ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第二十六話【宴会後の落ち着いた部屋で】
- 2020.07.04
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「ああ、やっと静かになった」
宿屋にチェックインした後はというと、村中の人が酒場に集まり
山賊を倒した湖張にお礼をすべく、それはそれは派手な宴会が催された。
最初のうちは湖張に対して次から次へと村民がお礼をしに来ていたが、
途中からは、ただただ全員で騒ぐだけの宴会と化していた。
話を聞くと、どうやらこの村の住人は事あるごとにこの様な宴の席を設けるらしい。
要するに湖張も宴会のだしにされた部分があるようだ。
しかしながら、ここ最近は山賊の出没によって宴会どころではなかったようなので久々の開催だったようだ。
なので村人のフラストレーションが溜まった状態だったと容易に想像がつくので、
今日はそれが発散できたので良かったのだろうと思うと、まあ良いかという気持ちになってくる。
ただ、日暮れ前から5時間も騒ぎ通しの空間にずっといたため、流石に疲れてきてしまった。
なので旅の疲れがあるからと言って部屋に戻らせてもらった。
しかし村民はお構いなしに今もまだ騒ぎ続けている。とてもタフである。
部屋に戻るなり、ソファーに倒れこむ湖張。
山賊退治ではなく宴会疲れの方で参ってしまった。
「今日は大変だったな」
ぐったりした湖張を労う様にレドベージュが話しかけてくる。
その声に反応して顔を向けると、タオルを手渡そうとしている様子が目に入ってきた。
どうやらとりあえず風呂に行ってこいという合図なのであろう。
この宿にも大衆浴場があるようなので、サッと入ってきたら気持ちよさそうである。
「ありがとう、そうしようかな」
そう言うと体を起こしてタオルを受け取る湖張。
そして風呂に入っている間は部屋の空気を入れ替えようと思い窓を開けると、宿屋の外で立って飲んでいる村民たちに気づかれてしまう。
「湖張ちゃーん!」
陽気な酔っ払いたちが大きく手を振ると、苦笑いで小さく手を振る湖張。
どうやら半日ばかりで村の人気者になってしまったようだ。
「・・・いつまで飲んでいるのかな」
「どうだろうな。まあ今まで悩まされていた山賊の件が解決したので羽目を外したいのであろう。仕方がないさ」
「まあそうだよね。こういう雰囲気を守るのも仕事のうちの一つだよね」
「うむ、そういう事だ」
そうやり取りをすると、そのまま風呂には向かわず椅子に腰を掛ける湖張。
早速風呂に行こうと思ってはいたのだが、外の村人に見つかってしまったので
このタイミングで下に降りたら、また捕まりそうである。
なので少し間を開けてから部屋を出ようと考えた。
「そういえばさ、あの紋章の事が早速分かったね」
ただ座って待つだけでは退屈でもあるので、レドベージュに話しかける事にする。
今日の出来事に関しての考察もあるので丁度よい時間なのかもしれない。
「うむ、宗教団体のマークであったな。上手い具合に情報を引き出せていたな」
「そうかな?もうちょっと色々聞きたかったけど」
「いや、あれだけ聞き出せれば十分さ」
レドベージュがそれとなく褒めると、嬉しそうな顔を見せる湖張。
「そっか、そう言ってくれると嬉しいな。レドベージュが喋れないから
私が頑張んなきゃって思って必死だったんだよ」
「ふむ、変に気負わせてしまったか?」
心配そうな雰囲気をにじみ出すレドベージュ。
「いや、そんなんじゃないよ。これも必要な事だし気にしないで」
こういう細かいところに気を使ってもらい大切にしてくれているように感じるのだが、
それが返って申し訳ないとも思えるので、自分は大丈夫というアピールをどうしてもやってしまう。
そして何か気まずいので、話題を変えようとする湖張。
「そういえばさ、昨日の人もメーサ教の信者なのかな?」
その言葉を聞くと、レドベージュは軽く頷く。
「うむ、恐らくはそうであろう」
「やっぱりそうだよね。私もそう思う。
