ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百三十一話【もめごと】
- 2022.06.24
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「これはどういう事だ?」
5m程離れた距離でタウンがラナナに向かって問いかける。眼差しは強い。しかしラナナは威圧に負けない様子でため息を一つ。そして答える。
「どうもこうも無茶苦茶ですね。私たちはグリーンドラゴンの異変を感じ取り調査にきていただけです。むしろそちらの人がそこに倒れているグリーンドラゴンを狩っていたのですよ?」
冷たい視線を男に視線を向けるラナナ。寧ろ睨むようにといった表現の方が近い目つきであった。すると頭をかくタウン。
「なんだそりゃ?この期に及んで罪の擦り付け合いか?」
「いやいや、私たちじゃないから」
苦笑いで手を振りながら否定する湖張。すると今度は湖張に視線を移すタウン。わずかな表情の変化も見逃さないような目である。
「とは言ってもな、こいつは国の特務隊所属だ。要するにこちら側の人間。様々な問題の調査をする立場なんだよ。そいつがお嬢さん方を悪人認定したら話を聞かないわけにはいかないな」
「待ってよ!私たちは何もしていない!」
「嘘をつくな!」
否定する湖張に口を挟む槍使いの男。汚い行動に思わず怒りの表情を男に向ける湖張。それを顎に手を当てて観察をするタウン。そして言葉を放つ。
「まあそう熱くなりなさんな。とりあえず一緒に来てもらおう。話はそれからだ」
「お断りします」
タウンの要請に間髪入れず答えるラナナ。彼女も怒っているようで顔つきが少し怖い。
「断る権利はないのだが?」
淡々と答えるタウンをジッと見るラナナ。
「先ほどお伝えした通り、私たちは何もしていません。しいていえばそちらの犯罪者である特務さんの悪行を止めただけです」
「じゃあ悪い事をしていないなら、大人しくついて来てもらっても問題はないよな?」
腕を組んで探りを入れるタウン。しかしラナナは同意を見せない。
「問題は大有りです。このままついて行っても、リスクだけで何の得にもなりません。だって王国の兵士が犯罪者なのですよ?仮に私たちが申し開きをしても国の特務が私たちを否定したらその時点で終わりじゃないですか」
そう伝えると、目を薄く開けて答えるタウン。
「まあ、普通は特務の話の方に信ぴょう性を感じるわな。証拠があれば話は別だが」
「ふむ、証拠か・・・」
このタイミングで言葉を発するレドベージュ。そして転がっている槍使いの槍に視線を移す。
「あの男の槍があるであろう?グリーンドラゴンの傷口とあの槍を比べてみると良い。あの槍で傷つけられた事が分かるはずだ」
レドベージュがそう提案すると、気まずそうな顔を見せるラナナ。
「あ・・・ごめんなさい。さっき全力で治癒魔法をかけたので傷口は全て綺麗に塞がっています」
「・・・むう」
残念そうな雰囲気を見せるレドベージュ。ラナナの善意が仇となってしまった。だがそこで黙り込むわけにもいかず、タウンに再び話しかける。
「聞いての通り、残念ながら証拠は提出出来そうにない。だが、お主たちについて行く事が最善とは思えぬことも事実だ」
「そうですよ、ひょっとしたらアナタも犯罪グループの一味かもしれませんし!」
レドベージュの会話の途中で入り込むラナナ。その発言にあっけにとられたような表情を見せるタウン。
「は?俺が?」
「そうです。そもそも現れたタイミングが絶妙過ぎです。この場から逃げ出した共犯者について、情報を引き出そうとしたところでこの騒ぎです。仲間をかばうためじゃないのですか?」
その言葉を聞くと目を細めるタウン。
「ふーん、まだ登場人物がいるのか?」
そしてしばらく沈黙が続く。その間は、何かを考えているかのようであった。
「まあいいや。とりあえず同行してもらおう。見極めが必要だ。悪いようにはしないぞ?」
「ですからお断りします。だいたい悪いようにしないという人は胡散臭いです」
「頑なだな・・・従ってくれないと力ずくでの連行になるぞ?」
少し威圧を入れるタウン。そこでレドベージュに視線を移す湖張とラナナ。するとため息のような素振りを見せた後にレドベージュは言葉を発する。
「では我らは力ずくでこの場を立ち去るとしよう」
その方針を聞くなり、ため息の湖張。
「はぁ、お城の兵士とは争いたくはないなぁ」
「仕方がありませんよ。あっちも悪人かもしれませんので」
そうやり取りをしながら鉄扇を取り出す湖張。ラナナはいつでも魔法を放てるように身構える。
「一応言っておく。騒ぎが落ち着いたら麓のグリーンドラゴン研究所にいる研究員に話を聞いてみると言い。我らがグリーンドラゴンの調査で山に入った事を証明してくれるであろう」
レドベージュがそう伝えると、右手を上げるタウン。
「そうかいそうかい、そうしたら大人しくなって事情聴取している時にでも聞くさ」
そして右手を目の前に振り下ろし周囲の騎士達に指示を出すタウン。
「取り押さえろ。ただ怪我はさせるなよ」
号令と共に、取り囲むように四方八方から迫ってくる騎士達。タウンとやり取りをしている間に配置についていたようだ。
「分かっていると思うが、殺めるでないぞ!」
「そりゃそうでしょ!」
レドベージュの指示に返事をしながら迫る騎士に飛び蹴りを仕掛ける湖張。鋭い一撃で後方に突き飛ばすなり、右から迫る騎士に向かって左足で回し蹴りを決め、早速二人を気絶させる。
