ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八十二話【対守護者】
- 2021.03.27
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「体調は万全?」
「はい!」
「準備は大丈夫?」
「はい!」
「それじゃあ行こうか」
「はい!」
修練場の入り口で確認をとりあう湖張とラナナ。
この場に滞在して一ケ月近くが経過した今日、二人は守護者を倒すべく出発をしようとしていた。
湖張もラナナも創意工夫をして、何とか目標としていた技を実践で使えるように仕上げることが出来たのである。
そこで本日、再度守護者と戦ってみようという事になった。
「二人とも、頑張るのだぞ」
湖張とラナナの健闘を祈るように見送るレドベージュ。
「うん、今日は良い報告が出来るようにするよ。
旅の途中なのに大分時間を取ってもらったからね。そろそろ終わらせないと。
そうだ、もし勝てたら晩御飯は豪華にしてね」
「あ、私はデザートにケーキが欲しいです」
レドベージュだけではなくウンバボにも言葉を届ける二人。
「分かった。ウンバボ料理頑張る」
快く了承するウンバボを見ると、柔らかな笑顔を二人は見せる。
その様子は、少し余裕があるように受け取れるものであった。
そうやり取りをすると、ゆっくりと移動を始める二人。
安全地帯を出たところで、そのまま歩きながら打ち合わせを始める。
「修練鳥ですが、どうしますか?一人で倒します?」
「いや、二人で倒そう。あれが一番効率が良いよ。
一人で倒すのは昨日やったじゃない?
お互い新技で一発だったから、もう一人で倒す課題はクリアしたという事で良いんじゃないかな?」
昨日の昼過ぎ、守護者に挑む前にお互いの修練の成果を確かめるために
一人ずつ修練鳥に挑む事を行っていた二人。
ウンバボに一人でも倒せるかという問いを投げかけられていた事もあっての挑戦であった。
その結果、二人の仕上げた技により呆気なく修練鳥は撃ち落とされていった。
「そうですね。修練鳥って効く魔法や物理攻撃がバラバラなのですが、
何の問題もなく倒す事が出来ましたね」
「うん、ラナナはそうなる事を予想していたよね?」
「はい、エマシデンシは魔法でもありますし、衝撃波でもありますから様々な要素が合わさっていますので。
まあ湖張姉さまの技も同じような感じなのでしょうね。それか圧倒的な攻撃力の前には全てが無意味なだけだったのかもしれませんが」
「圧倒的な攻撃力ねえ。ラナナの魔法も凄い事になっていたよね」
「はい、使いどころは考えないといけません」
「そう、そこなんだよね。私もさ、それはずっと考えているところ。
絶妙な手加減は訓練していかないとなって思っているよ」
「そうですね。まあそこは旅をしながらでしょうか?」
「うん、少し長居しちゃったからね」
「まあウンバボさんのご飯は美味しかったから良かったですけど」
「あと温泉も良かった」
「このままここに住んじゃいます?」
「馬鹿言わないの」
「あはは」
楽しそうに会話をする二人。
毎日寝泊まりする部屋は同じではあるし、修練以外の時間は一緒にいるのではあるが
この様な雰囲気で話すのは久々な気がする。
それだけ今までは修練の事ばかりを考えていたのかもしれない。
そんな中、ゆっくりと奥の方から修練鳥が飛んでくる。
「さて、軽くウォーミングアップと行きますか」
「そうですね」
そう言うなり、合図も無しに同時に魔法を二人が放つと、流れるように修練鳥は撃ち落とされていく。
まるで戦いの動きが一部始終決められているかのようにスムーズなものであった。
この様な感じであっという間に守護者の居る闘技場の前まで辿り着く二人。
息も上がっておらず、余裕を大分残しながらの到着であった。
「よし着いた。ここからが本番だね。さて、どうやって攻めようかな」
大きな扉の前で腰に手を当てる湖張。直ぐには突入をせずに考える時間を設ける。
すると隣でラナナが小さく手を上げて話しかけてくる。
「そうしたら私に考えがあるのですがよろしいですか?」
「うん?どんなの?」
「この前は扉を開けて私たちが入ってから魔法を仕掛けない限り相手は襲ってこなかったじゃないですか?
