ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百三話【待ち構える不気味な笑み】
- 2021.09.08
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
村に入ってからというもの、結局ゴルベージュの予想通りデスピエロの襲撃は無かった。
結果的に何事も無く過ごす事が出来たのではあるが、それでもいくら天帝と天将が警戒していてくれるとはいったものの、最初の内は気が休まらなかった。
しかしながら、寝る時間ともなると眠気が勝ってしまいスッと眠ってしまった湖張。やはり疲れていたようだ。それはラナナについても同じで、直ぐに眠りにつけたようだった。
ちなみにその様子を見たレドベージュは安心をしていた。緊張して眠りにつけなくて、体調を崩す事を危惧していたからだった。
一夜が明けると、軽く朝食を取った後に休む間もなく出立をする一行。
村の中までは襲ってこないという事が何となく実感できたので、四六時中警戒しないといけないわけでは無いと思え、昨日とは違い今日は少し気楽である。
とはいったものの、村から一歩でも出るといつ襲われるか分からない事は相変わらずである。
「さてと、今日もまた突然襲ってくるのかな?」
村を出るなりそう呟くように話しかける湖張。
曇り空の暗いイメージも合わさり、少し不安そうと取らえてしまったレドベージュは、心配そうに答える。
「不安か?でも昨日の奇襲ですら回避できたのだ。きっと大丈夫さ」
「んーまあそれもそうかな。とりあえず警戒をして進む。それしかないよね」
「うむ、ただ少しでも違和感を感じたらすぐに反応するのだぞ?」
「うん、そうするよ」
そんなやり取りをしながら進み続ける一行。
近くの山の中とは聞いていたが、まずは街道を進んでいた。
なるべくは歩きやすい街道を利用し、途中から道を外れて山の中を進む流れだ。
幅が広くて歩きやすい街道。
周囲には草原が広がっており、少し離れた場所には山が見える。
隣の町までは平坦な街道を歩いて行けば着くのであろうが、
本日は途中から道を外れて山に向かう事となる。
どの山かはまだ分からなかったがそう遠くは無いとの事なので、もう視界に入っているのかもしれない。
少し肌寒い風が山の方角から流れてきているなと感じていると、
ラナナはカバンから外套を出して身に纏う。
この様な時にこそ使いどころなのかもしれないが、何時デスピエロとの戦闘になるか分からなかったので、外套を纏わず少しでも動きやすい格好でいる事を選ぶ湖張。
風に吹かれる小さな花を見ながら寒さに負けないように気を引き締める。
そうこうしているうちに、林が街道に隣接しているエリアに差し掛かる。
林の奥は木で視界が遮られて如何にも何かが出てきそうである。
早くこのような場所からは立ち去りたいと感じていると、ゴルベージュは立ち止まり話しかけてきた。
「よし、ここに入るぞ」
「へ?この林に入るのですか?」
「ああ、そうだが・・・何か問題があるか?」
警戒しないといけなさそうな不気味な雰囲気だと思った場所に、まさか入っていく事になろうとは思わなかった湖張。思わず聞き返してしまうが、ゴルベージュにとっては取るに足らない事のようだ。
「ああ、大丈夫です。ただ何か出てきそうな雰囲気だなと思っただけで・・・」
首を横に振って苦笑いで返す湖張。その様子を見るなり林に目を移すレドベージュ。
「まあ確かに潜伏するにはうってつけの場所ではあるな。
湖張が警戒する事も頷ける。でもまあ行くしかあるまいて」
レドベージュがそう言うと、今度はラナナが言葉を発する。
「この林を抜けた先にある山にピロペレが?」
頷くレドベージュ。
「うむ、その通りだ。林を抜けて少し山を登ると洞窟があってな。
その中に保管をしている」
「なるほど、するとどうしてもここを通らないと駄目なのですね」
ラナナがそう聞き返すと、再び頷くレドベージュ。
「うむ、そうなのだ。迂回するにしては遠回りになってしまうからな。
まあ今日はここまで問題なく来られたのだ。この先も大丈夫であろう。
実際のところ、ぱっと見た感じだと特に問題は無さ・・・」
会話の途中で違和感のある止め方をするレドベージュ。
それが不思議に感じた湖張はレドベージュの視線の先に目を移す。
「・・・なんかさ、レドベージュって本当に索敵が上手だよね」
半分呆れ顔でぼやく湖張。というのも、視線の先には直立したデスピエロが一人だけでこちらをジッと見つめていたからだ。
(大丈夫、恐怖は感じない)
実際に目の前に現れても特に怖気ずく事は無く、意外と頭は冷静であった。
どうやら警戒をしているうちに、いつ襲われるか分からないという意識が先行してしまっていて、知らず知らずのうちに必要以上の心配をしていたようだった。
そしてゆっくりと腰に携えていた団扇を手に取る湖張。
「むう・・・こんな予定ではなかったのだがな」
続く様に抜剣をするレドベージュ。そして湖張とラナナに話しかける。
「いけるか?」
「当然」
レドベージュの問いにすぐさま答える湖張。
一方ラナナは何かを考えているようで、難しい顔をしながら長い杖を両手で強く握りしめている。そして気になる事を口に出す。
「これは良くない状況じゃありませんか?」
「え?」
不思議そうな声の湖張の隣で小声で考えを伝え始めるラナナ。
「ここはピロペレを保管している場所の近くなのですよね?
それなのにここで待ち構えていたという事は、既に見つかっていると考えられませんか?」
「あ!?」
ハッとした湖張がそう声を出す。そしてそのタイミングで後ろからゴルベージュが話しかけてくる。
「これは面白くは無いな。・・・先を急ぐぞ」
そう告げるなり、右手を目の前のデスピエロにかざすゴルベージュ。
そして目に見えない衝撃波を放つと、デスピエロの姿はパッと消えてしまった。
それはまるで、人の姿を映している水面に石を投げ込んだら瞬時に消えてしまう様な雰囲気であった。
「え!?倒したわけでは無いよね?」
疑問を口にする湖張に頷いて答えるレドベージュ。
「うむ、あれは幻影だったようだな。きっとまだ林の中に潜んでいるのであろう」
「どうする?」
「ここで立ち止まる暇はない、先を急ぐぞ」
レドベージュに指示を仰いだ湖張の後ろから、ゴルベージュがそう告げながら躊躇せずに林の中に入っていく。
その様子を見てため息をつくレドベージュ。そして湖張とラナナに話しかける。
「まったく無茶をしおる。だが急いだほうがいい事も事実ではあるな。
警戒をしながら進むぞ。何が起こるか分からないからな」
その言葉に頷く湖張とラナナ。そして一行は不気味な雰囲気の林の中に足を踏み入れるのであった。
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