ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百三十話【グリーンドラゴンを狩る者】
- 2022.06.15
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
研究所を出てから、山の上の方を目指す一行。特に手掛かりは無いのだが、とりあえず道に沿って登る事にした。
研究所の人々が作ったのか登山道のようなものがあり予想外に進み易く、とりあえず頂上まではそれほど時間がかからず到達できそうである。
「頂上まで登れば何か分かるかな?」
上の方を見上げながら問いかける湖張。レドベージュは彼女に視線を向ける。
「分からぬ。そんなに都合よく事が運ぶとは思えぬが、当てがないわけでもない。グリーンドラゴンと話す事が出来れば何かしらの情報は得られるであろう」
「今度は話が分かる相手だと良いのですが」
「そうだな」
「ところでグリーンドラゴンはどのくらい生息しているのですか?」
「この山にか?結構な数はいるぞ。この山は標高が高くはないが、横に広い山ではあるからな」
レドベージュの答えを聞くなり、周囲を見渡す湖張。若干遠い目をする。
「確かに意外と広いよね。ここを探索するとなると骨が折れそうだよ」
研究所を出てからしばらくの内は森の延長といった感じで木々に囲まれてはいたが、登り続けていると高い木が極端に少なくなり、見晴らしが良くなる。すると必然的に広大な立ち位置に気づかされる事となった。
「いっその事、魔法で飛んで探しますか?」
ラナナも埒が明かないと感じたようで、上空からの探索を提案する。それに反応するレドベージュ。
「ふむ、最終手段としてそれはありだな。飛ぶことによってグリーンドラゴンが目を付けて向かってきてくれるかもしれぬ」
「それって外的として襲ってくるという事?」
「それもあり得るが、案外餌と思うかもしれぬな」
レドベージュの回答に呆れ顔の湖張。
「それは作戦としてアリなの?」
「まああくまで最終手段としてだ。なるべくなら穏便に済ませるさ」
そのようなやり取りをしている間に、なんだかんだで頂上付近にまで到達する一行。やはり空振りだったかと思う一方で、一番高い所から見晴らしの良い山を見下ろす事で何か分かるのではないかという期待を持ち始める。
と、その時であった。頂上の方からけたたましい叫び声が聞こえる。この声質からしてグリーンドラゴンだと推測が出来る。
「この声は!?」
「急ぐぞ!」
一気に駆け上がる一行。その勢いで頂上まで到達すると、目の前には草の生えていない部分が大多数の広場が視界に入ってくる。巨大な岩が所々にあるが、それが気にならないくらいの広大な面積を持っている空間であった。まるで巨大な竜がその場に居座っても問題がないように、あえて広場にしているのではないかと思えるほどに整えられた場所であった。
そんな広大な頂上であったが、遠く離れた場所では穏やかではない光景が繰り広げられていた。体長が10m程の傷ついたグリーンドラゴンがその場に伏せており、目の前には一人の男が竜に槍を向けている。そして背後には他に二人の人間がいるようだ。槍を持つ男は腕と足に革製の鎧を身に着け、動き易さを重視した服装であった。細身であり身軽そうである。また後方の二人は魔導士のようで黒いローブを身に纏っており、顔どころか性別の判断も出来ない。
「貴様、何をしている!?」
剣を抜き駆け寄るレドベージュ。声に反応をした槍使いの男は後方の二人に話しかける。
「まずいな、ここは俺が処理をする。二人はこの場から立ち去ってくれ」
そう指示をすると、何も言わずスッと後方に下がり姿を消す二人。魔法で狙い止めようとも思ったが、距離が離れている事もありそれも難しそうである。
「私たちも行こう。きっと無条件でとっちめても問題ない相手だよ」
「分かりました!」
ラナナの返事が返ってくるなり、自分も槍使いに向かって走り出す湖張。その間にラナナは一度槍使いに向かって魔法を放とうとするが、レドベージュと湖張が向かっているので十分と思える。そこでグリーンドラゴンに近づき治癒の魔法を掛け助ける事に方針を切り替える。
「話を聞かせてもらおう!」
そうこうしている間に男の目の前まで到達するレドベージュ。剣を右下の位置から切り上げようとすると、槍使いの男は最小の動きで素早く槍で突きをしかけてくる。
「む?手練れか!?」
「今のを避けるのか?」
切り上げの動作を急停止し右方向へ小さく飛んで、槍の突きを回避するレドベージュ。想像より早い突きで、相手の技量の高さを把握する。
一方槍使いの方も避けられることは想定外だったようで、少し驚いたようである。
「覇王拳!」
レドベージュに仕掛けた突きによる隙を生かすように白い光弾を放つ湖張。それに反応して槍の柄で防ぐ槍使い。何とか凌いだように思えたが、休む暇を与えないように追撃を仕掛けるレドベージュ。高速で近づきつつ左の拳に光を集めて、顔に目掛けて横方向に振り払う。すると左の頬に直撃を受け右手側に殴り飛ばされる。
「あまりこういう事は趣味じゃないけれど・・・逃がす方が良くなさそうだからね」
つまらなさそうな顔をしながら黄色い光の玉を放つ湖張。その魔法は倒れている槍使いの右足首に停滞する。
「何だ!何をした!?」