なので先手は私たちのタイミングで取れると思うのですよね。
そこで開幕にエマシデンシを放とうと思います。
相手は5人ですので初手に広範囲の魔法は間違いではないと思います。
ただご存じの通りエマシデンシは広範囲に影響を及ぼし過ぎます。
なので闘技場全体に衝撃波を与えると考えられますので、使いどころが難しいです」
そう言うとラナナは湖張の手を引いて扉から10m程離れた位置まで移動をする。
「そこでこうしましょう。
まず湖張姉さまは扉を開けてください。
するとゆっくりと開くと思いますので、その間に扉の横にずれて壁を盾にしてください。
次に私はこの位置からエマシデンシを放ち闘技場全体を攻撃します。
その結果、どのくらい守護者にダメージを与えられるかは分かりませんが、きっと無事ではないはずです。
後は・・・状況によりでしょうか?」
ラナナの提案を聞くと腕を組む湖張。
「うん、まあ確かにどのくらい魔法が効くかはやってみないと分からないもんね。
それでいっか。じゃあ早速いってみよう。早くしないとまた修練鳥が飛んできそうだし」
「そうですね。そうしましょう」
そう簡単に打ち合わせると、扉に小走りで近づく湖張。
「用意は良い?」
振り返りラナナに確認を取ると、手を上げて大きく振り合図を返すラナナ。
「よーし、じゃあ行きますか!」
そう言うなり扉に手を添えると、前回と同様に自動で扉がゆっくりと開き始める。
そしてスッと横にずれて壁から少し離れた位置で次に備える湖張。
一方ラナナは魔法を放つ準備に入る。
「頑張れ、ラナナ」
ラナナを見つめながら小声で応援する湖張。
その声は届いてはいないのだが、視線だけでも応援する気持ちは伝わればと思い、ジッと見つめる。
「エマシデンシ!」
扉はまだ開ききってはいないのだが、隙間から守護者達の姿が見えたので魔法を放つラナナ。
彼女の手から拳大の白い球体が人の走る速度と同じくらいの速さで守護者に向かっていく。
すると予想通り、魔法が近づいては行くが守護者達は動く事は無かった。どうやら初手を受けてくれそうである。
音もなくスッと移動するエマシデンシ。守護者が反応しないでほしいと願いながらだったので、
たったの数秒間であったが妙に長く感じる。
そして守護者たちの目の前まで魔法が到達すると、ラナナは拳を握りしめて魔法の最後を発動させる。
「バースト!」
彼女の声が届くと同時に強い光が発生し修練場の色が無くなる。
たった一つと思われる入り口から強い風圧が噴き出し、ラナナの髪と服を強くなびかせるが
彼女は強いまなざしを修練場からそらさず、ジッとその場から動かない。
「やっぱりすごいな、コレ」
次第に収まる風の流れを感じながら、そう呟く湖張。
そして魔法の衝撃が収まったと思うと、ゆっくりと闘技場を覗き込む。
するとそこには、四方の壁際まで吹き飛ばされて力なく倒れている守護者たちの姿があった。
「どうやら効果があったようですね」
後ろから小走りで追いついてきたラナナが湖張の後ろから話しかけてくる。
「うん、でもまだ終わりじゃないみたい」
闘技場の奥の方を指さす湖張。その先には鎧を着た守護者がゆっくりと立ち上がろうとしている姿があった。
「あの鎧、とても硬いようだね」
「衝撃を防ぎ切ったのでしょうか?鎧の内部にも衝撃は伝わると思うのですが、それでも立ち上がるのですね」
「まあ守護者も伊達じゃないってところだね」
「どうします?ここから湖張姉さまの技を放ちますか?」
ラナナの提案に首を横に振る湖張。
「ううん、まあ確かにここから覇王爆炎弾でとどめを刺す方が賢いのだろうけど、
遠距離攻撃だけで倒すのも何かあれだし、少し手合わせしてからにしてみるよ」
そう言うなり、ゆっくりと闘技場に入る湖張。その姿に気が付いたのか、鎧の守護者はよろめきながらも立ち上がり、両手を前に出して魔法を放つ準備に入る。
走り出す湖張。十数発の魔法の光弾を放つ守護者。傷ついているとは思えない程の激しい攻撃ではあったが、
湖張は光弾の合間を縫うように避け、あっという間に守護者の目の前まで到達する。
そして正面に真っすぐ突き出すように蹴り技を仕掛けると、守護者の腹部に決まり後ろの壁に叩きつける。
更に追い打ちの動作に入る湖張。小さく飛び上がり飛び蹴りを仕掛けるが、守護者は横方向に転がり難を逃れる。
一方飛び蹴りを外した湖張は、そのまま壁を蹴り三角飛びをする要領で高く飛び上がる。
体をひねり宙返りをしながら着地をすると、隙を見つけた守護者が高速で迫って右手で殴りかかってくる。
それを左手で守護者の攻撃を払い、右手を光せ魔法で拳をコーティングしながら守護者の左わき腹に強力な打撃を与える湖張。
すると、守護者は軽く飛ばされ、壁際に倒れこむ。
「動きがウンバボに似ているね。まああの人が準備したのだから当然か」
そう言いながら素早く後方に下がり距離を開けた後、両手を前方に突き出し、すぐさま両手を胸元まで引き戻し交差させ
流れるような動作で腰のあたりまで両手を引く。
