ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第五十二話【グレルフとの闘い】
- 2020.10.25
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
湖張が走り距離を縮めると、3匹のグレルフが立ち向かうかのように湖張に向かって走り出す。
そしてその後ろ姿を険しい表情で見つめるラナナ。
というのも、自分の立ち位置からだと湖張に自分の放つ魔法が当たってしまう危険性があると考えたからだ。
右手をかざして左手で右手を掴んで支えながら魔法を撃つ姿勢を取ったまま固まるラナナ。
ものの数秒間なのだが、焦りのせいで長い時間の間、自分は何もできていないのではないかという気持ちになってしまう。
一方湖張は、視線をグレルフに向けているものの、意識は後方に向けていた。
やっぱりこの位置取りだと、私が邪魔でラナナは魔法を撃てないよね。
そしてレドベージュはやっぱり追い付いてきてないな。様子見かな?
・・・違う、ラナナを孤立させないためかも。それだったら!
湖張はそう考えると自らの足元に緑色の光の粒を展開させる。
「多分これで飛べるはず!」
そう口から発するなり3m程の高さまで飛び上がる湖張。
先日ラナナがかけてくれた飛び上がりの魔法を見よう見まねで使用した形である。
上空から位置取りを確認すると、最初に向かってきた3匹のグレルフ以外も、集団でこちらに向かってきていることが確認出来る。
また、レドベージュもこのタイミングで抜剣し向かってきていることに気が付いた。
沢山グレルフが攻めてきたからレドベージュも応援に来たのかな。
・・・よし、とりあえず一番近くの一匹を倒そう。
そう決めるなり魔法で風を起こし、近くのグレルフに向けて急降下をする湖張。
そしてそのまま上空から飛び蹴りの姿勢を取る。
しかしその時だった。目標まで1m程のところで後方から黄色い光の弾が飛んできて標的に命中し弾き飛ばされてしまった。
「え!?」
目標のグレルフが目の前からいなくなったので、予想外の展開で少し驚きながらも急遽そのまま着地する湖張。
すると、他に近づいてきていた二匹のグレルフが飛び込んでくる。
「湖張!」
走りながらレドベージュが大きな声で危険を伝えてくるが、湖張は冷静な雰囲気で迎撃の体制を取る。
「平気!」
そう言うなり拳を強く握りしめる湖張。
しかし次の瞬間、二発の光の弾が再び後方から飛んできてグレルフを弾き飛ばした。
一瞬だけ呆気に取られたが、すぐさま後ろを振り返るとラナナが魔法を放った姿勢が目に入る。
(あの子、一瞬の判断で即座に、そして正確に相手を打ち抜くことが出来るんだ)
そう心の中で分析をすると、小さい笑顔を見せる湖張。
「これは負けてられないね」
そう呟くなり、更に前へ走り出しグレルフの群に突っ込む湖張。
「むう!無茶をしおる!!」
その様子に焦ったレドベージュは魔法で浮遊し、湖張の下まで急行しようとする。
しかしその時であった。湖張は突っ込んだ位置から急に後方に走り出し、元の位置まで戻ろうとする。
「むう!?」
予想外の展開に戸惑うレドベージュ。
そうこうしている間にすぐそばまでグレルフの大軍を引き連れた湖張が全速力で戻ってくる。
浮遊を止め、その場に着地をするレドベージュ。すると目の前に湖張が到着する。
「よし、ここまでグレルフを引き付けたから、ここで頑張ろう!」
「・・・本当に無茶をしおる」
ため息交じりに呆れながら構えるレドベージュ。
「私は右、レドベージュは左をお願いして良い?」
「良かろう」
そうやり取りをすると、左右に分かれる二人。
そしてグレルフが群がるように襲い掛かってくると、二人は片っ端から吹き飛ばしていく。
(やっぱりレドベージュは凄いな。動きに無駄がない)
次から次へと襲い掛かってくるグレルフを蹴っては飛ばし殴っては飛ばす事を片手間に、
レドベージュの戦いぶりを観察する湖張。
一見したら動きずらそうなずんぐりむっくりの容姿からは想像が出来ない身のこなしで
次々とグレルフに斬撃を加えていっている。
一つの動作の後、次に取る動作がまるでシナリオで決まっているかのように、
動作の繋ぎがスムーズであるように見える。
(それにラナナもやっぱり凄いな)
そう思いながらラナナにも目を移す湖張。
というのも、狙いやすい位置に相手を誘導すると、ほぼ確実に打ち込んでくるのだ。
しかも自分の周りだけではなく、レドベージュの周りに対しても隙を見つけると即座に当ててくる。
話を聞く限り座学ばかりをしていたようではあったが、この戦いぶりを見ると本当にそうであったのかが疑わしいレベルである。
と、その時であった。ラナナの位置から右に3m程離れた位置にある繁みから、3匹のグレルフが飛び出してくる。
先ほどラナナが言っていた数匹ずつ別れて行動をしているグレルフのようだ。
最初はいないと思っていたのだが、実はいたらしい。
「レドベージュ、ここをお願い!」
そう言ってラナナの方に急いで戻る湖張。
そして走りながら掌を前方に突き出し、先頭を走るグレルフに狙いを定める。
「覇王拳!」
湖張の声が響き渡ると、掌から白い光の塊が発せられ先頭を走るグレルフの横顔に命中し、そのまま弾き飛ばす。
それはラナナから1m程離れた場所での事であった。
そしてそのタイミングでラナナは右側面に緑色の光の壁を魔法で出現させ、一瞬だけ強い光を発生させる。
するとその光に驚いたのか、残りのグレルフは急停止してたじろぐ。
と、その間に戻ってきた湖張の飛び蹴りが、一匹のグレルフに命中し吹き飛ばす。
「動かないで!」
大きな声でラナナがそう言うと、静止する湖張。
するとラナナは光の防護壁を消滅させ、左手で光の弾を発生させ残りのグレルフを弾き飛ばす。
「ひょっとして助けは要らなかった?」
湖張は吹き飛ぶグレルフを見た後にポカンとした表情でラナナに尋ねると、
慌てて両手を振って否定する仕草が返ってくる。
「いえ、そんな事はありません!ありがとうございます!」
気を使ったのか、それとも本当に助かったのかは判断がつかなかったが、
とりあえずラナナは自衛もできそうである。
そう感じながらレドベージュの方に視線を移すと、
残りのグレルフの群が左右から一斉に襲い掛かっている様子が視界に入る。
「私は右!ラナナは左!」
「はい!」
大声でそう合図すると二人は魔法を放つ姿勢をとる。
「サンダーボルト!」
「バスターピラー!」
湖張の両手から太さが2m程の雷撃が放たれ、レドベージュの右から攻めてくるグレルフの群を貫くと、
力なく倒れこむ標的たち。
一方でラナナの両手から発せられた魔法は、直径が2m程の円筒状の光であり、
まるで光の柱を手から飛ばしているようなものであった。
そして彼女の魔法に触れた魔物たちは、まるで固く大きな物体にぶつかったかのように弾き飛ばされていった。
「・・・目一杯暴れおって」
左右からのグレルフが一気に一掃されて呆れ気味のレドベージュは
目の前に残った数匹のグレルフに視線を移す。
「とりあえず最後に大技を見せておくか。今後の参考になるであろう」
そうぼやくと剣を振り上げるレドベージュ。
「天将断罪撃」
剣を前方に振り下ろして地面に当てると、目の前に大爆発を発生させるレドベージュ。
すると当然の様に残りのグレルフ達は爆発に巻き込まれて吹き飛んでいくのであった。
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