ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百四十話【急斜面の草原、絶壁の背面】
- 2025.01.15
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
フーギルを倒した以降、特に魔物と遭遇する事は無く山道を進む一行。
しかしそれは追っている黒く謎めいた魔物の痕跡も同様に見つけられていないという事であった。
山道は次第に景色が全く違ったものへと変わっていく。
今までは背の高い木々が生い茂っていた森のような雰囲気ではあったのだが、
次第に植物類の高さは低くなっていき、気が付いたら木が全くない草原になっていた。
その結果、周囲は見渡し易く晴れも相まって気持ちの良い光景である。
とはいったものの斜面の角度は急で、和やかな山登りにはなれそうにはない環境である。
そして何処を見渡しても今までの道中と同様に謎めいた魔物の姿も痕跡も見当たらない。
「山頂が見えてきたぞ」
目の先に続く斜面の草原が横方向に切り取られたようになっている。
先には空しかない。そこはまるで草原と空の境界線だった。
「これは中々の絶景ですね」
呟くラナナ。そのセリフを聞くなり嬉しそうな表情でタウンが話しかける。
「こんなのまだまだだぜ。頂上から見てみな。もっとすげーから」
そう伝えられると湖張の手を引いて小さく宙を浮くラナナ。
「行ってみましょう!」
嬉しそうな彼女の表情にコクリと頷く湖張。
「わかった。でも警戒はしながらね」
そう答えるなり振り返る湖張。そして明るい顔でレッド君に伝える。
「行こうよ!」
日の光は彼女の背から光を照らし、眩しい姿を映し出す。
その光景に彼は思わず動きが止まる。
「ほら、何やっているの?!」
「・・・うむ」
同様に小さく宙に浮くレッド君。そして湖張とラナナに近づくと、三人は頂上に向かって先行する。
「・・・すごい」
草原の裏側は何か鋭利な刃物で垂直に切り落とされたかのような
絶壁になっており、岩の世界であった。
壁の下には木々が生い茂っており森のようになってはいるが、
途中の絶壁部分には植物は見られない。
周囲を見渡すと、近隣の山や森が一望できる。
青く広がる空、白く輝く雲、いつも見ているはずの木々までもが輝いて見える。
いつもは見上げる鳥の飛ぶ姿も、ここからならば上から見える。
「こういうのを絶景というのかな?」
「うむ、そうだな」
湖張がそう呟くと答えるレドベージュ。
ラナナは湖張の腕にしがみ付いて話しかける。
「こんなところがあったのですね。知りませんでした」
「私は村から出る事なんて考えていなかった身だから、何もかも新鮮だよ」
「結果はどうです?」
「結構、楽しい」
湖張が笑顔で答えると、ラナナも同じように笑顔を見せる。
「どうだい、なかなか良い場所だろ?」
少し遅れてタウンたちが到着すると振り返る三人」
「そうですね、観光名所にもなりかねませんね」
ラナナがそう答えると自分の目を両手で隠すタウン。
「ああ、おっかない魔物さえいなければな」
「あー」
どうやらフーギルの存在がネックの様子である。
「なるほど、ここからならば周囲を見渡す事ができるな」
観光気分になっている湖張たちとは対照的に周囲を見渡すハルザート。
仕事モードは切れていない様子だ。
「真面目だねえ」
「そうか?」
苦笑いの湖張に不思議そうな顔を見せるハルザート。
そこにタウンも会話に加わる。
「だろ?それにあれ程の大きさだ。移動したら何かしらの地形の変化もあるだろう。
ここからそれを見つけられたらと思ったのだが・・・」
「何か見える?」
「・・・いや」
周囲を見渡す湖張の問いかけに答えるハルザート。
タウンはゼンとラナナに話しかける。
「なあ魔法使いさんたち。ちょっくら空に上がって、更に上から見渡してみないかい?」
「確かにそれは試しても良いね」
そう言うなりスッと浮き上がるゼン。
「あ、待ってください!」
ラナナも慌てて飛び上がる。
「どうー?何か見えるー?!」
大声で問いかける湖張。しかしラナナは首を横に振る。
「いえー!何も!!」
「やっぱり、そう簡単には見つからねえか」
腕を組んでぼやくタウン。しかしその時であった。
「え?!」
突然小声で疑問を口にするゼン。
「どうかしました?」
不思議そうな表情で問いかけるラナナ。
「!?離れて!」
突然、隣で宙を浮いていたラナナを魔法で横方向に弾き飛ばすゼン。
その直後、長い蛇のようなものが地中から勢いよく飛び出してきて、今いる空の場所まで襲い掛かってきた
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