ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第二十話【宿屋での反省】
- 2020.06.18
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
火災現場から離れた後は、人に出くわさないよう細心の注意を払いながら森を抜けた二人。
幸い大きな木に囲まれて火の手が見えなかったせいか、火災があった事は誰も気づかなかった様子で人に会うことは無かった。
町に着くなり、先ほどの男がいないか探したりもしたが、案の定見つかることは無かった。
また数人の町人に男を見かけなかったかを尋ねたが、誰も見ていないという。
そしてそれと同時に男がどんな人間だったのか町人に尋ねるのだが、大した情報は得られなかった。
というのもこの町にやってきたのがつい最近で、誰とも交流をしていなかったとの事である。
どうやら生まれも育ちもこの町ではなかったようだ。
そうこうしている間に日が暮れ始める。
男の探索をここで諦めてはいけない気もするが、内心はもう無理だとも感じ始めているのも事実。
そう考えると、なんだかどっと疲れを感じ始める。
「もうこれで良かろう。あの男は町の外へ逃げたと考えるのが自然だ。宿に戻るとするか」
湖張の様子を察してくれたのか、周囲に誰も居ないことを確認したレッド君が小声で話しかけると、
少し考えた後に頷く湖張。そして一言「そうだね」と言って宿屋に向かうことにする。
宿泊する部屋に入るなり、レドベージュは湖張にタオルを渡す。
そして疲れた体を癒すために入浴をしてくるよう促した後、突然床に大の字になって寝ころんだ。
その様子がとても不思議に思えたので、何をしているのか尋ねると「不貞寝だ」と一言だけ返ってくる。
どうやらレドベージュも悔しかったらしい。
そんな人間臭いリビングアーマーの行動に小さく笑ってから宿内にある大衆浴場へ向かう湖張。
そこで今日一日の汗を流すことにした。
湖張が風呂から上がると、今度は食事に行こうと提案をするレドベージュ。
何が食べたいのか聞かれたので、昼と同じ宿屋の食堂を所望する。
昼の時点で夕食も宿屋の食堂と決めていたのもあるが、今日一日歩き通しだったので
なるべく近くで済ませたいという気持ちもあった。
食堂に入ると昼とは雰囲気が変わり、お酒が入った客で賑わう酒場になっていた。
店の奥には小さなステージがあり、華やかな歌と踊りがその場を明るくしている。
昼間に楽器の練習していた吟遊詩人もステージのそばに座っており、自分の出番を待っている様子だ。
昼間に座ったカウンターは、一人で飲んでいる客に占領されていた。
どうやら出遅れたようだ。ただ、カウンター席はお酒を飲む人が座る場所の様子だったので
ある意味座れなくて正解だったのかもしれない。
湖張は食事をするだけだったので、端っこの席に静かに座って食堂から酒場に変わったその場所を静かに見つめていた。
と、その時である。昼に腐った野菜をくれた店員がメニューを持って近寄ってくる。
そして「何かわかったかい?」と注文を聞くついでに質問をしてくるが、
詳細を話すにはレドベージュの事も話さないと淀みを辿れた理由が説明できないので
あえて何も分からないと伝える。淀みの元は燃えてしまったので野菜が腐りやすくなることはもう無いので、
答えは出せなくとも結果が良くなれば問題ないと考えた。
食事が終わると、まっすぐ部屋に戻る二人。
部屋に入るなり、レドベージュは再び大の字で不貞寝のポーズをとる。
人とは違い入浴や食事といったリフレッシュをする方法が無いので、気を紛らわすのに苦労しているのかもしれない。
ならば会話をして少しでも気が紛れれば良いなと思える。
すると湖張は椅子を逆向きに座り、背もたれを抱え込むようにして視線だけレドベージュに向ける。

「それにしてもしてやられちゃったね。
まさかあのタイミングで逃げられて、証拠も消されちゃうなんて」
つまらなさそうにため息混じりでぼやく湖張。現在の心境は正直なところ一本してやられたので悔しい。
「・・・うむ、そうだな。それっぽい嘘をつき我らを一度引かせ、その間に仕込んでいた魔道具を発動させ逃亡する。中々の手際だな」
天井を見つめながらレドベージュが少し遅れたタイミングで反応する。
「まったくだよ。だいたいそんな嘘、よく咄嗟に思いつくね・・・褒められないけど関心しちゃうよ」
「よほど頭の回転が速いか、こうなる事を想定して予め嘘の準備をしていたかだな。
まあ恐らくは想定していたと考える方が合点がいくな。
何故なら火の手が上がるように魔道具を仕込んでいたではないか。
あの準備はそう簡単には出来ない。誰かに知られた場合、速やかに証拠隠滅が出来るように準備をしていたのであろう」
その話を聞くと体をまっすぐ起こし、眉をひそめる湖張。
「その見立てが本当だったとすると、相当手が込んだ犯行だったんだね。
しかもここまで大掛かりな仕掛けをするには一人じゃ難しそうだから組織的な犯行なのかもしれないよ」
湖張が姿勢を正した様子を横目で見ると、レドベージュも起き上がり同じように姿勢を正す。
雰囲気的に自分一人だけ寝ころんでいるのは気まずかったのかもしれない。
「そうだな、それにあの建物や器材を集めるだけでも個人では難しかろう。
もし集められたとしても、簡単に破棄ができる思い切りの良さは相当の金持ちでもない限り難しいだろうな。
それこそ個人の物ではなく組織の物で、尚且つ組織の秘密の為にという理由ならば、ここまで出来るのかもしれないな」
確かにレドベージュの意見はもっともだと思える。
もし、自分があの男の立場で建物も器材も全て自分の物だとすると、全部を燃やして逃げ出すという事は中々出来ない。
証拠隠滅をするにしても疑ってきた相手を一度追い返す事が出来ているので、全てを燃やさなくても必要な物だけを隠せば良い。
一方それらが全てが他の者の所有物で秘密厳守の決まりが第一とされており、もしもの時は全て燃やす手順を指示されているのであれば、
あの場で燃やし尽くし自分は逃走する方法を取ってもおかしくは無い。そう考えると、やはりこれは組織的な犯行で間違いないと考えられる。
「そうなるとどんな人たちが犯人かだよね。
・・・個人的にはあの太陽のマークが気になるかな」
組織的な犯行と考えると、至る所にあったマークが気になってくる。
その位しかめぼしい物が見つからなかったのだが、それ故にどうしても頭の中にひっかかるものがある。
「なるほど、その組織はあのマークが関係していると考えているのだな?」
「うん、何故か気になるんだよね。例えば団体のロゴ的なものじゃないかな?」
湖張の意見を聞くと、小さく頷くレドベージュ。天将的にもその意見は的外れではない様子だ。
「分かった、ではこれから旅を続けるにあたり、あのマークについても調べながら先へ進むか」
レドベージュがそう提案すると、次の目標が出来たせいか少し元気になった気がする湖張。
「分かった、そうしよう。もうあのマークは忘れないでね」
「無論だ。今回は何となく見たではなく、しっかりと頭に焼き付けたからな」
小さく微笑んだ後に湖張が要望を出すと、心なしか元気になった口調でレドベージュが返事をする。
何となくスッキリしない事件ではあったが、この雰囲気ならば明日には引っ張らずに済みそうである。
また明日から頑張ろう。そう思えるだけでも良いと考えると、大分気持ちが和らいだ。
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