ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八十六話【旅人の正体】
- 2021.05.02
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
その後、一行は特に会話をすることも無く、足早に町へ戻って来た。
そして町の門をくぐるなり、小走りで数メートル先に移動し周囲を見渡すレドベージュ。
どうやら旅人を探している様子である。
「あの人は一体何者なのでしょうか?」
レドベージュの様子に少し困惑気味のラナナ。何かしらの理由があるにせよ確かにこの展開は疑問である。
「うーんどうだろう?ただレドベージュのやる事には無意味な事は無いと思うから、とりあえず腰を据えて待ってみた方が良いんじゃないかな?」
腰に手を当てながら小さなため息の後にそう答える湖張。
しかしラナナの表情はつまらなさそうである。
と、その時であった。後方から人が近づいてくる気配を感じる湖張。
そこで振り向こうとしたタイミングで声を掛けられる。
「やあやあ、早いお帰りだね?それで王様はどうだったかな?」
言葉の主は探していた旅人の様な男であった。相も変わらず明るく軽い雰囲気である。
「あーいましたよー」
面白くないという雰囲気を出しながらレドベージュに声を掛けるラナナ。
すると彼は小走りで近づき男に話しかける。
「そこにいたか!?緊急事態だ。戯れは終わりだ!」
少し怖い雰囲気で近づいてくるレドベージュ。この様子から、どうやら知り合いであることは確定のようだ。
しかし男は雰囲気を変えずに肩をすくめて苦笑いで対応をする。
「戯れって、自分はいつも真面目ですけどねえ」
「戯れは終わりだといっておるであろう、ゴルベージュ!」
「・・・へ?」
レドベージュの言葉に体を固める湖張。彼の発言に出てきたゴルベージュという固有名詞のせいである。
ゴルベージュとは神話に出てくる天帝という位の高い存在の名で、
塔で教えてもらったレドベージュたちのまとめ役であるリビングアーマーである。
また、湖張の持っている覇王の団扇の元々の持ち主でもあった。
予想だにしなかった存在が目の前にいるのだろうが、中々素直には理解が出来ず、頭がついていけない。
そんな中、ゴルベージュと呼ばれた男の顔から急に笑みが消え、冷めた視線をレドベージュに向ける。
「やれやれ、勝手に正体を暴きおって。このような予定ではないのだがな」
そう言うなり、強く体を光らせる男。その眩しさに顔を背けると、すぐさま光が収まる。
そして再び男に視線をゆっくりと戻すと、そこには背丈はレドベージュと同じくらいで頭が王冠の様な形をした
全身が黄金に輝いているリビングアーマーが存在していた。
その姿は塔で見たゴルベージュそのものである。
「う・・・そ」
思わずそう呟く湖張。ゴルベージュはその言葉を耳にするなり一度視線を彼女に移すが、すぐさまレドベージュの方を向き、彼に話しかける。
レドベージュ同様、目の部分に瞳の様な物が映っているので視線は分かりやすい。
「ここまでしたからには、つまらない話では無いだろうな?」
ゴルベージュと呼ばれた存在は、気品があるような男性の声でレドベージュにそう問いかける。
口調は先ほどまでの軽い者ではなく、冗談を受け付けない管理者の様な雰囲気である。
「二週間前にキュベーグが現れ、ピロペレの動力源を奪い去っていった」
ゴルベージュの雰囲気に動じることなく、簡潔に事を説明するレドベージュ。
「・・・つまらなくはないが、決して面白くはないな」
数秒の間を置いた後に一度視線をそらし感想を述べるゴルベージュ。そして何かを考えた後に再びレドベージュに視線を戻す。
「他に情報はあるのか?」
「残念ながら無いのだ。その後の足取りがつかめぬ」
「そうか・・・そうであろうな」
事は重大なのだろうが、落ち着いた素振りでやり取りをする二人。
その姿をジッと見ていると、視線に気づいたのか湖張を見るゴルベージュ。
そしてすぐさま天帝はラナナに視線を移すと、今度はジッと彼女を見つめている。
「どうかしたのか?」
ポツリと不思議そうに尋ねるゴルベージュ。というのも彼の視線の先には青ざめた顔のラナナの姿があったからだ。
「あの・・・私、ゴルベージュ様と知らずに物凄く失礼な態度を取っていたのでは・・・」
怯えるようにそう答えるラナナ。先ほどまでのムスッとした態度は消滅していた。
「ああ、あれはふざけていたゴルベージュが悪いのだ。
それに見ず知らずの男にはあのくらい警戒してくれた方が我としては安心だ。気にする必要は無いぞ」
ラナナを気遣う様に横から話しかけてくるレドベージュ。するとゴルベージュも軽く頷き話に続く。
「そうだぞ。あれは私で有って私では無い。気にしなくて良い。
それよりレドベージュよ、今後について何かプランは有るのか?」
全く気にしていない様子で事を流し、次の内容に話を進めるゴルベージュ。
それよりも今後の事の方が気になっているようである。
「いや、まだ未定だ。町にお主がいるのだ。
話をしてから決めても良かろうと思ってな」
天帝の質問に考える間もなくレドベージュが簡単に答えるとゴルベージュもすぐさま会話を続けてくる。
「そうか。ではピロペレの本体を保管している場所に行ってみるか?
