ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百十七話【ロダックの討伐へ】

           

一夜明け、準備を整えた後に宿屋の外に出る一行。すると、メーサ教の騎士たちが村の広場に集結している。
その表情は硬く、緊張感が周囲を包み込んでいる。

「そろそろ出発するのかな?」
様子を伺う湖張。周囲を見渡すと投石用の石や弓矢を台車に乗せて村の外に運んでいる騎士の姿が目に入る。

「ほら君たち。今日は何が起こるか分からないんだ。家に入っているんだ」
横から白い鎧を身にまとった中年の騎士が近づき、湖張たちに注意を促してくる。どうやら村民と間違えているようだ。
「いえ、私たちもロダックの討伐に同行するのですよ。村民ではありませんよ」

「何を言っているんだ!」
何気なく答えた湖張に一瞬驚きの表情を見せるが、すぐさま一転して怖い表情で叱責してくる騎士。
「これは遊びでは無いのだ!怪我では済まないぞ!」

大きな声が周囲に響く。その影響で周囲にいた人々の注目を集めてしまった。どうやらハルザートには話がついてはいるが、他の騎士には周知されていないらしい。
「ああ、大丈夫ですよ。私たち、これでも腕っぷしは強いですから」
「そういう問題ではない!君たちみたいなお嬢さんを戦の場に連れていく事なんてできない!酷い目に合わせてしまったら悔やんでも悔やみきれないじゃないか」

(まいったな・・・)
困り顔の湖張。どうやらこの騎士は声が大きく迫力はあるが悪人ではないようだ。本気で自分たちの事を心配してくれているように見える。
その気持ちを無下にするのも気まずいと感じていると、横から見慣れた顔が近づいてくる。ハルザートだ。

「どうかされましたか?・・・と聞いてみましたが討伐についていくと言っているので止めているといったところでしょうか?」
敬語で白い騎士に話しかけるハルザート。普段とは違う口調なので、相手は目上の人のようだ。
それに難しい顔で答える騎士。

「そうなんだよハルザート。君からも何とか言ってくれ」
「止めたら腕っぷしが強いから平気と言っていました?」
「何で分かるんだ!?」
目を丸くして反応する騎士。そしてハルザートは湖張に視線を移すと小さく笑う。

「ちょっと、なに笑っているのよ?」
腕を組んで不機嫌そうな顔を見せる湖張。
「いや、お決まりの言葉が出たなと思ってな」

そう言うなり騎士に再び話しかけるハルザート。
「ご心配ありがとうございます。ですが彼女らは私の知り合いでして腕がとても立ちます。
問題ありませんよ。むしろ我々の助けになります」

「そうなのか?」
驚いた表情を見せる騎士。
「はい、先日ですが村に迫るイーサラスを私と共に討伐しました。実績も問題ありません」
「ぬう」

そう聞くと少し考える騎士。そして一礼する。

「これは失礼した。今日はよろしく頼む。だが無理はしてくれるな。いくら強くても傷つかれると心が痛む」
「ええ、そうさせてもらいますね」
笑顔で湖張が返すと、騎士はその場を後にする。

「ありがとうね」
騎士の後姿を見ながらハルザートに礼を言う湖張。首を横に振るハルザート。
「いや、礼には及ばん。むしろ今日はこちらこそ頼む。特に怪我人の治療だ」
「治療?」
「そうだ。ロダックは強力な魔物だ。おそらくメーサの騎士達も多く傷つくだろう。
怪我は仕方がない。だが命を落とす事は防ぎたい」

「ふむ」
ハルザートの言葉を聞くと、何かを思ったような素振りを見せるレドベージュ。
その声が聞こえるとハルザートはレドベージュを見る。

「そういえば今日は金色の鎧はいないのか?」

(あ、ゴルベージュ様の事か・・・)
前回、会った時はゴルベージュがいたが、今回はいない事に今更ながら気が付いた湖張。何て言うのか決めていなかったので、少し焦る。

「あの者は研究施設に帰った。今は我だけだ」
そうこう迷っているうちに返答するレドベージュ。無難な回答をスラリと答える。
「そうか。治療できる者が多ければ多いほど助かるのだが、まあ良い」

その言葉を聞くと、確認を取る湖張。
「ひょっとして、私たちを治療班として考えている?」
その言葉に首を横に振るハルザート。

「いや、そんな事はない。むしろそれをお願いしても聞いてはくれないだろう?なので被害が出ないうちに短時間でロダックを仕留めてもらいたい。結果としてその方が被害は少なくなると考える。だが、もし被害が出た時には治療を頼みたい」

「そう言う事か。分かったよ」
ハルザートの希望を聞くと納得した素振りを見せる湖張。

「では私は他の準備がある。あと30分ほどしたら出発をする。湖張たちもその時になったらついてきてくれ」
「分かった」
そう言葉を交わすと立ち去るハルザート。一行のそばから離れるなり部下と思われる騎士達に何か指示を出している。

「どうやら、もう少しメーサ教について調べる必要があるようだな」
遠く離れたハルザートの背中を見ながらレドベージュがそう言うと、湖張は視線を移す。
「何でそう思うの?」
「ハルザートといい先ほどの白い騎士といい、どうも悪人に思えぬ。始めは胡散臭い悪党じみた団体のような感じがしていたが、彼らを見ていると一概にそうは思えなくなってきた」

「まあ、そうだよね。なんか本気で人を守ろうとしている。寧ろ王国の方が胡散臭いと感じるくらいだよ」
「なんだかよく分からなくなってきましたね。でも悪事を働いていた事も事実です」
「色分けされたグループにより・・・なのかもしれぬな」
「その線も含めて調査ですね」

「うむ、そうだな。だが兎にも角にも今日はロダックの事に集中するぞ。油断をすると被害は大きくなる」
「そうだね。今日も頑張ろう!」
晴れた朝の中、気を引き締める一行。程よい緊張感を持つことで後悔する結果を残さないように心の準備を行った。

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