ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百十八話【ロダック討伐作戦】
- 2021.12.05
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
その後、準備を整え、村を出立した討伐隊。
普段は三人だけでの行動だったのだが、今日は大世帯である。湖張たちは隊の一番後ろの位置につけて全体を見渡せたので、規模の大きさをより実感することとなった。
メーサ教の騎士の人数は軽く30人は超えているのだが、全員隊列を乱すことなく行動をしている。どうやら行軍の訓練も受けているようだ。これが国の騎士ではなく私兵だというのであるから驚きである。
ハルザートは隊の先頭の方に位置し、全体を指揮しているようにも見える。やはりメーサ神の剣という異名は伊達ではないようだ。ただそのおかげで今は気軽に話しかけられそうにもない。
「何か物々しいね、この移動は」
黙々と歩く隊の最後尾で大量の矢と投石用の石を見ながら湖張がそう言葉にすると、隣でうなずくラナナ。
「そうですね、でもロダックの群を倒しに行くのです。このくらいは必要ですね」
「そんなに強い相手なの?ハルザートは簡単に倒していたけど」
腕を組んで問いかける湖張に大きな瞳で答えるラナナ。
「まあ湖張姉さまならば問題ない相手ですが、世間一般的には危険な魔物ですよ。特徴は前にもお伝えした通り大きくて力も強く、飛行速度も速い鳥型の魔物なので厄介です。そして何より今回は数が多いのです。3、4体くらいでしたら問題ないでしょうが、それ以上ですとやはり人手は必要ですよ」
「そっか、そりゃそうだよね。確か13体が目撃されているんだよね?」
「はい、さっき騎士さんに聞いたらそう言っていましたね」
「13かー」
空を見上げながらつぶやく湖張。
「何を考えているのですか?」
「いや、あの大きい鳥が13体で、こっちは大勢でしょ?
戦う場所がどのくらい広いか分からないけれど、ぐちゃぐちゃに入り乱れそうだなって」
「あー、そうなると広範囲の魔法は使えないですね」
「まあそのための投石と弓矢なのかな?」
「そうでしょうね。あとはしっかり効果があれば良いのですが」
「やってみないと分からないね」
そう会話をしながら歩いていくと、30分ほど山を登ったところで隊の前進が止まる。周囲は木々に囲まれてはいたのだが、少し先には開けた空間があるように見える。遠巻きではあったが、ハルザートが手を挙げる仕草を確認することが出来たと思うと、騎士たちは無言のまま各自が行動を起こす。どうやら事前に打ち合わせをしていたようだ。
「あーそういえば詳細な作戦は聞いていなかったね。どうしたら良いか分からないから、私たちはこのまま待機かな?」
忙しなく動く騎士達を目の前にしながら呑気な雰囲気で様子を窺う湖張。
「そうですね、むしろ私たちが下手に動くと邪魔になりそうです」
ラナナが同意をしてから間もなくすると、開けた空間の手前で配置につき終わる騎士達。弓矢を構える者や投石機の前で身構える者、そして槍や剣を構える者の3グループに分かれている。
「とりあえず私たちも近くに寄ってみようか」
小走りで近づくと、開けた空間の先は木々がほとんどない岩山の空間で、10m程崖を下った場所は平らな広場になっており、多くのロダックがくつろいでいる様子が目に入る。
「うわ、いっぱいいるね」
巨大な鳥の魔物が群がっている姿は圧巻で、小声ではあったがまるで観光地で珍しい物を見たかのような雰囲気で言葉を発する湖張。それにうなずくラナナ。
「そうですね、こんなに群れているロダックを見るのは初めてですので貴重な光景です。でも、何か話と違いませんか?」
周囲を見渡しながら発言をするラナナ。
「うむ、数が少ないな」
レドベージュがぼそりとそう言うと、急いでロダックを数えだす湖張。
「そうだね、7体しかいない。13じゃないね」
「誤情報・・・だったのでしょうか?」
「ふむ・・・」
首を傾げている三人。しかしメーサ教の騎士達はそんな事など気にしていない様子で、今にでも飛び掛かりそうな殺伐とした表情をしている。
(何か怖いな)
騎士達の雰囲気に小さなため息をつく湖張。これから自分たちも共に戦う予定なのだが、騎士たちとの温度差が少し心配になる。
そうこうしていると、右手を高く上げるハルザート。動作に合わせて弓を弾く騎士達。投石機も発射体制に移っている。
「始まるぞ」
レドベージュの呟きは小声だったので聞こえるはずはないのだが、まるでそれが合図であったかのような絶妙のタイミングで腕を振り下ろすハルザート。
すると騎士たちは一斉に弓矢と投石の雨をロダックの群に向かって放つ。
「うわ・・・これは酷い」
思わず顔をしかめる湖張。数多もの矢と石が広場でくつろいでいたロダックに対して不意打ちで降り注ぎ、次から次へと仕留めていく。まさに一方的という言葉そのものであった。
「これは初手で終わりそうですね」
戦場の様子を見つめながら呟くように分析をするラナナ。
そうこうしている間に、目の前のロダック達は飛び立つ間もなく全てがその場で倒れる。討伐はいとも簡単に完了してしまった。
再び片手を挙げるハルザート。それが攻撃中止の合図だったようで、一斉に矢と石の雨が収まる。そしてジッとロダックを見つめる。
「終わりだな」
一言だけ発するハルザート。すると隣にいた青い鎧を着た騎士が大きな声で全体に言葉を発する。
「我々の勝利だ!」
勝利宣言に湧き上がる騎士達。今までの殺伐とした無言の状態が嘘であるかのような雄叫びにも近い歓声が周囲に響く。緊張の糸が切れたようである。
「これは・・・何か凄いね」
「そうですね。これはこれで少し怖いです。でも被害が出なくて良かったです」
「とは言ったものの、何もしないまま終わったから素直には喜べないけどね」
雄叫びで声が聞こえづらい中、苦笑いを湖張が見せる。その中でレドベージュに視線を移すと、何かに引っかかっている様な雰囲気を出している。
「どうかしたの?」
不思議そうに窺う湖張。すると彼は周囲を見渡しながら答える。
「うむ、どうしても数が少ないことが気がかりでな」
「数が?まあ確かにそれはあるけど、そもそも事前情報が間違いだったかもしれないよ?」
「うむ、そうだと良いのだがな。確かに周囲には他のロダックの気配がない。誤情報だったのかもしれんな」
そう言うと、再び倒れているロダックの群に視線を移すレドベージュ。ジッと見つめてから二人に言葉を伝える。
「フィルサディアに向かう予定ではあったが、数日はこの村に滞在するぞ」
「そうですね、少し様子を見た方が良いかもしれません」
レドベージュの考えに同意をするラナナ。そして彼女も周囲を見渡す。
「ロダックとは意外と知能が高い魔物なのです。ひょっとしたらここに来る騎士達を見て数体は逃げ出したのかもしれません」
「つまりまだ生き残りがいるという事?」
「はい、その可能性は十分にありえます」
「なるほどね、まだ終わっていない可能性があるということか」
湖張は腕を組んで小さくため息をつくと、勝利を喜ぶ周囲の騎士達を見渡す。
「この人たちはどうするのかな?・・・まあ私たちだけの方がやり易いかもね」
その声が聞こえるはずもなく、喜びが続く騎士達。その様子を冷静に見つめる一行。そしてハルザートも同様に遠くで静かに騎士達を見つめていた。
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