「近寄らないでください!」
右手を薙ぎ払うと、黄色い三日月形の光を打ち出すラナナ。その広範囲の魔法は四人の騎士達の腹部にめり込んだ後、数メートル突き飛ばす。
「ふむ、ここは退路を確保して一気に抜け出した方が良さそうだな」
そう言うなり剣を頭上に掲げるレドベージュ。そして来た道の方に向かって剣を一気に振り落とす。
「道を開けるのだ」
剣先が地面に触れると、そこから10m程の距離まで緑色の光の波が突き進む。その光は横方向にも飛び散り、周囲の騎士達は否応無しに道を開けざるを得なくなる。
「道を作った、一気に駆け抜け・・・いや待つのだ!」
強行突破を試みようとしたが、急に制止を促すレドベージュ。というのも、切り開いた道の先から四十名近くの騎士達が走って向かってきている姿が見えたからだ。
「ちょっと、多すぎない?」
「これは・・・」
予想外の展開に困惑する二人。そんな事はお構いなしに、増援部隊の中にいた魔法使いたちが湖張たち目掛けて数多くの光弾の魔法を放ち、攻撃を仕掛けてくる。
「避けて!」
回避を促す湖張。その声に反応するかのように横方向に飛ぶラナナ。レドベージュはラナナを守るように同じ方向に飛ぶ。すると元居た場所は魔法により数多もの穴が地面に空いてしまった。
(まずは魔法使いをどうにかしないと)
心の中でそう分析をすると、意を決した顔を見せる湖張。その直後、高く飛び上がった後に、魔法で勢いを付け急降下を行い敵陣に飛び込む。着地したところには王国の魔法使い達が四人おり、突然の襲来に動揺を隠せていない。
「悪く思わないで・・・覇王旋風脚!」
竜巻のような激しい風を纏った回し蹴りを繰り出す湖張。強襲の一撃は魔法使いたちを弾き飛ばし、更には周囲にいた騎士達の陣形を荒らす。
「あいつを止めろ!」
湖張の周囲にいた騎士達が剣を構えて向かってくる。数は六人。一度に相手をするのは得策ではない。そう感じていると次から次へと前方に向かってに倒れる騎士の部隊。というのも、騎士達からの注意が逸れフリーになったラナナが後方から魔法で狙い撃ったようだ。
「後ろからだと!?」
振り返る残りの騎士。状況を把握するために振り返ったのだが、それが大きな隙となり後方からスッと近寄ってきた湖張によって首元に黄色い魔法の玉を添えられる。
「少し寝ていて」
そう告げられるなり、首元に電撃が走ると騎士は気を失ってしまった。
「魔法使いだ!魔法使いから狙え!」
その流れを見ていた他の班の騎士が声を上げながら四人を引き連れてラナナの方に向かっていく。するとレドベージュは騎士達の前に立ちはだかり、両の拳に光を集める。
「ここ最近、剣を使わないことが多いな」
そうぼやきながら両手を騎士達に向けてかざすレドベージュ。そして虹色に輝く光を拡散させ迫りくる騎士達に浴びせると、力が急に抜けたように四人とも膝から崩れ落ちる。
「怯むな!」
さらにラナナに向かって数を増員する騎士達。取り囲んだ後に四方より攻めてくる。
「ギュー!」
ラナナの腕から飛び降り煙を纏うユカリ。すぐさま煙が消えると巨大な姿を現し突然声を上げる。
そして両手を丁字に広げると独楽のように高速回転をしながらラナナを中心に円を描く軌跡で周回し、迫りくる騎士達を次から次へと薙ぎ払っていく。
「おいおい、あれはユカリじゃないのか?何でアイツらと一緒にいるんだ?」
困惑気味のタウン。予想外の登場で思わず苦笑いがこぼれる。
そうこうしている間に、次から次へと騎士達を倒していく湖張たち。
「大したものだ。報告通り・・・といったところか?」
腕を組んで静観をしていたタウンがボソリと独り言をつぶやく。そしてその後、横目で特務の槍使いを観察すると、まるで焦っているかのような表情で戦いを見ている姿が目に入る。
「・・・伝令。それとあと二人来てくれ」
後方に視線を向け、待機していた魔法使いの男性一人と騎士二名に指示を出すタウン。すると機敏な動きで近づく三人。そしてまずは騎士二人に話しかけるタウン。二人の顔のそばまで自分の顔を近づけ小声で指示を出す。
「いいか、あの特務が妙な動きをしたら取り押さえろ。最悪足を切っても構わん。だが絶対に殺すなよ」
「は!」
指示に対して了解の意を示すと、今度は伝令係である魔法使いに話しかけるタウン。
「お前は魔法でかっ飛んで下山し、麓にいるゼンを呼んできてくれ。増援も欲しい。魔法使いや魔法剣士ならば然程時間もかからず魔法で飛んでこられるだろう」
「は!」
「・・・それと、もし俺が倒れたならば全指揮権をゼンに移譲するとも伝えておいてくれ」
その言葉を聞くなり驚きの表情を見せる伝令係。
「何をなさるおつもりですか?」
「見ての通りあいつらは手ごわい。俺も出るぞ」
「お待ちください!隊長にもしもの事があったらどうなさるのですか!?」
「だからゼンに委ねると言っているだろう?それにそう言っておいた方がアイツも急ぐだろ?」
そう言うなり両腰に携えている剣を抜き、両手で強く握る。
「さてと、誰から潰すのが効果的かな?」
戦況をジッと見つめ分析をするタウン。そして一言。
「やっぱりあの魔法使いだな。少々生意気だからお仕置きが必要だしな」
他の騎士同様、ラナナに目標を絞るタウン。遠距離から広範囲の魔法で騎士達を一度に倒す危険性があると考えたからである。そして高速で飛び出す。
魔法を使ったのか、移動速度はかなりのもので風のような動きであった。
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