ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百二話【逃げ込むように入る宿の部屋】

           

その後は特に何事も無く目的地である村に到着した一行。
周囲を警戒しながらの移動であったので普段より歩く速度は落ちていたが、
日暮れ前までには到着する事が出来た。

村の入り口を通過するなり寄り道をせず宿屋に向かい、そそくさとチェックインを済ませ部屋に入る。
急いで扉を閉めたせいか予想以上に大きな音が部屋中に響く。
そしてその音が合図になるかのように思わず大きく息を吐いてしまう湖張。
ようやく落ち着けそうと感じたからだ。
それはラナナも同じようでくたびれた様子でベッドに腰掛ける。

「ふむ、大分疲れたようだな」
二人の様子を見てレドベージュが話しかけると頷く湖張。
「そりゃあんな不気味なピエロがいつ襲ってくるか分からない状況だもん。疲れるよ」
「そうですよねー」
湖張の意見に賛同しながら、そのままベッドに横になるラナナ。
どうやら座り続けるのも億劫のようだ。

「周囲に何か感じるか?」
窓を開けて外を眺め始めるレドベージュに話しかけるゴルベージュ。
「いや、いたって平和な空気だな。
とりえずは一安心といったところであろう」
「そうか」

二人のやり取りを聞くなり心配そうに尋ねる湖張。
「本当に大丈夫なのかな?町の中で襲われたりしないかな?」
首を横に振るゴルベージュ。
「絶対に大丈夫とは言い切れないが、まあ大丈夫であろう。
それに私とレドベージュは休まなくても平気だから警戒を常にしておくのだ。安心すると良い。二人は休めるときに休んだ方が良い」
その言葉に気まずそうな表情を見せる湖張。
「ゴルベージュ様たちが見ていて下さるのでしたら心強くはありますが、
何か申し訳なさがありますね・・・」
「なに、気にすることは無いぞ。
むしろ毎日全力を出せるようにコンディションを整えるのも二人の役目だ。
私たちは休まずとも問題ないのだ。適材適所と捉えておくのだ」
「うーん、そうですか」
戸惑いながらそう返事をする湖張。

「さてと、では今のうちに明日の予定を伝えておこうか」
心配そうな湖張をよそに、次の事を伝え始めるゴルベージュ。
天帝の言葉に耳を傾けるべく注目をする一同。

「レドベージュは知っていると思うが、ピロペレが保管されている場所は
もう目と鼻の先だ。なので明日は朝一番で村を出て、そこに向かおうと思う」
「え!?」
ゴルベージュの言葉に驚きを見せるラナナ。寝ていた体を勢いよく起こし、ベッドに腰を掛けた姿勢でゴルベージュを凝視する。
予想だともう少し離れた場所に保管されていたと思っていたのだが
意外と早く到着出来るようだ。

「保管場所はどんなところなのですか?」
興味津々で問いかけるラナナ。するとゴルベージュは北を指さす。
「この方角にある山の中の洞窟だ。
その奥深くにピロペレを保管している」
「山の中ですか?すると荷物は置いて出かけた方が良いです?」
ラナナの言葉に少し考えるゴルベージュ。そして首を縦に振る。

「そうだな、そんなに上の方まで登らないが、確かに荷物は少ない方が良いかもしれない」
「じゃあ明日もこの宿に泊まる方向ですね?」
「そうする方が良いな」
そう言うなり、レドベージュに顔を向けるゴルベージュ。
「さて、今日はくつろぐ時間としよう。いつものを渡さなくて良いのか?」
「いつもの?」
ゴルベージュの言葉に首を傾げる湖張。一方レドベージュはため息を一つつく。
「まったく、お主にそう言われるとは思わなかったぞ」

そう言うなり湖張とラナナにタオルを渡すレドベージュ。
「ほれ、とりあえず汗でも流してくるのだ」
「ああ、これね」
湖張は苦笑いでタオルを受け取ると、続けて話しかけてくるレドベージュ。

「風呂に行くついでに店主に明日の宿の予約も頼んでおいてくれるか?明日もここに宿泊になったからな」
「分かった。伝えておくよ」
そう返事をすると、ラナナの前に手を差し出す湖張。

「ほら、とりあえず汗を流しに行こう。
ちょっと気分を変えよう」
「・・・そうですね、分かりました」
差し出した手を握られると湖張はラナナをゆっくりと引いて立ち上がらせる。
そして二人は入浴の支度をした後に疲れた様子で部屋を後にした。

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