ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第二十八話【この惑星(ほし)と神について-3】
- 2020.07.20
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「そういえばさ、ウーゾ神もリンキ神も従者は一人だけなの?」
柱を見上げながらポツリと湖張が何気ない質問をすると、レドベージュも柱を見つめながら答える。
「うむ、むしろラリゴ神に4体いる方がイレギュラーなのだ」
「そうなんだ。じゃあラリゴ神だけが特別待遇という事?」
「いや、そういうわけではない。
簡単に言ってしまうと、キュベーグやリティーは我の4倍強い。
つまり我らの力は4体で1体分だ」
「そうなんだ。でも数的優位はあるんじゃない?」
「まあそれは否めないかもしれんな」
「そっか」
「では話の続きをしても良いか?」
「あ、ごめん。お願いします」
そう言うとレドベージュは足を前方に伸ばすようにして、敷物の上に珍しく座る。
「え?レドベージュって座れたの!?」
「うむ、こういう平らなところだったら座れるぞ。たまにはこういう雰囲気で会話するのも良かろう」
「あはは、そうだね。なんか親近感が湧くな」
「そうか。では続きを話すぞ。
それで創世主様は三人の神に我らを授けただけでは無く、
最後に人を作られて、それぞれの神に500人ずつの民を分け与えたのだ」
「・・・え?人って創世主様が作ったの?
何かの本で猿から進化したって読んだけど」
「うむ、実は違うのだ。猿や類人猿は自然発生こそしたが、人にはならなかった。
少し話は変わるが、動物と魔物の違いは分かるか?」
「え?魔法が使えないのが動物で魔法が使えるのが魔物だよね?」
「うむ、その通りだ。では何故、人は魔法が使える?」
「・・・それは知能が発達して魔法の使い方を理解できたからと本で読んだけど・・・まさか!?」
「人は、創世主様によって作られたから魔法が使えるのだ。人は動物のようで動物ではないのだ」
「・・・」
自分が今まで知っていた、一般常識とされている内容がことごとく覆されたため、言葉を失ってしまう湖張。
その様子をレドベージュは静かに見つめる。
「流石に驚いたようだな」
「・・・ねえレドベージュ。そもそも魔法って何なの?その話を聞くと、何か魔法も普通ではない存在じゃない?」
「そうだな、実は魔法は通常ではこの惑星の生き物が使えるようなものではない。
というのも、この惑星を構成した物質には魔法を使うための元素は存在しなかったのだ。
なのでこの惑星から生まれた生物も当然のように魔法を扱うための元素を体に宿していないので魔法を使うことが出来ない。
元素というものは、この世のすべての物を構成する要素の事だ。空気や水、金属や生き物の体など全ての物には
様々な元素が合わさって構成されている。
そして魔法というものはな、魔素(まそ)という元素を操る術の事だ。
通常、元素を他の元素に変化させることは中々出来る事ではない。
しかし魔素だけは別で、簡単に構造を変化させることが出来る。そして構造を変化させた時に大なり小なりエネルギーが生じるのだ。
それを利用したのが魔法だ。エネルギーを熱に変え、更には魔素を可燃性の分子に変え、更には空気中の酸素と合わせて炎を繰り出す魔法や
エネルギーを冷却することに使い、空気中の水分や魔素を変化させて作り出した分子を氷に変えて矢のようにして飛ばす魔法などがあるな。
前に教えた洗濯の魔法だって、生じた小さなエネルギーで汚れを浮かせて弾き飛ばしているにすぎん。
そしてその魔素は空気中や水中、大地の中など何処にでもある決して珍しい物ではない。
よく魔力を溜めておくと言うが、これはこの魔素を溜めているにすぎないのだ。
我が夜中に休んで取り入れて溜めているのはあくまで魔素なのだよ。
また、体内にもある程度の魔素を溜めこむ事が出来る。魔法を放つ時は
周囲の魔素を利用する他に体内の魔素を使用する方法もある。
魔法を沢山使える者は、より多くの魔素を溜めこめる体質ということだ」
「じゃあその魔素が元々この惑星にはなかったっていう事なの?」
「いや、そうではない。先ほども言った通り魔素は何処にでもあるのだ。
話はまだ続きがある。というのもこの魔素だが、先ほどは簡単に構造を変化させることが出来ると言ったが、
