ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第十二話【最後の朝食】

           

「ねえおじいちゃん、昨日のうちに重たい物は買っておいたから後で確認しておいてね」
「うむ、分かった」
「あと、何か困ったら隣のおばちゃんに言うんだよ?
昨日、しばらく家を空けるからって伝えた時に、おじいちゃんの事もお願いしておいたからね」
「大丈夫じゃよ」

日が明けていつも通りの時間に起きた湖張。
いつも通り朝食を作り、そして老人と食卓を囲んでいる。
今日が旅立ちの日なので、思いついた事を老人に伝える湖張。

昨日は買い物に行った後、近所の人にしばらく家を空けるので、挨拶にも行っていた。
というのも、どうしても老人の一人暮らしになるので心配であったからである。なので近所の人に様子を気にしてほしいというお願いの意味でもあった。
ただ、あまり言いふらす事でもないので赤き聖者の事は伏せ、修行のためにしばらく旅に出るという事にしておいた。

「何か物寂しい環境を作ってしまったな」
テーブルの横で申し訳なさそうにレドベージュがそう言うと、老人は首を振る。

「いやいや、そんな事はありませぬ。
むしろこんなに嬉しい旅立ちの日はありませぬぞ。大変名誉ある事でございます」
老人がそう言うと、湖張もうなずく。
「そうだよ、別に寂しくなんかないよ?別にもう帰れないってわけじゃないんでしょ?
今生の別れじゃないんだから、そんなしんみりする必要ないでしょ?」

その言葉に対して頷くレドベージュ。
「うむ、確かにそうなのだが危険と隣り合わせの旅にもなるかもしれないのだ。脅すわけではないのだが、絶対とも言い切れない」
「その時はその時ですじゃ」
申し訳なさそうなレドベージュに対して、心配ないとアピールするかのような口ぶりで老人がそう言うと、湖張も話に続く。

「何かごめんね、会話の内容からそんな風に感じ取れちゃったかな?
そりゃまあ、おじいちゃんを一人にするのは少しは心配だけれども、平気だという事も知っている。
ただ無駄に買い物をしないように注意してほしかっただけだよ」

笑顔を見せる湖張にレドベージュは「そうか」と一言だけ返し、静かになる。
天将という神の側近として人々に崇められる立場でありながらも、一人の人間に対して物凄く気を使っている姿勢は、
特に神を崇拝していなかった湖張でも、何か信頼を置ける存在と感じさせた。

「ごちそうさま。じゃあ片付けしたら、そろそろ行くね」
湖張が立ち上がり食器を重ねながらそう言うと、老人は静止させるように手を小さく上げる。
「いや、片付けはワシがやるから、お前は支度をしなさい」
「いいよ、いつも私がやっていたでしょう?これが一連の流れなんだから、明日から頑張って」
そう言うと、手際よく片付けを始める湖張。
老人はその姿を優しく見つめていた。

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