ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第十八話【調査失敗】
- 2020.06.12
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「何だお前たちは!?」
家に入ってきたのは紺色のローブを纏った50代ほどの男であった。
白髪のくせ毛が特徴的で、目つきは決して良くは無い。
ただ、その目つきは目の前に侵入者がいるので当たり前といえば当たり前である。
「ここで何をしている!?」
男が怒鳴って威嚇をするように質問をしてくるが、湖張は臆せず腕を組んで堂々とした姿勢で答える。
「アナタこそここで何をしていたの?
あの桶に入っているものは汚い魔力の淀みを発生させている毒みたいな物でしょう?それを町にばら撒いて食べ物を腐らせていたでしょう?」
自分たちが調べた事を堂々と伝え、威嚇し返す湖張。すると男は驚きのせいなのか一瞬目を大きく見開くが、すぐさま元の表情に戻る。
「・・・一体何の事だ?」
落ち着いた口調で答えが返ってくる。どうやら認めないらしい。
「とぼけたって無駄よ!」
先ほどの目の動きから間違いは無いと感じ取った湖張は勢いを弱めずに問い詰める。
すると男はジッとこちらを睨みつけながら、一呼吸置いた後に口を開く。
「確かにそれは毒だ。決して良くないものであろう。
だがお前の言うことは理解できんな」
「・・・どういう事?」
毒であることは認めたものの自分の言ったことを理解できないという意味がいまいち分からなかった湖張。
確認の意味を込めて聞き返すと、男は腕を組んで答える。
「それは魔物除けの毒だ。
というのも、この町には駐在の兵士がほとんどいないからな。魔物が多く近づいてくると危険なのだ。
なので微量の毒を撒いて魔物が近づかないようにしているのだ。
そうすることによって少ない兵士でも危険を回避して生活をする事が出来る」
「え?」
男の話を聞いて戸惑う湖張。
食べ物を腐らせる淀みの原因と思っていたものは、実は魔物除けの毒と言われると
自分たちは勘違いをしているのではないかと心配になる。
その動揺からレドベージュに視線を移すと、首を振る合図だけが返ってくる。
「大体なんだ、食べ物を腐らす毒みたいな物とは?
仮にその話が本当であるのならば、ここから毒を撒いているのだ、
周囲の森の草木にも影響が出るのではないのか?だが全くもって異常は無いぞ?」
戸惑っている湖張に追い打ちを欠けるかのように男が論破を試みてくる。
「そんなもの、周りの草木は大地に根を張り生きた状態だからではないか」
このままだと湖張が言い負けると感じ突然喋り出すレドベージュ。
レッド君を止めた事に湖張は少々驚くが、同時に心強い援護だと安堵もする。
一方男の方は突然鎧が喋り始めたので、表情から溢れ出る動揺を隠せないでいた。
「な・・・なんなんだお前は?!」
一歩だけ後ずさりした後に男がそう言うが、レドベージュは構わず話を続ける。
「基本的に食べ物が腐る時は、その物自体の生命活動が無くなった時だ。
逆を言えば例え毒を浴びようとも、それが微弱な物であれば、地に根を張って生きている限り腐りはせんよ。
また、物によって効く効かないもある。ここへ来る途中、地に植わっているにもかかわらずダメになっている花もあったが、
あれは恐らくこの魔力の淀み・・・毒か?その耐性がなかったのだろう。
一方この付近の草木は耐性があるのかもしれんな。
それにこの淀みだが、魔物を追い払う効果は無いぞ。
現にこの町の付近には魔物がウロチョロしていたからな。
大体魔物といっても千差万別、全ての魔物に効く便利な魔物除けなど存在はしないさ。
虫除けですら虫の種類別に用意されるのだ。より複雑な構造の魔物ならなおさらであろう?」
理論には理論で戦うレドベージュ。とりあえず自分は黙っておこうと心の中で決める湖張。
一方ローブの男は歯を食いしばっているかのような表情を見せている。どうやら困っているようだ。
「何かとうるさい奴だ!お前たちは物を腐らせる淀みだとかなんとか言っているが
それはしっかりと分析をした結果があるのか?無いだろう?単なる言いがかりだ!!
どうせ貴様ら、空き巣か何かなのだろう!?それで苦し紛れにそんな事言っているのであろう!」
「いや、そこで開き直って怒られても困るんだけど?」
逆上した男に対して湖張が腰に手を当てて呆れたように答えるが、話を全く聞く様子は無い。
「うるさい!だったら分析結果をしっかり出せ!
食べ物を腐らせると言ったが、何がどう作用して事象が起きたのか証明できるのか?
それが出来ないのだったらさっさとここから出ていけ!!
あいにく私は忙しいのだ。今、素直に出ていくのであれば役人に突き出す事は止めてやる。
ゴタゴタに巻き込まれたくは無いからな!
だが、出ていかないのであれば役人に訴えてやる!」
悪事をしているのに役人に突き出すという姿勢を見て、何を言っているのか理解に苦しんだが、
よく考えてみると、役人が出てくるのは実は少しまずいかもしれない。
というのも、男の言う通り分析結果はなく、それこそレドベージュの感覚だけでここまで来たのである。
分析の証拠がない限り、不法侵入をした挙句に妙な言いがかりをしていると捉えられても不思議ではない状況でもある。
意外と不利なのかもしれない。
その事はレドベージュも考えたようで、直ぐには反撃には出ずに湖張に視線を向ける。
「ふむ、確かに役人を呼ばれたら不利なのかもしれないな。
よし、ここは一度引くぞ?」
案外とあっさり引き上げる事を決めるレドベージュ。
湖張的には先ほどのように舌戦を期待していたのだが、そうもいかないらしい。
「ふん、さっさと出ていけ!」
その言葉を聞いて少し安堵をしたのか、ローブ姿の男は扉を開けて二人に出ていく事を促す。
そして二人が家から出ると、扉を強く占める音が鳴り響いた。
「なんだかなぁ」
家から離れながら湖張がぼやくと、レドベージュはなだめるように反応する。
「まあ根源は分かったのだ。あとはじっくりと外堀を埋めていけばいいさ」
落ち着いた様子のレドベージュを横目で見つめる湖張。
「あのさ、あの人が言った事って本当なのかな?」
「魔物除けの話か?」
「そう、レドベージュはあり得ないって言ったけど、あの人は本当に魔物除けだと思っていて
食べ物を腐らせる効果には気付いていないって事は無いかな?」
その意見を聞くとゆっくりと顔を湖張に向けるレドベージュ。そして少し考えた後に返答をする
「ふむ、それは良い発想だ。確かにその線は否定しきれんな。・・・だとしたら余計に厄介だぞこれは」
彼女の意見は盲点だったらしく、レドベージュはそこに気づけた湖張に少し関心をした様子である。
「だよね、あの時つべこべ言わずにとっちめちゃおうかとも思ったけど、その可能性も捨てきれなかったから辞めたんだよね。
でも話が難しくなるくらいだったら、さっさとあの淀みの根源だけでも処分しちゃえば良かったかもね」
苦笑いで湖張がそう言うと、レドベージュもうなずく。
「そうだな、根源さえ絶てば被害は無くなるわけだしな。今後は判断の速度も重視した方が良いのかもしれんな」
「そうだね」
歩きながらやり取りをしている二人。そうこうしている間に家はどんどんと離れていく。
とりあえず今日のところはここまでかと感じ始めたので、これからのプランをレドベージュに聞こうと思い
湖張は話しかけようとする。
とその時、二人の背後にあった家が轟音を上げて爆発をし、大きな火柱に包まれた。

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