実はある前提条件が必要なのだ。それは転素(てんそ)という元素が干渉する事だ。
この転素に微量の電気信号が走ることによって、周囲の魔素は構造を変化させる。
また、電気信号の走らせ方によって、魔素の動きを制御する事が出来るのだ。
そしてこの転素こそがこの惑星には元々ないものであった。
なのでこの惑星で自然発生した生き物の細胞にも転素が含まれていないので魔法が使う事が出来ない。
しかし魔法が使えないとこの惑星の繁栄は、いずれ大きな壁にぶつかると判断された創世主様は人の体に転素を授けた。
そして”魔法”を授けられたのだ」
「じゃあ私たちが魔法が使えるのはその転素が体に含まれているから?」
「うむ、その通りだ。そして我の体にも転素が含まれている。
ちなみに魔法の得意不得意は結局のところ、魔素を溜めこめる量もさることながら、この転素が体内にどのくらいの割合で含まれているかというところと、
どのくらい上手く転素を操れるかという部分が影響している。
なので湖張の魔法が得意な理由というものは、体の中の転素の割合が多いという部分が影響しているのであろう」
「そうなんだ・・・じゃあさ、魔物は一体何なの?魔物も魔法を使うのだから、本来はこの惑星にいないはずだよね?」
「うむ、そう疑問を持つことが普通ではあるな。
そう、本来魔物はこの惑星には存在はしなかった。だが過去にとある事件が起こったのだ。
そしてそれは創世主様がこの惑星に神を置いた理由にも繋がる。
まず前提として覚えておいて欲しい事は、転素はこの惑星には無いと言ったが、それはあくまでこの惑星には無いというだけで
他の星には存在しているという事だ。
それで何が起きたのかだが、約6,500万年前にこの惑星に巨大な隕石が落下したのだ。
その影響は物凄く、気候までも変わってしまい惑星に住む75%の生物は死に絶えた。
しかしこの惑星にとっての本当の痛手は衝突による衝撃でも環境の変化でもなかった。それは転素を持った微生物だ。
実はその隕石には転素を持った微生物がが多く含まれていたのだ。
通常、隕石が落下した衝撃で生物など生き永らえるはずは無いのだが、落下途中に剥がれた破片が別軌道でこの惑星に落下し、
そこに付着していた微生物は生き永らえてしまった。そして数千万年もの時間を、それこそ我らが降り立つ前までの時間をかけてこの惑星に徐々に適応していき、独自進化をしていった。
その結果誕生したのが魔物だ。
そしてその魔物がより強力に進化していくと、この惑星は危機にさらされてしまう。
そこで魔物に対抗するための魔法を扱うことのできる知的生命体である人間をこの惑星に誕生させ、
人間を導くために神をこの惑星に降り立たせたのだ」
「そんな事があったんだ・・・。
じゃあさ、その創世主様というのはいったい何者なの?
何でこの惑星の事を思ってそんな事をするの?」
湖張が次に浮かぶ根底ともいえるような疑問を投げかけると、首を横に振るレドベージュ。
「・・・その質問に関しては実は我も分からないのだ。
創世主様が一体何者で、何故この惑星の繁栄を願っているのかは分からぬ。
その事は教えてはくれなかったからな」
「そうなんだ」
湖張がそう言ってパンを再び口にすると、
レドベージュは少し考えた後に話始める。
「ただ我の想像で良ければ答えることが出来る。
恐らく創世主様はこの惑星そのものか、太陽ではないかと我は考えているのだ」
「え?」
「話は少しそれるが、生命とは何だと思う?」
「えっと、今日の質問は何か難しいものばっかりだな。
・・・生身の肉体があって生きているものとか?」
「ふむ、確かにそう考えることが普通だ。
では聞くが、我は生命ではないか?」
その質問を聞くと気まずそうな顔をする湖張。
「ああいや、別に困らせようというつもりで言ったのではない。
自分で言うのも何だが、我の様な存在は決して生き物ではないであろう。
だが生命ではあると我は考えている。
我は思うのだ、有機物であれ無機物であれ、生きる努力をする者は生命なのではないかと。
そしてこの惑星は生身の体は無いにせよ、一生懸命生きようと努力する心はあるのではないかと考えているのだ」
「惑星に心が?」
「うむ、素っ頓狂な事を言っているとは思うが、どうしても我は惑星に意思があるように思える。
例えば空気や川が汚れても自浄作用で綺麗になるであろう?