その光を見るなり足を振り払う動作をする槍使い。しかし次の瞬間、槍使いから痛みの声が上がる。
「無理に動かさない方がいいよ?動かしたら痛みとしびれが走る魔法をかけたから」
ため息交じりに湖張がそう言うと、恐ろしい形相で睨みを利かす槍使い。
「ふん!」
その直後、剣で槍を強く払い槍使いの手から遠のけると、剣をしまい倒れた男の頭上で立ち止まるレドベージュ。彼も少し雰囲気が怖い。
「何故グリーンドラゴンを狩る?」
「何なんだよ、お前ら」
「質問をしているのは我の方だが?」
そう言った後、再び拳を光らせるレドベージュ。すると男は血相を変えて手を前に出して待って欲しい事を嘆願する。
「待ってくれ、金だ!金の為にやったんだ!」
「金?」
「そうだ、グリーンドラゴンの鱗が大量に欲しいという話があって、良い金で捌けるんだ。グリーンドラゴンを倒せば依頼があった鱗だけではなく、角や牙も手に入り別個に高く売れる。それを目的に狩っていたんだ」
「そんな事でか・・・。そんな身勝手な理由で狩って良いとでも思っているのか?」
呆れたような様子を見せるレドベージュ。すると男は憎悪の表情で睨みつける。
「何だよ、だったら聞くが毛皮の為に動物を狩ったり食料の為に動物を狩るのは良くって、素材の為にグリーンドラゴンを狩るのはいけないのかよ?どれもこれも金の為の狩りだろうがよ」
開き直ったかのように男が難しい事を投げかける。確かにそう言われると何と返して良いのか言葉が詰まってしまった湖張。レドベージュは何と答えるのかが気になってくる。
その中でレドベージュは一呼吸置いた後に答える。
「では聞くがお主の狩りは必要な狩りか? 人が生きるために必要な狩りか?生態系が狂わないように考えて狩りを行っているか?更に問うがグリーンドラゴンは人に害をなす存在か?我の知る限り、この地のグリーンドラゴンは決して人々には手を出さない。むしろいざという時は手助けさえしようという心構えすらしている。つまりお主の狩りは誰のためでもなく、ただ金の為に命を奪っている不要の狩りなのだ。生きるために必要な事と私利私欲の為に行う事の違いは分かるか?そのような事は黙認出来ぬ」
(不要の狩り・・・確かにそこだね)
レドベージュの言葉に納得をする湖張。そう感じていると、ラナナが近寄ってきて言葉を投げかける。
「そもそもラガース王国ではフィルサディア近郊でのグリーンドラゴン狩りを禁止しているはずです。法律の何条かは忘れましたが、そういうのがあったはずです」
「ああ、じゃあ純粋に法律違反だね」
「そうですよ。なんか開き直った事を言ってはいましたが、気にしなくて良いです。胸糞悪い犯罪者は城に突き出しましょう」
「・・・なんか言葉が怖いよラナナ」
湖張が苦笑いでそう言うと、首を傾げながらカワイイ顔をして誤魔化すラナナ。そんな彼女にレドベージュは問いかける。
「グリーンドラゴンは平気か?」
頷くラナナ。
「はい、レディーフェで治療しました。まだ完全ではありませんが一命は取り止めました」
「そうか、良くやったな。ひとまずは安心といったところか」
「いえ、ただとり逃した人たちもいますので安心は出来ませんよ」
「あー」
そう言うなり男に近づく湖張。
「さっき逃がした人たちは仲間?何処に行ったの?」
「お前らには関係ないだろ」
そう言った後、黙秘する姿勢の男。こうなったらもう一度レドベージュに拳を光らせてもらおうかとも思ったが、それはそれで何か違うような気がしたので、依頼を辞める湖張。
と、その時であった。後方から人の気配を感じる一行。ひょっとしたら男の仲間かとも思い警戒をしながら振り返る。するとそこには見た事のある男が数十人の兵士を引き連れてこちら側に近づいてきている。
「あの人って確か・・・」
湖張が呟くようにそう言葉を発すると、迫りくる兵士たちを見つめながら表情を変えずにラナナが反応をする。
「タウン・アッシャーですね」
目の前に現れたのはタウンであった。彼はジッとこちらの様子を伺いながらゆっくりと歩いて近づいてくる。
「また会ったな、お嬢さん方。まあこんな所でとは想像もつかなかったが」
ある程度の距離が縮まったところで話しかけてくるタウン。しかし笑顔は無い。どうやら現状を見極めようとしている様子だ。ただタウンは王子直属の部隊所属で城の兵士との事だ。槍使いの男を逮捕してもらうために丁度良い相手が現れたとも思える。そこで早速、目の前で起きていた事を説明しようとする湖張。
しかし言葉を発しようとした直前、槍使いの男がタウンに目掛けて大声で訴えかける。
「良い所に来た!こいつらはグリーンドラゴンを狩猟しようとしていたんだ!それを止めに入ったが逆にやられてしまった。俺の代わりにそいつらを捕まえてくれ!!」
「はぁ!?」
大きめの声を発する湖張。突然何を言い出すのか理解に苦しみながらタウンに視線を移すと、難しい顔が視界に入る。
「・・・お前は確か特務隊所属だったな?」
「知っててもらえて助かるぜ」
槍使いからそう返されると、彼をジッと見つめるタウン。その様子に不安を感じながら見つめる湖張。
(これって、まずい展開じゃない・・・?)
湖張の心を現すかのように、空が少し曇り始める山頂の広場。風が少し吹き始め、心なしか当たる空気に冷たさを感じ始めた。
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