ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百二十二話【遅かった朝の調査】
- 2022.02.13
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
外から小鳥の声が聞こえたと思うと、行きかう人々の声も耳に到着してくる。もう朝かと感じ、目をゆっくり開けると枕の近くまで日差しが差し込んでいることに気が付く。
昨夜はレドベージュから様々な話を聞いた後に眠ることにした湖張。ベッドに入ったとたんに眠りについたようで、気が付いたら一夜が明けていたようだ。
(・・・おかしいな。疲れが溜まっているのかな?)
ベッドから体を起こすなりボーっとする湖張。というのも何か体が重い感じがする。
「おはようございます、グッスリ眠っていたようですね」
その姿に気が付いたのか、ラナナが笑顔で話しかけてくる。彼女はすでに着替え終えており、いつでも出発できそうな感じだ。
「あれ?今日は早いね」
「いえ、湖張姉さまがゆっくりなのですよ。でもまあ別にかまいませんが」
「え?」
その言葉を聞くなり慌てて周囲を見渡す。するとレドベージュが着替えを持って近づいてくる。
「うむ、いつもより深く眠っていたようだな。疲れが溜まっているのか?」
「え?!いや、そんな事は・・・ごめん、すぐに支度をするね」
「いや、かまわぬ。そう急ぐ旅でもないのだ。たまには良かろう」
「駄目だよ、だってロダックを調べに行くんだよね?」
「まあ逃げるわけでもないので大丈夫ですよ」
ラナナにそうは言われたものの、やはり急いで支度をする湖張。
「そうだ、待っていたからお腹もすいたでしょう?ごめんね」
慌てて服を着ながらラナナに話しかけるが、彼女は首を横に振る。
「いえ、実は先に食べてきちゃいました。あまりにもグッスリ眠っていらっしゃったので」
「・・・え?」
ラナナの言葉に驚きの表情を見せる湖張。自分はそんなに眠っていたのかと戸惑いを隠せない。
「・・・全然気が付かなかった。そんなに寝ていたんだ、私」
「お疲れですね」
苦笑いをラナナが見せると、湖張は一つため息をつく。
「はあ、申し訳ない。それじゃあ早速ロダックの所に行こうか」
「え?いえ、大丈夫ですよ。それより湖張姉さまも朝食を」
「いや、私はいいや。なんか食欲が無いんだ」
「え?」
「ああ、食堂で果物のジュースは貰う予定だからそれで良いよ。多分昨夜、食べ過ぎたからだよ。ほら、早く行こう」
そう言ってラナナの背中に回り両手でやさしく押す湖張。そのまま部屋を出ることにする。
昨夜は確かに結構な量を食べていた気もするので、それもそうかと納得をするラナナ。そのまま食堂であっさりとした果物のジュースを飲んでから、ロダックの下へ向かう事にする。
本日の天候は晴れ。夜中のうちに少し雨が降っていたようで地面が濡れてはいるが、今は気持ちの良い青空が広がっている。
このくらい明るいと、昨夜の暗がりでは分からなかった事も分かりやすくなっているのではないかという期待をもって現地に向かう一行。
しかし到着するなり、現場の様子に唖然とする事となる。
「あ・・・れ?」
目の前の光景が予想外のもので固まってしまうラナナ。
「何で・・・解体しているの?」
理由が分からず顔を引きつらせながら呟く湖張。というのもメーサ教の騎士たちが手際よく倒れていたロダックを解体していたからだ。
「むう、これでは調査どころではないな」
少し困った様子を見せるレドベージュ。予想外の展開なので当然ではある。
「ちょっと、何処かにハルザートいない!?」
慌てた様子で周囲を見渡す湖張。ハルザートならば何をやっているのかをすんなりと教えてくれると思えたからだ。
「呼んだか?」
ちょうど良いタイミングで姿を見せるハルザート。湖張はずかずかと近づく。
「ちょっと、朝から何をやっているのよ!?」
解体されているロダックを指さしながら問いかけると、ハルザートはロダックを見ながらゆっくりと答える。
「ああ、ロダックの解体だ。ロダックの羽や嘴は素材として役に立つ。また肉は食用にできる。今回の件で村は損害が出なかったが、我らは大勢動いたのだ。それなりに消耗したからな。今後の活動資金として利用しようというわけだ」
