ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百五十二話【船の上で】
- 2025.11.15
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
眩しい日差し、独特の匂いを運ぶ潮風、そして見渡す限り広がる海。
湖張は静かな甲板に設置されている横長の椅子に腰を掛けて、飽きることなく海を見つめている。
三人はタウンの家を発った後、ゼンの言う通り南下し、そして船に乗った。
今はその航海の途中である。
ゼンが渡してくれたチケットは単なる乗船だけではなく、4人用の個室の使用権までついていた。またそれなりの効力があるサインもされていたようで優先的に乗船する事も出来た。
船旅が始まると、レドベージュはあえて部屋にこもる事にしていた。
というのも、船の中では退屈すぎて何かと刺激を求める乗客が少無くは無いく、自分のような不思議な存在は目立ってしまい格好の暇つぶしにされると考えたからだ。
ラナナは、このゆったりとした時間を利用してメーサ教の槍の解析を進める事にしていた。そして湖張は今まで見たことが無かった海、そして体験したことのなかった船旅がとても心地よく、時間があれば甲板に出て広大な景色をただただ眺めていた。
「何か面白いものでも見えますか?」
空いていた椅子の隣に腰を掛けて問いかけてくるラナナ。彼女が近寄ってくることも気づかずにずっと海を眺めていた湖張は少し驚いた表情を見せた後に苦笑いを見せる。
「あはは、どうだろう?普通の人なら何もないつまらない景色だろうけれども、私にとっては飽きない景色なんだよね」
そう答えると、顔を近づけてジッと見つめてくるラナナ。
「なに?」
「ちゃんと日焼け止めの魔法、かけています?」
「・・・かけているよ」
「海は意外と日焼けをする環境なのです。怠っては駄目ですよ?」
「はいはい。ところで槍について何か分かった?」
そう問われるとつまらなさそうな顔を見せるラナナ。
「いえ・・・というか飽きました」
「ラナナでも飽きることあるんだ」
「当然です。なんか嫌な感じなんですよね、あの槍」
「あーまあ何となく分かるかも、それ」
背伸びをするラナナ。
「と、いう訳で私もしばらくは寛ぐ事にしました」
「うん、それが良いよ。ところでユカリは?」
「レドベージュと一緒に部屋に籠っています。目を引きますからね」
「意外と聞き分けは良いよね」
「そうなんですよね」
「船酔いは平気です?」
「うん、ラナナは?」
「大丈夫ですよ。大きな船ですから揺れも少ないですし」
「そうだよね、まさか海に出てこんな大きな船に乗るなんて想像もしなかったよ」
「楽しんでますね、赤き聖者」
「そうだね、まあ楽しいね」
「でも良かったのかな、タウンさんたちに任せちゃって」
「グリーンドラゴンの事です?」
「それもそうだし、メーサ教の事もそう」
「ハルザートさんの事、気になります?」
「・・・無茶をしてなければそれで良いよ」
「そうですか。でもまあタウンさんたちに任せて良いと思いますよ?犯罪を裁くのは私たちではなく法ですから」
「確かにそうだね。グリーンドラゴンの件は完全に駄目だもんね」
「ねえラナナ」
「はい?」
「船が着く場所ってどんなところかな?」
「結構大きな街ですよ。港のお陰で栄えています」
「そうなの?」
「はい、大きな市場もあって人の出入りも盛んです。美味しい魚介類のお店も多いそうですよ」
「それは楽しみだね」
「私は貝類が食べたいですね。色々な種類があるらしいです」
「甘いものじゃないんだ?」
「そんな意外そうな顔しないでくださいよ。私はスイーツが好きなだけではありませんよ」
「そっかそっか。ラナナもこの旅を楽しんでいる?」
「ええ、とても」
穏やかな波を見つめる二人。キラキラと光る水面は少し眩しく、そして美しかった。
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