生態系がうまく保たれるように食物連鎖が成り立っているであろう?
風が吹き、雨が降ることで様々な生命が繁栄する事が出来るであろう?
それはこの惑星が自身を維持したいがためにやっているのではないかと思える時がある。
そしてこの惑星に外部から転素を持った生物が入り込んだので、自浄作用として
この惑星は創世主様となり、神と転素を持った人類を誕生させた。そう考えると納得が出来る気はしないか?」
「そうだね、そう考えるとそうかもしれないね。
でもこの惑星には転素は無かったのでしょう?そうしたらどうやって転素を持った人を作ることが出来たの?」
「そう、そこなのだ。実はここまで言っておいて何なのだが、この仮定だと転素の部分で引っ掛かる部分がある。
また他もそうだ。この惑星には人はいなかったし、ましてや人が身に着ける鎧という概念すらないのに
どうやって神と民、そして我ら永久リビングアーマーというものを作ることが出来たのだ?
急に思いついたにしては、出来すぎている感じがする」
「確かに急にイメージできるものじゃないよね。でもそれは人の頭の限界で有って、もっと偉大な存在だったら出来るんじゃない?」
「そうかもしれないが、そこで我はこの仮定も立てているのだ。
この惑星になる前の世界に神や人、そしてリビングアーマーがいて、それを基にして作ったのではないかと」
「・・・どういう事?」
「最初に星が寿命で大爆発したと言ったであろう?
その大爆発する前には、人が栄える惑星があったとは考えられないか?
そして、その世界の様子を惑星が記憶をしていたとしよう。
その中で大爆発が起こり、栄えていた惑星は粉みじんになってしまった。
だが、砕け散った惑星の心は塵と共に漂い続け、そしてまた集まりこの惑星になった。
すると、前の惑星の時の記憶も塵と共に引き継がれ、当時栄えていた人と文化のイメージを
この惑星に蘇らせたのではないかと考える」
「つまり、消え去った惑星に住んでいた人を基に出来たから、いきなりこの惑星に誕生させることが出来たと考えるの?」
「うむ、その通りだ。
そして創世主様が我らに下した使命はこの惑星を永久に繁栄させる事のみだ。
恐らくそれは、大爆発で全てが消えた事が無念だったので
今度は大爆発が起きても生き残れるように準備をさせたいがための発言なのではないかと我は考えている」
「なるほどね、そう考えると納得できそうだけど、
転素に関してはどうなの?」
「うむ、なので我はこの惑星ではなく、創世主様は太陽なのではないかとも考えている」
「太陽?」
「そうだ。先ほどは惑星の視点で話をしたが、それを太陽に置き換えても同じような考えは出来るとは思わぬか?
太陽が自分の目と力が届く範囲の惑星を愛おしく思い、繁栄を願った。
なのでこの惑星がうまく回るように生態系を整え、太陽の恵みを与え続け、
そして転素を持った魔物が発生した際は、この惑星外から転素を集め我らを作った。
太陽もまた大爆発から生まれた存在でもある。大爆発以前に栄えていた人やその文化を記憶していてもおかしくは無い。
また、太陽ならば他の惑星も見渡すことが出来よう。そこで栄えている人や文化を複製する事も可能かもしれない」
「じゃあ私たちと同じような環境の惑星もあるって事?」
「いや、それは定かではない、あくまで我の仮定にすぎんさ」
「そっか、でも私はそのレドベージュの仮定は何となくだけど本当な気がするな」
「そうか。ふむ、こういう感情を照れるというのかもな」
「それ照れるところ?」
「さあな。だが評価される事は悪い物ではない」
「ふうん、そう言えば話を聞いていて思ったんだけどさ、惑星には転素が無いから神様も人もレドベージュ達も作れないという事だったけど、
落下した隕石には転素が入っていたのだから、それを使えば作れたんじゃない?」
「うむ、そうなのだ。だから創世主様はこの惑星説も捨てきれないのだ」
「なるほどね」
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