「・・・なるほどね」
その答えを聞くと納得の姿勢を見せる湖張。
慈善事業も軍資金が無い事には成り立たないとは思っていたので当然と感じる。むしろ資金源はこういう所なのかということも分かった気がした。
「確かにロダックの羽は高級布団として重宝されますね」
ロダックを見つめながらラナナがそう呟くと、ハルザートは不思議そうな顔をして尋ねる。
「君は本当に物知りなのだな」
「どういたしまして」
そう言うなり周囲を見渡すラナナ。そしてハルザートに問いかける。
「そう言えば最後に倒したロダックですが、一回り大きかったですよね?もう解体しているようですが、普通とは違う所はありませんでしたか?」
「違うところ・・・か?」
ジッとラナナを見つめるハルザート。そして逆に問いかける。
「何か気になる事があるのか?」
「はい、普通ロダックは火を吐くことがありません。それなのに昨日の展開です」
「・・・確かにあれは妙ではあったな」
少し考えている様子のハルザート。しかしその間など気にしない様子でラナナが再び問いかける。
「それで、何か変わったところはありましたか?」
そこで首を横に振るハルザート。
「いや、体が大きいこと以外は特に違いはなかったはずだ」
「やはりそうですか」
昨夜、レドベージュが調査をしたのだが何も答えが得られなかったので、当然と言えば当然の回答であった。ここで無理を言って解体したロダックの調査をする事も無いと感じ、湖張に話しかけるラナナ。
「そうしたらもう行きましょう。これ以上ここにいても何もわかりません。今から出発をしたら昼過ぎにはフィルサディアに到着できると思います」
「あーもう良いの?」
「はい。なので次に行きましょう」
期待していた事が出来なかったので、つまらなくなったのか冷めた顔になるラナナ。
しかし彼女の言う通り、この場で留まるよりもすぐに次の目的地を目指す方が建設的であるとも思える。
「そっか。まあそうだね。じゃあそうしようか」
そう言いながらレッド君に視線を移す湖張。すると無言でうなずいた答えが返ってくる。
「フィルサディアに向かうのか?」
やり取りを聞いていたハルザートが質問をしてくると、今度は湖張がうなずく。
「そうだよ。その予定。ハルザートは?」
「私は南の方に向かう予定だ。どうやら魔物が暴れているらしい」
「そうなんだ。大変だね」
労うような苦笑いを湖張が見せると、優しい顔になるハルザート。
「いや、これが私の仕事だ。構わないさ。それよりここに来てくれたことは丁度良かった。渡したいものがあるのだ」
そう言うなり、小さな袋を差し出すハルザート。
「これは?」
受け取る前に不思議そうに問いかける湖張。
「少ないが今回の報酬だ。これはロダックから得られる資金を概算で算出して、討伐に関係した者たちの数で割った金額だ。もちろんその数に湖張たちは含まれている。我々メーサ教が独占して収入を得るのも間違ってはいるだろう?」
どうやら律儀にも湖張たちの取り分を用意してくれたらしい。その行為に慌てて首を横に振る湖張。
「いや、良いよ!なんだかんだで村の人のご厚意で食事代や宿代はサービスしてもらっているし・・・」
「いや、しかしだな・・・」
「まあ貰っておけば良かろう」
受け取りに戸惑う湖張に対して、横から受け取ることを促すレドベージュ。
湖張は少し驚いた顔を向ける。
「と、いうわけだ。受け取ってくれ」
そう言うなり湖張に報酬の袋を手渡すと、ハルザートは湖張の目をジッと見る。
「ではまた何処かでな。今度は奢らせてくれ」
そう言うなり彼はロダックの方に移動を始める。どうやら仕事に戻ったようだ。
「まさか受け取れっていうとは思わなかったよ」
ハルザートとの距離が十分空いたところでレドベージュに話しかける湖張。
「ふむ。まああそこで揉めても仕方あるまい。
その金はラナナと半分にして小遣いにすると良い。あっても困るものでもなかろう」
「じゃあ湖張姉さま。フィルサディアではそれでスイーツ食べましょうよ!プチ贅沢です!」
湖張の腕にしがみついて提案をするラナナ。その姿を見るとこれもまあ良いかと思う湖張であった。
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