ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百十三話【ショッピングの作戦会議】
- 2021.11.06
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
研究所を出立した後は体力の消耗があったこともあり、普段よりも速度を落として街に向かうことにした。レドベージュは二人を浮かせて移動を提案したが、それは何か申し訳ないのと、人の目に触れた時に奇異の目で見られる事が嫌だったので歩くことを選択した。
その結果、街に到着したのは夕暮れ時になってはしまったが、暗闇での移動を避けることは出来た。大きな門をくぐると、話に聞いていた通り他の街とは変わった雰囲気が広がっていた。建物一つにしても特殊な形をしており、それぞれがこだわりを持ったデザインをしている。ありとあらゆる趣向が入り乱れた装飾が街のいたるところに施されており、ユニークで華やかな街並みであった。
街に敷き詰められた石畳もカラフルで見ていて面白みを感じる。時にはガラス張りのような部分もあり、このまま踏んでも良いのか不安になる場所もある。
大きな噴水もあるのだが、奇妙なことに水の色が赤から黄色、そして緑から青といったように時間とともに変化していく。ラナナ曰く魔法の道具で変化させているそうなのだが、不思議な演出であった。
また、行きかう人々も見たことが無いような服装で着飾っている人が多かった。話に聞いていた通り様々な服が選べる街のようだ。ただ、中には個性的過ぎてついていけないと内心不安になる服装も目に付いた。それに関してはラナナもコメントをしなかった。見て見ぬふりをしているようだ。
そんな愉快な街ではあったが、一つ問題が発生した。というのも外から訪れた人が多く、宿が満室だったのだ。この状況は流石に想定外ではあったが、ラナナは案外と落ち着いていた。というのもこの街では毎日、多くの人々が訪れるので宿屋の数もかなりある事を知っていたからだ。
そこで位置を人に聞きながらではあったが、空き部屋がある宿を探し回ることになった。結果、3件目に空き部屋がある宿屋を見つけることが出来た。繁華街からは少し離れた場所ではあったが、静かで落ち着いた雰囲気の宿屋でゆっくりと休めそうであった。
現在は入浴と夕食を済ませて、部屋でくつろいでいる最中である。湖張は甚平に着替え、ラナナはネグリジェ姿でくつろぎながらベッドの上でうつ伏せになり、足をパタパタさせて何かが書かれた紙を広げて楽しそうに見ている。
その様子に気が付いた湖張は近くのソファーに座り問いかける。
「さっきから何を見ているの?」
「ショップガイドですよ」
「うん?」
「さっき宿屋のご主人から貰ってきたのです。この街にどんなお店がどこにあるのかが書いてある地図です。この街は広くて多くの店がありますからね。フラッと行って探しているものが買えるなんて甘い事は無いです。ある程度、的を絞って行動しないと何日もかかってしまいますからね!」
そう言うなり体を起こして座るラナナ。心なしか力が入っている。
「そうなんだ。確かにここに来るまでにも沢山のお店があったよね」
「はい、しかも道も入り組んでいますから買い物に行ったとしてもこの宿屋に戻ってくるのに一苦労しそうですよ」
「あはは、確かに」
「なので、めぼしいお店をピックアップして道順を考えているのです」
その言葉を聞くとラナナのそばに移動してベッドに腰かける湖張。
「そっか。良い所は見つかった?」
そう聞かれると、湖張に見えるように地図を広げるラナナ。
「はい、やっぱりこの街は凄いですよ。桜和の服の専門店がありました」
そう言いながら地図の一点を指さすラナナ。
「そうなの?」
「はい。なのでまずはここに足を運んでみようと思います。ここに良いのがあれば問題ないのですが、無ければちょっと足で探す事になるかもしれませんね」
「そっか、まあやっぱり桜和の服はそうそう無いよね」
苦笑いの湖張に小さく首を横に振るラナナ。
「いえ、そんな事はありませんよ。桜和の服って作りが丁寧ですし、特徴的なデザインなので一定の人気はあるのです。確かに専門店はそうそうありませんが、服屋さんの一角に桜和コーナーがある事も珍しくはありません。様々な店を回ってそういう所を見ることになると思います。
「そうなんだ・・・私は今まで他の街には、ましてやこんなに遠くまで来たことが無かったから知らなかったよ」
そう言うと少し考えた後に質問をするラナナ。
「そう言えば湖張姉さまの育った村って、ラガース王国内なのです?」
うなずく湖張。
「そうだよ。一応はラガース王国。端っこの方だけれどもね。ラナナは?」
「私も国はラガースですよ。ここからだともう少し北東になりますけどね」
「そっか。ラガースも広い国だからいろんな街や村があるって事だね」
「そうですね」
そう会話をすると、次にラナナは違う地図の場所を指さす。
「それでですね、もし湖張姉さまの服が見つかったら、次にここを目指そうと思います」
「うん?何があるの?」
不思議そうな湖張にニコニコ顔で答えるラナナ。
「はい、ここはカワイイ服が多いらしいので湖張姉さまの普段着を買います」
「・・・え?」
固まる湖張。しかしラナナはお構いなしで話を続ける。
「良いですか湖張姉さま。ここはラガース王国です。桜和ではありません。
そして私たちは赤き聖者として時には潜入捜査が必要になります。
そんな中、桜和の服だと目立つ恐れがあります。なのでラガース王国の一般人として見られる服があるべきなのです。ですが湖張姉さまには法被と甚平しかなかったじゃないですか。よって数着の私服は必要と提案します」
「ちょっと、何もっともらしい事言って流れを作ろうとしているのよ」
ジト目でラナナを見つめる湖張。
「レドベージュはどう思います?」
このタイミングでレドベージュに話を振るラナナ。すると彼は小さくうなずく。
「うむ、ラナナの言う事はもっともだと我も思うぞ。
むしろ我もそう思っており、この街で服を揃えるように言うつもりでもあった。荷物は減らすように言ったのは我だが、手荷物は浮かせて移動しているのだ。数着増えても問題なかろう」
まさかのレドベージュの意見に固まる湖張。しかし桜和以外の服の有用性については確かにそうではあると納得がいったので、特に拒む気にはなれなかった。
「まあ話は分かったよ。じゃあ普段着も買おうか。でも可愛すぎるのはやめてよね?」
「わかってますよぉ。フフッ」
不敵な笑みを見せるラナナ。それに妙な不気味さを感じる湖張。
「あの・・・ラナナ。顔が怖い」
「やだなぁ。そんな事ないですよぉ」
そんなやり取りをしている二人をジッと見つめるレドベージュ。
本日は様々な事があったが、二人とも悪い方向に心を引きずる事がなく元気な笑顔を見せている事に安心するのであった。
<NEXT→>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百十四話【日和紗の服】
<←PREV>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百十二話【湖張の生い立ち】
-
前の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百十二話【湖張の生い立ち】 2021.11.01
-
次の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百十四話【日和紗の服】 2021.11.10