ここからだとそんなに遠くはない。それにキュベーグが動力源を奪ったのであれば本体にも用があると考えるのが普通だ。
案外と鉢合わせる事があるかもしれないしな」
「ふむ、まあそうするのが妥当な選択ではあるな。我もそうすべきと考えていた」
「そうか。ちなみに二人の力は問題ないか?キュベーグが相手となると生半可な実力では危険ではあるぞ?」
「問題ない。お主の計らいもあり修練場で大きく成長をした。いや、元々強力な力を秘めていたようではあるがな」
「そうか。ではキュベーグの知識はあるのか?」
「それも問題ない。ある程度の事は塔に連れて行き話をしてはいる」
「塔?あの塔に連れて行ったのか?」
「問題なかろう?」
本当に考えて会話をしているのかどうか分からないくらいテンポよく話を進める二人であったが、
そのタイミングでゴルベージュは一呼吸を置く。そして視線をラナナに移した後に「まあ良いだろう」と呟くと
再びレドベージュに視線を移す。
と、その時であった。先ほどまで畏まっていたラナナであったが、何か思うところがあったのか二人のリビングアーマーに対して話しかける。
「あの、一つ良いですか?」
「どうした?」
直ぐさま業務的な雰囲気で淡々と反応をするゴルベージュに怯みそうになりながらも、頑張って意見をするラナナ。
「キュベーグが現れてピロペレの動力源を奪ったのが二週間前なのですよね?
そうしたら仮にピロペレの本体に用事があったのでしたらもう既に行き終えているのではないのでしょうか?」
彼女の意見を聞くと軽く頷くゴルベージュ。そしてすぐさま回答をする。
「そうだな。確かにその可能性はある。しかしその確率はかなり低い話でもある。
というのもウーゾ神が反乱を起こした時に地上に保管していた天の生み出した物は奴らに悪用されない様に保管場所を全て変えておいたのだ。
よってキュベーグは今ピロペレが何処に保管されているのかは知らないはずだ。
そして仮に既に先を越されていたとしても、もしピロペレが無くなっていればキュベーグが持ち出したという事が判明するし、何かしらの足取りを掴めるかもしれない。
つまりその判断が出来る時点で無駄な行動ではない」
「なるほどね」
ゴルベージュの話を聞くと納得をする湖張。そしてその様子をゴルベージュは横目で確認をすると、再び話を始める。
「では決まりだな。だが今日はもう日暮れが近い。今から出ても途中にある町にもたどり着けないだろう。
なので明日の朝に出発とするぞ」
その言葉を聞くと一瞬固まる湖張とラナナ。というのも今の口ぶりからすると一緒に行くような雰囲気である。
「あの、ゴルベージュ様も一緒に行くのですか?」
窺うように尋ねる湖張。思わず口に出てしまった感じである。
というのもレドベージュからは対等に接するように言われてはいたが、ゴルベージュに関してはそうはいかなさそうな雰囲気であり
緊張しそうな旅になりそうと感じられたからである。
「そのつもりだが問題があるのか?」
淡々と答えるゴルベージュ。その様子に首を慌てて横に振る湖張。
「いえいえ、そんな事は無いですよ?ただ急展開で驚いているというか・・・」
その様子を見ると少し考えた後に言葉を出すゴルベージュ。
「まあ突然天帝が同行すると告げられると戸惑うであろうな。
まあそう硬くなるな。きっとレドベージュの事だ。分け隔てなくゆるりとした関係性を築いているのであろう。
そこは一定の理解は示そう。むしろ緊張されると実力が鈍るからな。あまり身構えなくて良い」
「はあ」
「それより今夜は今まで何があったかを教えてもらおうか。
少々興味がある」
「まあそれは我から話そう。その間に湖張とラナナは食事や買い物など自由時間を満喫するが良い。今日も色々あって疲れたであろう」
気を使ってくれたのか二人に自由時間を与えるレドベージュ。
そこで少し湖張は考えた後に、レドベージュに話しかける。
「あーじゃあそうさせてもらおうかな。
ラナナと少し町の中を散策した後に晩御飯を食べてから宿の部屋に戻るね。
行こう、ラナナ」
急な展開だったので頭を整理したいという事もあり、
大人しくレドベージュの提案に乗る湖張。
そしてラナナの手を引いて閑散としている町の中にそそくさと消える事にした。
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