ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第十三話【目指すは隣町】

           

ピースキーパー赤き聖者013話

「じゃあ行ってくるね」
家の前で見送る老人に湖張が小さく手を振って老人に挨拶をすると「頑張るのじゃぞ」と返ってくる。
二人には特に寂しいという雰囲気は無く、まるで仕事に出かける家族を見送る様子に近かった。

なので特に別れを惜しむ事もなく村を出て街道を進む湖張とレドベージュ。
とても天気が良く、気持ち良い日差しが降り注いでくる。
時期的に草木が元気に生い茂り始める季節で、緑色をより強く感じる景色だった。

「ねえレドベージュ、とりあえずこれからどうするの?」
目的地も聞かずに村を出たので不思議に思う湖張はそう質問をする。
「東を目指す。というのも実はもう一人、赤き聖者に加えたい者がいるのだ」
「え?そうなの?」
レドベージュの返答に驚く湖張。しかしよく考えてみると、確かに赤き聖者は自分一人だけで構成されるわけではないと思える。
まだ仲間が増える事は自然と受け入れられた。

「それってどんな人?」
自分以外にも赤き聖者となりうる人間がどんな感じなのかとても興味が湧き、ついつい聞いてしまう湖張。
するとレドベージュは湖張の横を歩きながら顔だけを向け説明をする。
「もう一人はラナナ・ショコラという湖張より一つ下の娘だ」
「女の子なの?」
「うむ、だがただ普通の娘ではないぞ。湖張はダラ魔法学校を知っているか?」
「あー聞いたことある。魔法のエリートだけが入学できる最高難易度の魔法の学校だよね?」
「そうだ。そしてラナナは飛び級に飛び級を重ね、つい最近16歳の若さで卒業をした」

「・・・めちゃくちゃエリートじゃない」
若干ひきつる湖張。
「驚き方が地味だな」
反応が面白くなかったからか、レドベージュがつまらなさそうに言うと、湖張は少し考えてから話をする。
「そんなこと言われたって・・・。ところで大丈夫?そういう人って気難しくって嫌味なイメージが・・・」
「変な偏見だな。ちなみに全くもって問題は無いぞ。ラナナはとても良い子だ」

そう聞くと、小刻みに頷きながら湖張が話す。
「確かに赤き聖者に選ぶくらいだから、そこらへんは問題ないか。まあ最初から決めつけは良くないよね」
「うむ、その通りだ。そしてラナナは東の方にいるから、その方角を目指す。
しかし途中にいくつもの町や村があるので、各地で悪が蔓延っていないか確認しながら移動するぞ」
「分かった、じゃあそうしよう」

湖張が元気にそう言うと、レドベージュは更に違う話をしてくる。
「さて湖張、これから我らで様々な場所に向かうのだが、知っての通り我はリビングアーマーだ。
正直なところ異端ではある。そこで設定が必要だと思うのだ」
「設定?」
湖張が不思議そうに聞き返す。

「そうだ、まず我はリビングアーマーを作る技術を応用した自動人形・・・そうだなパペットという名称にしよう。
そして湖張は、それを操るパペットマスターという技師で、パペットの運用試験の為に旅をしているという設定だ」
またも小刻みに頷く湖張。

「ああ、なるほどね。それなら何とか町の人に説明がつくかな?
つまりリビングアーマーという魔物ではなく動く人形と一緒に行動している珍しい人という設定ね?」
「そんなところだ」
湖張の解釈に頷くレドベージュ。

「・・・ところでさ、名前はどうするの?流石にレドベージュじゃ反応する人いるよね?」
湖張の疑問はもっともである。レドベージュの姿は一般人に知られてはいないものの、
名前に関しては信仰心の薄い湖張ですら知っている程である。
むやみやたらにその名前は呼ばない方が無難である。
レドベージュもその問いかけに対して少し考える必要があると感じたようだ。

「確かにそうだな。何か良い案はあるか?」
何気なく聞くレドベージュ。すると空を見上げ考える湖張。
「そうだね、やっぱり偽名を使う方がいいと思うの。
そうだなぁ・・・よし、今日から君はレッド君だ!」

だいぶ固まるレドベージュ。一体何を感じたのか湖張には分からなかったが、何かと葛藤しているのかとは想像ができた。

「・・・まあ良かろう」
「え!?良いの!?」
正直なところ、半分冗談だった案が採用されてしまい戸惑う湖張。
しかしながら本来の名前ともかけ離れていないし、見た目もそのままなので悪くはないとも思える。

「じゃあとりあえずレッド君で行こうか。もし何か他の良い案が浮かんだら変えてもいいし」
そう湖張が言うと、レドベージュは特に頷きもせずに「そうだな」と一言つぶやいた。

暖かい気候の中、長閑な街道にふさわしい雰囲気で歩いている二人。
そして、そうこうしている間に隣の町にたどり着いていた。

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