ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第五十一話【グレルフの群を探して】
- 2020.10.21
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「さて今更なのだけれども、出くわさなかったらどうしよう?」
遠い目でボソリとそう呟く湖張。
現在は村から一時間ほど徒歩で北に進んだ位置である。
朝食を取った後は少し休憩をした後に一行はグレルフの捜索に出発していた。
しかしながら、北の方角に目撃情報があったのでとりあえず向かってみたのだが、
もともとの情報も少なく当然のように空振り気味である。
天気は快晴。周囲には道は無いが草原が広がっており、草の高さも足元くらいで歩き易い場所で立ち止まっている。
「むう、まあ仕方があるまい。
ゆっくりと探せばいいさ。今日が駄目なら明日でも良い」
レドベージュがそうフォローすると、遠い目のまま湖張は返事をする。
「まあそうなんだけどさ、そうしたら明日も宴会になっちゃうよ」
「・・・そうしたらがんばれとしか我は言えぬな」
「あー。まあいいか、ベッドはふかふかで寝心地は良いから」
「うむ、その前向きな姿勢は評価できるな」
「どうも」
軽い雰囲気で返事をした後、ラナナに視線を移すと何か遠くを見つめている事に気が付く。
「うん?何か見えた?」
湖張が横から覗き込むと首を振るラナナ。
「いえ、そういうわけではないのですよ。
ただ闇雲に探すよりも、グレルフの特徴を考えた上で探した方が見つけやすいのかとも思いまして、
何かヒントになるものが無いか探していたのです」
「なるほどね!確かにそれは正解かも。
それで何か良いアイディアあるの!?」
何か光明が差した様な気になったので、期待の眼差しで湖張は問いかけるが、ラナナは首を振る。
「いえ、それはまだ見つけられてはいません。
でも少し休憩がてらグレルフの特徴を踏まえて捜索範囲を決めましょうか」
ラナナがそう提案すると、レドベージュは首を縦に振る。
「うむ、それが良かろう。二人とも水分補給もしっかりするのだぞ」
「はーい」
そう決まると、腰の高さ程の大きな石に並んで腰を掛ける湖張とラナナ。
「そうしましたら、グレルフについて少しまとめましょうか?」
水を一口だけ飲んだ後にラナナがそう切り出すと、湖張は頷く。
「そうだね、グレルフについては少し小柄な狼くらいの事しか私は知らないから、
もっと詳しい事を知っているなら教えて欲しいかな」
するとラナナは少し考えた後に話を始める。
「・・・とは言ったものの、私も魔物の専門家というわけではありませんので大した事は知りません。
とりあえずグレルフですが、群て行動をします。足は速いです。肉食です。時折人も襲います。
狼に近い見た目ですが、日中に行動します。
たまに火を吐きます。ですが毛に引火する時もあるので、
直ぐに火を消す事ができるように水辺の近くを好みます。なので泳ぎは得意です」
「火を吐くのに毛に引火するって・・・何か残念な魔物だね」
呆れた顔で湖張がそう言うと、苦笑いのラナナ。
「あはは、そうとも感じ取れちゃいますよね。
ただ、グレルフが火を吐けるのはもちろん魔法を利用しているからなのですが、
それに加えて体内に可燃性物質を生成する事が出来るからというものもあります。
そしてその物質が体内に溜まりすぎると爆発の恐れがあるので、定期的に毛穴から少量ずつ放出しており、
それが毛にこびりついたままになると引火の原因になると考えられています。
つまり自爆を防ぐためなので仕方がないといえば仕方がないのでしょうね」
「なるほどね。うん、でもやっぱり残念だよ。
でも、今の話で水辺の近くにいる事は分かった。
水辺付近の捜索を中心にやった方が良いよね?」
湖張がそう発案すると、目をそらし考えながら答えるラナナ。
「はい、確かにその考えは間違いではないと思います。
ですが、グレルフは基本的に移動し続けて獲物を探す習性もあるのです。
