天の研究所と保管庫を消滅させ、従者であるキュベーグと天使達を連れて逃亡をしたのだ。

すると当然のようにラリゴ神は激怒し、追撃する戦いが始まった。
しかし戦自体はさほど長期戦にはならなかった。
というのもウーゾ神は退路をしっかりと確保した状態で事を起こしたので、撤収は敵ながら見事な物であったのだ。

しかしラリゴ神陣営としては決して許される事のない暴挙だったので、意地でも捕まえようとした。

だがその結果、とてつもない痛手を負ってしまう事になった。
ウーゾ神陣営を追い詰めた時、ウーゾ神の従者であるキューベーグを討つために天将シャドゥベージュが切り込んだのだが、
キュベーグの術にに掛かり行方不明になってしまった。
いや、恐らく消滅させられたのであろう。以後、シャドゥベージュと会うことは無かった」

「・・・」
「そしてその直後だ、その場にいたウーゾ神陣営は大きな闇に包まれ、あっという間に姿を消してしまったのだ。
というのも天にも、そしてこの地上にも居場所がなくなったウーゾ神は、地底深くに自らの民を連れて移住したのだ。
もともとウーゾ神は人の住む環境を整えることが得意ではあったので、どういう仕組みかは我も分からないが、
地底深くに人が住める世界を作っていたのだ。そこを盲界(もうかい)と呼んでいる。
ウーゾ神が決起する直前に、民は一斉に強大な術により盲界に転送されていたようで、追撃戦で逃れていたウーゾ神とその従者たちが
最後の移住者だったようだ。
そしてウーゾ神とキュベーグ、その民は今もなお盲界で息を潜めているのだ。これがウーゾ神が邪神と呼ばれている理由だ。
まあ神話では、邪神が世の中の全てを手に入れようとしたが、神の手によって野望は打ち砕かれたというような簡単な表現だけで
先ほど伝えた話の内容は全く記されていない」

「この地下にそんな世界があるんだ」
「うむ、だが実際に何処にあるかは分からないのだ。
ウーゾ神は巧妙に隠しており、天の力を持ってしても所在は掴めていない」
「そうだったんだね。何か悲しいね。折角仲良くやっていたようなのにいがみ合うなんて」

「・・・そうだな。三神が今もなお手を取り合っていれば、より良い世界になっていただろうな」
湖張の言葉には直ぐに反応をせず、少しの間を取ってから答えるレドベージュ。
その様子は心なしか、少し寂しそうでもあり、もの悲しそうでもあった。

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