そして目の前の守護者を強く見つめ、一気に両手を前方に突き出す。
「覇王爆炎弾!」
彼女の声が響くと同時に、解き放たれる赤い煙を纏った巨大な白い球体。
そして技が守護者を飲み込むと激しい爆炎が発生し、光と爆音が周囲を包み込む。
瞬間的な揺れを感じたのと同時に、勢いよく煙が飛び込んでくる。
技を直撃した守護者の姿は様々な現象により見る事が出来なかったが、決して無事ではない事は感覚的に分かる。
中々静まらない煙。焦げたような臭いも周囲に感じ始めてきた。
いっそのこと、魔法で風を発生させ煙を巻き散らそうかとも思えてくる。
「もう完璧じゃないですか!」
小走りで近づいて来たラナナが後ろから話しかけてくる。
だがまだ守護者の状態を確認し終えていないので視線は移さずに、そのままの姿勢で答える湖張。
「うーん、とは言っても動きながら技の準備をしていただけだから、実際のところはそうでもないよ。
いや、でも大分ましにはなってはいるかな?」
「そうなんですか?あれ?」
会話中に突如として闘技場の天井方向がより明るく光り出し、真昼の様な光が周囲を照らし出す。
その変化に疑問を持ち、周りを見渡す二人。
すると後方から気配を感じる。
「守護者を倒したようだな。見事であったぞ」
気配の主はレドベージュとウンバボで、近づきながら話しかけてくる。
「あ、やっぱり倒せていたんだ?」
声の方向に振り返り、確認を取る湖張。するとウンバボは天井を指さして答える。
「守護者を倒すと、闘技場は強く光る。今がその時。お前たちよくやった」
「あ、この光はそういうことか」
天井を見上げながら湖張がそう言うと、ラナナは少し心配そうな表情でウンバボに問いかける。
「とは言ったものの、私が奇襲のような形でほとんど倒してしまい
正々堂々と戦った結果とは言えないとは思うのですが良いのですか?」
すると首を縦に振るウンバボ。
「問題ない。そもそも守護者を一撃で崩せる魔法を扱える時点で相当の実力。
胸を張って良い」
「じゃあ合格という事で良いのかな?」
「そうだ。合格だ」
ウンバボからその言葉が出ると、ハイタッチをする湖張とラナナ。
「やったね!」
「はい!」
嬉しそうな表情を見せる二人。前回は苦戦を強いられた相手に圧勝できたのでその嬉しさはより強いものであった。
「一ケ月程だったが、良い成果を得られたようだな。二人ともよく頑張った」
レドベージュは二人に近づいてそう伝えると、湖張は苦笑いを見せる。
「とは言っても、待つだけだったレドベージュは退屈だったんじゃない?」
「そんな事ないさ。それより二人にとって充実した時間であったのならば問題ない」
「まあそう言ってもらえると助かるけどさ」
湖張がそう言うと、続いてラナナが質問をする。
「ところで明日からは旅を再開する予定です?」
「うむ、そうだな。何かあるのか?」
「あ、いえ。まだ滞在する予定なのでしたら、ついでに硬い魔物について研究しようかとも思ったのですが、
それは良いです。旅をしながらで大丈夫ですし、強力な技も手に入れましたから問題ないです」
「ふむ、そうか。まあそうだな。明日はとりあえず近くの観光をした町に戻るとしよう。
そこで情報を集めるぞ。一ケ月が経過したのだ。メーサ教に動きがあったかもしれん」
メーサ教という言葉を久々に聞くと、修練の事で頭がいっぱいだったせいか懐かしさを感じてくる。
それと同時に、良からぬ事になっていないか心配な気持ちが沸き上がって来た。
「あー何かとんでもない事になってなければ良いのだけれど」
「そうですね。また魔物騒ぎなんて起こしていなければ良いのですが」
「はあ」
少し間を空けた後にため息を同時につく湖張とラナナ。
それを見てレドベージュは二人に話しかける。
「まあそこまで心配する事はあるまい。今は修練を無事終えた事を祝う方が良い」
「確かにそうかな。じゃあ今日は豪華な晩御飯を期待して良いのかな?」
「私はケーキ!」
嬉しそうな顔でウンバボに視線を向ける二人。
するとウンバボは大きく首を縦に振る。
「分かった。今日は約束通りウンバボ料理頑張る。期待して待ってる」
「お願いね。今日くらいは限界まで食べちゃおうかな」
明るい笑顔でそう話す湖張。
それは修練に一区切りが付けられたことによって、心が軽くなった事で自然と出た表情であった。
<NEXT→>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八十三話【陽気な旅人再び】
<←PREV>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八十一話【気分転換の重要性】
-
前の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八十一話【気分転換の重要性】 2021.03.17
-
次の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八十三話【陽気な旅人再び】 2021.03.28