なので水辺以外も当然のように行動範囲なのですよ。
水の近くを好むだけであって、絶対近くに水辺があるというわけではないのです。
実際のところ、水の無い乾燥地帯にもグレルフの群を目撃したという文献も目にしたことがあります」
ラナナの意見を聞くと、不思議そうな目で湖張は彼女を見つめる。
「・・・本当に専門家じゃないの?無茶苦茶詳しくない?」
湖張の眼差しに少し焦りながら両手を振って否定をするラナナ。
「あ、いえそんな事ないですよ。少し本で読んだだけです」
「それでも今の私たちにとっては十分助かる知識量だよ。
・・・さてと、これらを踏まえた上でレドベージュはどうしたら良いと思う?」
今度はレドベージュに意見を求める湖張。
すると彼は西側を見つめながら答える。
「ふむ、特に策を練る必要は無いと思うぞ?」
「何でよ?」
何も考えていないような雰囲気でサラリと答えるレドベージュに対して、腰に手を当てて不機嫌そうに尋ねる湖張。
すると彼は左手で西側を指さし答える。
「いや、あそこにグレルフの群が見えるからだ」
「へ?」
その言葉に反応するなり、西側に目を移す湖張とラナナ。
すると20匹程のグレルフの群が遠くにいる事を視認する事が出来た。
「ちょっと、それを早く言ってよ!」
「いや、我も湖張に意見を求められたタイミングで発見したのだ。悪く思うな」
いきり立つ湖張をなだめるレドベージュ。
そうこうしている間に、ラナナは周囲を確認している。
「どうしましょう、とりあえずあの群以外には近くにはいないようです。
グレルフは一つの群でも数匹ずつ分かれて移動する時もあるのですが、今はそうではないようです。
ただ、この距離では少し離れているので追いつくのにも一苦労ですね」
ラナナがそう切り出し二人に意見を求めると、湖張は群をジッと見つめる。
「何かゆっくりと歩いているだけだね。何処か目的地がある訳でもなさそうだよ。
時折地面の臭いも嗅いでいるようだし、獲物を探しているのかもね」
「うむ、そのようだな」
「レドベージュもそう思う?」
「うむ」
そう確認をすると、肩を回しながら群に向かって歩き出す湖張。
「ちょっと湖張姉さま、どうするつもりなのです!?」
ラナナが慌てて呼び止めると、湖張は何気ない顔をして振り向く。
「うん?このまま近づいたら襲ってくるかなーって思って」
「え!?」
「まあ驚くよね。本当だったら作戦を立てて遠くから不意打ちが一番安全なのだろうけど、
そうしたらこの前倒したダイアントと同じように魔法で終わっちゃうじゃない?
でも今日の目的はあくまで各自がどのような動きをするのかを確かめて相互理解を深める事だよ。
なのだから真正面からノープランでやってみないとね」
「・・・無茶をしおる。まあ良かろう」
半分呆れながらも承認をするレドベージュ。
その様子を見ると、ラナナも覚悟を決めたようで両手で長い杖を握りしめて戦う姿勢を見せる。
「よし、じゃあ行きますか」
小さな笑みを見せて湖張がそう言うと、三人はグレルフの群に向かって草原を歩き始める。
そして50m程の距離まで近づくと、群は一行に気づき警戒した様子でこちらを見つめている。
「流石に気づかれるよね。音や匂いでもっと早く気づかれるかと思ったけど、意外と近づけたかな」
「おそらく風のせいであろう。グレルフの方向から風が吹いているから、風の音と向きで我らの存在の感知に遅れたのであろう」
「なるほどね」
特に警戒をするわけでもなく、レドベージュと横並びで歩きながらやり取りをしていると、
数匹のグレルフが警戒の為にこちら側にゆっくりと向かってくる。
その様子を確認するなり湖張は一度立ち止まり腰に手を当ててグレルフを見つめる。
「さてと、始めますか。じゃあ今日はとりあえず各自、思うように行動してみよう!」
そう言って一呼吸置いた後、全速力で突進をする湖張。
それに反応をするようにグレルフの群は敵意を湖張に対して一斉に向け始めた。
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