ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百九話【建物の奥にある扉の中】
- 2021.10.10
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
コボーニの案内で建物の奥にまで進むと、隣の部屋に続くような扉が目に入る。位置的にここから山の中に続いている様である。扉には立ち入り禁止の張り紙が貼ってあった。
「この奥にアールスリーが?」
湖張が扉を見つめながら質問をすると、「そうだよ」と簡単な返事が返ってくる。
「随分と簡単な封印のようですね」
「ふむ」
危険な魔物を封印したという割には、あまりにもお粗末な扉だったので三人は少し戸惑ってしまう。
「そんな事ないよ?だってほら、鍵だってかけているんだぜ?」
三人の微妙そうな雰囲気に疑問を持ったコボーニは自慢げに金属製の鍵を目の前に出す。
それはよく見なくても、ごくありふれた普通の鍵であった。
「え・・・ああ、うん」
「まあ良いや、とりあえず開けるよ」
湖張の微妙な反応に首を傾げつつも、特に躊躇する事なく鍵を開けるコボーニ。
警戒心が無く本当に大丈夫か不安ではあったが、声を掛ける間もなく目の前の扉が開いてしまった。
「アールスリーがいきなり飛び出してくるなんて事はないよね?」
この期に及んで確認を呟く湖張。するとコボーニは何気ない顔で答える。
「ないよ。だってアールスリーは奥の実験場にいるから」
「うん?ここが実験場じゃないの?」
首を横に振るコボーニ。
「違うよ、この先は研究所。その先が実験場」
「・・・うん?」
何か良く分からない事になって来たので頭に疑問符が点灯する湖張。
するとコボーニは先に進み始める。
「とりあえずついてきてよ。案内するからさ」
危険など無縁の様な感じで進むコボーニ。その様子から安全を信じついていく一行。
扉の奥は5メートルほどの通路になっており、目の前には鉄製の扉で塞がれている。
その扉を違う鍵で開けるコボーニ。すると目の前には暗い空間が広がっていた。
「ちょっと待ってね、ここをこうして・・・」
鉄製の扉の隣にあるレバーを上に押し上げると、目の前の暗闇が一気に明るくなる。まるで一斉に遮光カーテンを開けて日の光を取り込んだ様な感じで慣れていない目は眩しさを感じた。この場の光も魔法の装置により照らされているようだが、家の中とは違い強い光で周囲を照らしている。
目の前の空間は広い空間で、大きな机が三台並べられている。椅子もいくつかあり、ここで研究を行っていたのかもしれない。
また、部屋の奥には扉があり、先に繋がっていそうだ。
「ここが研究所?」
湖張が尋ねると、まるでここが自慢の場所かのような雰囲気で楽しそうに答えるコボーニ。
「そうだよ!ここは皆が集まって話し合いをする場所。ご飯もここで食べていたよ」
それを聞くなり周囲を見渡すラナナ。何かを探している様子だ。
「・・・とはいったものの、机と椅子以外は何もないのですか?」
「そりゃそうだよ。研究者の兄ちゃんたちは出ていったんだもん。片付けていったよ?」
「あーまあそうですよね」
苦笑いを見せるラナナ。研究所を封印と言っていたので急遽放棄したわけでは無く、退居に十分な時間をかけられたという事と理解をする。
「すると奥にある扉の先が実験場?」
質問をする湖張。すると首を横に振るコボーニ。
「そうなんだけれども、すぐではないよ。扉の奥は廊下で研究者の兄ちゃんたちが寝る部屋だとか小さな研究室だとかトイレだとかそういう部屋がいくつも並んでいるんだ。
その先にようやく実験場。だからこの先の廊下までは安全だよ」
「なるほど、家の奥が居住区を兼ねた研究所だったというわけですね。
外の空気は吸えませんが、ここに籠る事で研究には没頭できそうです」
コボーニの説明を聞くなり感心した様子で呟くラナナ。腕を組んで周囲を見渡し、研究所の作りをチェックしているようだ。
「他の部屋も全て片付けられているのか?」
レドベージュが確認を取ると、少し考えた後に答えるコボーニ。
「うーん、ほとんどないと思うよ?そりゃ全部を運びきれていないとは思うけど、大したものは残っていないね」
「ふむ、まあそうであろうな。では奥の実験場とやらに案内してもらえるか?そこにアールスリーがいるのであろう?」
「わかった!」
そうやり取りするなり、扉を開けて先に進むコボーニ。
後をついていくと、話の通りいくつもの部屋があった。
途中にあったいくつかの部屋を少し覗いてみるが、確かに大したものは残っていなさそうである。退居は完璧の様子だ。
そうこうしている間に突き当りにある一際頑丈そうな扉の前に辿り着く一行。
重厚感が溢れる金属製の扉で、鍵穴どころかドアノブや取手もなく、どのように開ければ良いのか分からない作りであった。
「この奥にアールスリーがいるの?」
扉を見つめながら湖張が質問を投げかけると、ここに来てようやく警戒したような顔つきで答えるコボーニ。
「そうだよ。この奥にアールスリーはいるよ」
「・・・ところでこの扉はどうやって開けるの?」
湖張が続けて質問をすると、扉の数か所を指さして説明をするコボーニ。
「この扉には三つの仕掛けがあって、それぞれに一定の魔力を注入してから中央の銀色の丸い場所を三回ノックすると開くよ」
「何か奇妙な作りだね?」
「誰でも気軽に入れないようにしているんだ。それこそ知っている人じゃないと入れない。
そして中から出る時もこのやり方を知らないと出られないよ」
「なるほどね。ここの扉は随分と厳重に閉ざしているんだね」
小さく息を吐いて湖張がそう言うと、緊張したような顔で言葉を返すコボーニ。
「そうだよ。だってアールスリーは危ないんだからこのくらい頑丈に封印しておかなきゃ」
今までの明るさが嘘の様な警戒ぶりに少し不安を感じてくる。
このまま先に進んで良いのか少し心配になっては来るが、何もしないで帰る訳にもいかなさそうである。
「さてもう一度確認だけど、とりあえず入ってみる?」
視線をレドベージュに移しながらそう尋ねると、彼は小さく頷く。
「うむ、準備さえ良ければ入ろうと思う。二人は大丈夫か?」
「私は平気。ラナナは?」
「大丈夫ですよ」
少し緊張するような雰囲気なのかもしれないと心配し二人の様子を確認するレドベージュ。しかし特に動じる様子は無いようだと感じると、コボーニに話しかける。
「大丈夫そうだ。魔力を注入してノックで開くのだな?」
「そうだけど・・・本当に大丈夫?」
心配そうにのぞき込むコボーニ。
「大丈夫だ。心配はいらないさ」
そう告げると扉を開ける手順を踏むレドベージュ。
すると重く閉ざしていた扉がゆっくりと開き始めた。
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