ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第十七話【淀みの家の家宅捜査】
- 2020.06.08
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「とりあえず覗いてみようか?」
慎重に近づいた二人は一旦窓の下で隠れるようにしゃがみ込み、小声で相談をする。
人の気配は感じないものの、何が潜んでいるかは分からないので胸がドキドキしてくる。
しかしこれは緊張や恐怖からくるものではなく、むしろ子供のころに探検をした時のワクワク感に近いものがあった。
ゆっくりと窓から部屋の中を覗き込む二人。
レドベージュは背丈が足りないので、魔法でゆっくりと浮遊して覗き込んでいる。

部屋の中には光があまり入っておらず、薄暗くて詳しくは分からない状態である。
しかしながらレドベージュは何かを感じたようで、浮遊していた状態からゆっくりと下降し地面に着地をする。
そして湖張の服を優しく引っ張り合図を送ると、彼女は再びしゃがみ込みレドベージュと目を合わせる。
「何か分かったの?」
「うむ、どうやらここで間違いないようだ。この中から淀みが排出されている」
「そっか、じゃあこの中に入ってみる?」
「・・・そうしたいところだが、どうするかな。この窓は小さくて我は入れないぞ」
窓を見上げるレドベージュ。
空いている窓の隙間はレドベージュにとっては小さそうである。
体を分解すれば入れそうではあるが、そんな事が出来るのかは謎であった。
「それなら私が入って中から扉の鍵を開けるよ」
「待て、中には何があるか分からないぞ?」
「それを調べに行くんでしょう?」
そう言って窓からスッと侵入する湖張。細身で体が柔らかい人間なので、窓から侵入することは造作もない事であった。
その姿をレドベージュは心配そうに窓から見つめるが、そんな気も知らずに扉を目指す湖張。
部屋の中はさほど広くは無いのだが机がいくつも並んでおり、まっすぐには進めなかった。
しかしながら狭い空間ではあるものの隙間が無いわけでは無いので、さほどの苦労もなく入り口にたどり着き、中から鍵を開けて扉を開ける事が出来た。
「ほら、こっちこっち」
手招きをして呼び込むと小走りでレドベージュも中に入る。
二人そろったところで改めて部屋の中を見てみると、様々な物が保管されていた。
一応片付けてはいるものの、物の多さゆえに整頓されているようには思えない状態である。
棚には様々な薬品と思えるものが並んでおり、何かの実験でもしているのかとも思える雰囲気である。
「ねえレドベージュ、あの机の上にあるものは何かな?」
湖張が指さす方向には1立方メートル程の大き目な木製の箱が置いてあった。
その箱は不思議なことに、窓に向かった面のみ開いており、中から弱い風が吹き出ている。
「・・・どうやらコレが発生元だな」
レドベージュはこの箱から汚い魔力が出ていると感じ取る。
「どういう原理で出来ているのかな?常にちょっとずつ風が出ているよ?」
「多分魔法でどうにかしているのであろう。風を発生させる魔道具が仕込んであるようだ」
箱の中身を覗き込みながら答えるレドベージュ。そして手を伸ばして小さな桶を取り出した。
「何それ?如何にも毒ですと言わんばかりのものじゃない?」
桶の中身には紫色の如何にもといった溶液が溜まっていた。臭いはないが禍々しさは感じる。
それを机の上に置き、手をかざしながら見つめるレドベージュ。
「淀みの元はこれだな。誰かがまき散らしていたのであろう」
「一体誰が何の為に?」
淀みの原因が人為的である事が分かったので、当然として次に疑問になることは
一体誰が何の理由でという部分にある。湖張はその疑問を投げかけると、レドベージュは部屋を見渡す。
「それを知る手掛かりはここのどこかにあるのかもしれないぞ?」
「なるほどね、次は手掛かり探しだね」
手分けをして部屋の物を見て回る二人。
難しいことが書いてある資料を一つ一つ見るには時間がかかるので
何か人名や地名が記されているものを探すことにする。
「ねえ、これは何かな?」
湖張が気になった物は、紺色のハンカチであった。
その端には赤で太陽のような形をかたどったマークの刺繍が施されている。
「ふむ、これはただのハンカチではないのか?」
「そう思うでしょ?でもさ、このテーブルクロスを見てよ」
特に変わったところは無いとレドベージュは思ったのだが、湖張はそうではなかった。
というのも、テーブルクロスにも同じマークの刺繍が施されていたのである。
「まだあるよ」
更に彼女は柱を指さす。するとそこには同じマークが刻まれていた。
「これは・・・」
「どう?何か手掛かりにはなりそうじゃない?」
小さい笑顔でレドベージュに話しかける湖張を見ると、感心したかのような雰囲気でうなずくレドベージュ。
「うむ、これは良い着眼点だ。・・・そしてこの模様、どこかで見たな」
「見覚えがあるの?」
流石天将、知識が豊富と湖張も関心したが、レドベージュは答えを出さずにいる。
「期待しているようだが、実はよく思い出せん」
答えを出さなかった理由は要するに忘れたという事らしい。
しかし人間ならともかくレドベージュの場合は忘却という機能があるのかどうかが謎である。
「レドベージュも忘れたりするの?」
思わず聞いてしまう湖張。しかし冷静な答えが返ってくる。
「いや、基本的には忘れることはないが、この模様に関しては注意して見ていなかったのだろう。
要するに忘れたのではなく、覚えなかったという方が近い表現だな。
目に入った物全てを記憶していたら、流石に我でも情報量に押しつぶされてしまうからな」
「あー・・・うん」
何となく分かったような、分からなかったような感じだが、兎にも角にもこのマークについては
よく分からないという事は分かった。更なる調査が必要そうである。
「じゃあもうちょっと探してみようか。他に手掛かりがあるかもしれないよ」
そう言って周囲を再び見渡し始める湖張。
しかしそれと同時に、望んでいなかった事が起こってしまった。
家の扉が開き、人が入ってきてしまったのである。
<NEXT→>
Peace Keeper 赤き聖者第十八話【調査失敗】
<←PREV>
Peace Keeper 赤き聖者第十六話【淀みの調査】
-
前の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第十六話【淀みの調査】 2020.06.04
-
次の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第十八話【調査失敗】 2020.06.12