ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第十六話【淀みの調査】

           

「さて、とりあえず外に出たわけだけど、どうしようか?」
勢いで外に出てきた二人は、宿屋の前で一度立ち止まり作戦会議を始める。
部屋の中で方針を決めてから出ればよかったのだが、思考より勢いの方が勝ってしまったようだ。

「そうだな、とりあえずこの淀みを辿ってみるか?」
レドベージュが上を見ながらそう呟くと、目を丸くして驚く湖張。
「え?分かるの?」
まさかそんな便利で都合が良いことが出来きようとは思いもしなかった。
もし本当にそうなのならば、今後のプランを考える必要もなさそうである。

「うむ、微細ゆえにはっきりとは分からないが、どっちから流れてきているというのは分かりそうだ」
レドベージュの言動からして、どうやら本当にできるらしい。
天将の力は便利と口には出さないが心で呟く湖張。
ただ、淀みの流れが分かるというのはどういう事なのか疑問であった。

「美味しそうな匂いが、どっちからきているのか何となく辿れるのと同じ感じなのかな?」
自分でもどんな感じなのか理解するように考えた結果がこれだった。言った直後に馬鹿な事を言ったと思ったが、意外にもレドベージュは首を縦に頷く。

「言い得て妙だな、おそらくその感覚に近いのであろう。
ただ決して美味しそうではない。むしろ真逆であろうな」

そう言うと、少し黙り込むレドベージュ。
湖張も邪魔をしてはいけないと思い、ジッと待っていると、レドベージュは西側を指さす。
「あっちだ。あっちから漂っているようだ」
「分かった!じゃああっちに行ってみよう!」

淀みの元を辿るために先頭を歩くレドベージュ。
しかしその道中には当然のように町人がいるので、無口で黙々と歩くレッド君として振舞いながらの行動となる。
一方湖張は周囲の様子を窺いながらレドベージュの後ろをついていく。

「何だろう?そういえば枯れた花が多い気がする。これから元気よく咲く季節だと思うのに」
独り言をつぶやいたフリをしてレドベージュに話しかける湖張。
するとレドベージュは一度立ち止まり振り返る。そして一度だけ頷くと、再び進み始めた。
恐らくレッド君で出来る限りの反応だったのだろう。

そうこうしているうちに町の外れまで来た二人。道も細くなり、もはや森といっても過言ではない雰囲気である。
その様な場所なので、当然のように人影は全くと言っていいほど見えなくなってしまった。

「まだ目的地は遠いの?」
周囲に誰も居なくなったので、通常通りの雰囲気で話しかける湖張。
「どうなのだろうな。だが大分近くに来ているはずだ。さっきより淀みが濃い」

そう言ってから更に先に進むレドベージュ。
そしてそのまま人一人がようやく進めるような細い道を5分ほど進むと、目の前に木で出来た小さな家を発見する。

「誰か住んでいるのかな?」
遠くから覗く様に家を見る二人。家は背の高い木々に囲まれており、暗い雰囲気である。
また、家からは明かりが見えない。窓も締まっているようだ。どうやら家の中には誰も居ない様子である。

「近づいてみるか」
そう言って湖張に手をかざし光を発生させ、彼女の全身に光を振りかける。

「これは?」
不思議そうに両手を見つめる湖張。光は体の全体を覆った後、スッと消えてしまった。
「それは防護の魔法だ。この淀みにもし本当に野菜を腐らせる効果があるのならば、人体にも決して良い物ではないであろう。
ここは町中と比べて濃度が濃い。なので念のために影響を受けない魔法をかけておいた」
「ああ、ありがとう。これで準備万端だね、近づいてみよう」

そう言ってゆっくりと物音を立てずに近づく二人。
ここまで近づいても、やはり人の気配はしない。しかしながら、先ほどの位置からは見えなかった家の上げ下げ窓の一つが開いていることに気が付いた。

ピースキーパー赤き聖者016話

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