ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第四十二話【よし、戻ろう!】

           

「ただいまー」
部屋の扉をゆっくりと開ける湖張。
二人と別れてからの湖張は、とりあえず出店で美味しそうなものを探していた。
焼き鳥やフルーツの出店などを見て回り、様々な食べ物に誘惑されながらも選んだものはクリームパンであった。
それを作っているパン屋は街の中でも評判の良い店らしく、行き交う人々の中にもクリームパンを持っている姿を見る事があった。
更には店の前を通った時には数人がパンを購入するために並んでおり、これだけの人が購入しているのであれば味に期待が持てそうである。

実際にクリームパンを購入し食してみると、ふんわりとしたパン生地の中に、絶妙な甘さの黄色いカスタードクリームが詰まっていた。
また白い生クリームも入っており、二層式で得をした気分になる。
味の方も気持ち悪くならないくらいに食べやすい甘さなので、直ぐに食べ終えてしまい、リピートをしたくなる気持ちが良く分かった。
なので食べ終わった後にもう一度購入をするために出店に戻る湖張。
というのも美味しかったのでラナナの分も購入し、おやつとして二人で食べようと考えたからだ。

そんなこんなで手土産を持って部屋に入る湖張。
するとレドベージュとラナナが机を囲んでいる様子が視界に入ってくる。
どうやら塔での話をしていたようだ。

「うむ、戻ったか」
「おかえりなさいませ!」
いつも通りの落ち着いた口調でレドベージュがそう言った後に、ラナナが若干興奮気味でお帰りの挨拶をしてくる。
心なしか、彼女の眼はとても輝いているように見えた。

「何か充実してそうだね」
湖張が買ってきたクリームパンが入っている紙袋をベッドの上に置いて、その隣に腰を掛けるとラナナは元気よく答える。
「はい!凄い事を沢山聞けました!もうこれだけで赤き聖者に入った甲斐がありますよ!」
キラキラと輝いた目のラナナを見ると、話の内容が大満足だったことが良く分かる。
そんな様子に微苦笑しながら、紙袋からクリームパンを取り出す湖張。そして「これ食べよう」と言ってラナナに手渡す。
するとラナナは渡されたクリームパンをジッと見つめる。

「あの、お代は?」
「良いの良いの、美味しかったから一緒に食べたかったの。
それにレドベージュからお給料も貰ってるし気にしないで」
「・・・そうですか。ありがとうございます」

そうお礼を言った後に両手で持ったパンを一口食べるラナナ。
口にパンを含んだことで少し落ち着いた様にも見える。
そう感じるとレドベージュに話しかける湖張。

「あらかた話し終わったの?」
「うむ、湖張に伝えた事は全て伝えたはずだ」
「そっか。話を聞いてどうだった?」
そう質問をされると少し考えるラナナ。そしてパンを食べるのを止めて少し固まる。

「実際に塔を見てみたいです」
ポツリと呟くように要望を出すラナナ。
その一言が聞こえてくると湖張とレドベージュは目を合わす。

「・・・雰囲気的に、まあそうなると思った。
でも良いんじゃない?あの塔ってここからそんなに遠くないし」
「うむ、まあ湖張にだけ見せたというのも不公平な話ではあるな」
「じゃあ!?」
「よし、戻ろう!」
「うむ、まあ良かろう。明日は塔に向かうとするか」
「やった!」

満面の笑みを見せるラナナ。本当にこっち側のジャンルの話が好きなようである。
「その塔にはリンキ神やリティーさんの姿が分かる彫刻があるのですよね!?」
湖張に確認するようにそう尋ねてくるラナナ。突然そう切り出してきたので一瞬戸惑ってしまう。

「え?・・・ああ、あったよ?
それにしてもリンキ神とリティーに興味があるの?」
「はい、実は私の村にはリンキ神の伝説があるのですが、
他の地域には知られていなくて、私の村独自の言い伝えというか昔話なのかと今までは思っていました。
ですが今日レドベージュさ・・・レドベージュに話を聞いて驚きました。
リンキ神は本当にいたのですもの!何かとても嬉しいです!」

ラナナの発言を聞くと少し驚いた表情になる湖張。
そしてレドベージュに視線を移す。

「そう言えばリンキ神の話は一部の地域でのみ伝承で残っているって言っていたけど、
ひょっとしてラナナの住んでいた地域がそれに当たるという事?」
湖張がそう尋ねると、頷くレドベージュ。
「うむ、そうだな」
「へぇ、そんな偶然もあるんだね」
腕を組んで関心をするように湖張がそう言うと、ラナナは湖張を見つめて話しかけてくる。

「ちなみに私の村の言い伝えに”リティーさん”というものがあるのです。
それはどういう内容かといいますと、リティーさんは私たちを見守っていてくれて
厄災から守ってくれるというものです。
なので毎年秋になると、村では平和を祈願するためにリティーさんのお祭りが開かれるのです。
そのリティーさんがまさかリンキ神の従者だったのは驚きでした。
・・・そうだ!リティーさんもレドベージュみたいなリビングアーマーなのです?」

饒舌な状態のラナナからの質問を受けると、少し考える湖張。
「うん、確かにリビングアーマーなんだけど・・・
えっと自分の目で確かめた方が楽しみになって良いんじゃないかな?
もちろん、それでも聞きたかったら教えるけど?」
その返答を聞くと、ラナナは両手を広げて待って欲しいような素振りを見せる。

「あ!確かにそうですね!!そうします!楽しみに取っておきます!!」
そのタイミングで笑顔を見せるラナナ。
彼女の無邪気なその笑顔を見ていると、不思議と心が温まるような気持になるものであった。

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