でも疑問なんだよね。今日の騎士たちは山賊退治という良い事をしようとしていたのに
何で昨日の人は食べ物を腐らせるという悪い事をしていたのかな?」
「何か裏があると考えた方が良いだろうな」
「そうだよね、正直なところ今日の騎士たちも私にとっては胡散臭かった。絶対何かあるよ。
そうだ、明日はあの騎士たちを追ってみる?何か手掛かりが得られるかも」
湖張がそう提案をすると、レドベージュは首を横に振る。
「いや、相手は馬で移動しているのでもう追えまい。
それより明日は違うところに行こうと考えている」
「違うところ?」
首をかしげて問いかける湖張。すると腰に手を当て、胸を張って答えるレドベージュ。
「うむ、明日は観光に行くぞ」
「・・・へ?」
突拍子もない事を提案するレドベージュに、言っていることが理解できないと言葉ではなく表情で表現してしまう湖張。
「む?嫌か?」
思わず眉毛をしかめてしまった湖張の表情に反応するレドベージュ。
「いや、嫌じゃないけど・・・観光とかしても良いの?」
「ああ、構わんさ。赤き聖者だからといって働き詰める必要はないぞ。
まあ、明日は遊びではなく仕事みたいなものだ」
「そうなの?」
「うむ、今日の事で思ったのだが、湖張には少し神の事を知ってもらった方が良いかもしれぬ」
レドベージュがそう言うと、少し引きつる湖張。
「う・・・それって私が勉強不足という事?」
「いや、そういうわけではない。ただ、赤き聖者である以上、ある程度の事は知っていても良いと思うのだ。
ちなみに知っていても良いという内容は神学の様な内容ではなく、
普通の人では知り得ない、本当に我らの様な天の者しか知り得ない内容だ」
「え?・・・そんな大切な事を良いの?」
「構わんさ。大体湖張は赤き聖者なのだ。天と関りがある者ではないか。遠慮することは無いさ」
今まで意識はしていなかったが、そう改めて言われると自分はもの凄い環境に身を置いているのだと気づいてしまい、少し固まってしまう。
「む?どうした?」
不思議に思ったレドベージュが問いかけると、首を強く横に振る湖張。
「ううん、大丈夫大丈夫。そっか、そうだよね。なんかレドベージュがいい意味でユルイから天との関りがあるという事を忘れていたよ」
「・・・まあ褒め言葉として捉えておこう」
「そうそう、そうして。
そういえばさ、神様と言えばメーサ神は創作だって言っていたけど、レドベージュ的には勝手に神様を作る事は許しがたいの?」
何となく湖張がそう聞くと、首をゆっくりと二度ほど横に振るレドベージュ。
「いや、そんなことは無いぞ。
人が集まれば信仰は生まれる。出会った時も言ったが信仰は自由だ。
神を創作しようが何をしようがコレと言って特に何もないさ。
ただ、それを悪用するとなると目をつぶるわけにはいかんな」
「すると、メーサ教は許せない?」
「いや、まだ結論は早い。昨日の男が悪いだけかもしれぬ。今はまだ結論を出さずに調査を進めるべきだ」
「そっか、そうだよね」
そう言うとレドベージュは南の方角を指さす。
「明日は早めに南を目指すぞ。日の出と共に出発すれば昼前には目的地に着くはずだ。
現地には2時間ほど滞在すれば見せたいものは全て見せられる。
その後はこの村に帰ってきてもう一泊しよう」
「わかった。じゃあ風呂に行くついでに宿屋のおじさんに言って明日の分の予約もしちゃうね。
そうしたら荷物を置いていけるから大分身軽で目的地に行けるもんね。
そうだ、あと食堂でパンも買っておくね。朝は早いし、昼に食べる分も今のうちに用意しておかないと」
「うむ、それが良かろう」
そうやり取りをすると、立ち上がる湖張。
「よし、じゃあ早速各種手続きに行ってきて、そのついでにお風呂に行ってきます」
「うむ、ゆっくり疲れを癒してくると良い」
レドベージュがそう返すと、微笑んでから部屋を出る湖張。
扉が閉まる様子を確認すると、レドベージュは剣を取り出してメンテナンスをし始めるのであった。
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