ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百一話【これからの向かう先】

           

「・・・逃げたの?」
周囲から敵の気配が全て消えると、確認をするように呟く湖張。
それに剣を鞘にしまいながら答えるレドベージュ。
「うむ、恐らくはな」

「湖張姉さま!!」
このタイミングで上から降下してくるラナナ。そして湖張の全身を見て回る。
「怪我は・・・していないようですね」
「うん、攻撃は貰わなかったからね」
それを確認するなり落ち着きがない様子でレドベージュに話かけるラナナ。

「今のは一体何なのですか?!何かご存じですか!?」
首を縦に振るレドベージュ。
「うむ、あれはデスピエロだ」
「デスピエロ?」
その言葉を聞くなり眉をひそめながら聞き返すラナナ。

「何でも盲界の精鋭らしいよ」
会話に入ってきた湖張が代わりに答えると、驚きの表情を見せるラナナ。
「盲界って!?え?ええ!?」
「まあ確かにその位の驚く内容ではあるな」

困惑するラナナにそう話しかけながらゆっくりと歩いて来るゴルベージュ。
するとレドベージュは天帝に向かって話しかける。

「お主はこの状況、どう考える?」
視線をレドベージュに向けるゴルベージュ。
「面白くは無いな。
まずこれで今まで息を潜めていた盲界が動き出した事が確定したわけだ。
キュベーグが現れたというが、この目で確かめたわけでは無いから
ほんの小さな確率でも誤情報だったと思いたかったが、ここに来てのデスピエロだ。
あの動き、まさに本物だ。疑いようが無い。
だが動機はまだ判らないな。
ひょっとしたら私やお主を狙ったのかもしれないが、それにしては戦力不足ではあった」
そこまで話すと、湖張とラナナを見るゴルベージュ。そして話を再開する。

「いや、この二人の力が想定以上だった為に戦力を見誤っただけかもしれないな。
よくあの状況で撃退できた。紛れもなく二人の行動が反撃の起点になった。正確で強力な攻撃、見事であったぞ」

話の流れでサラリと湖張とラナナを褒めるが、すぐさま本題に戻すゴルベージュ。
「この場で彼奴らは罠を張っていたようだな。
ここに踏み入れたら爆破する予定だったのであろう。
そして罠を張れるという事は私たちがここを通る事を知っていたという事だ。
どうして知っていたのであろうな?」
ゴルベージュは謎を解く手がかりを探すように周囲を見渡しながらそう言うと少し考えた後に湖張が答える。
「・・・どこかで見張っていたからとかでしょうか?」
「見張り・・・か?」
「はい、私たちの移動って基本的に人里から人里じゃないですか?
だから滞在している場所さえ把握しておけば近隣の町や村に通じる道を抑えればいいだけです。なので結構的を絞る事が出来たのじゃないですか?
それにデスピエロ・・・でしたっけ?物凄く気配を消す事が上手でした。
ひょっとしたら前の町でごちゃごちゃしている時に監視されていたのかもしれません」

湖張の意見を聞くと頷くゴルベージュ。
「なるほど、その可能性は大いにあるな。
レドベージュよ、町で何か不穏な空気は感じたか?」
ゴルベージュの問いに対して首を横に振るレドベージュ。

「いや、その様な気配は無かった」
「そうであろうな。私もだ。湖張とラナナはどうだ?」
今度は二人に対して同様の問いかけを行うゴルベージュ。
しかし二人とも首を横に振る。

「まあそうであろうな」
ため息交じりにゴルベージュが答えると、何かが頭に過った様子のラナナが発言をする。

「あの、本当に前の町から監視をされていたのでしょうか?」

ラナナの言葉に反応するゴルベージュ。彼女に視線を向け問いかける。
「どういう事だ?」
「思い返してください。前の町に滞在中ゴルベージュ様は長時間、単独で行動されていたじゃないですか?
もしゴルベージュ様を狙うのでしたら、いくらでもチャンスがあったはずです。
それなのに自由に行動が出来ていました。
という事は前の町では監視をされていなかったのでは無いでしょうか?」

「ふむ、確かにそれもあり得るな」
ラナナの意見がもっともだと感じるレドベージュ。
ゴルベージュも小さく頷く。

「確かにその意見はもっともだ。
先の町では私が一人の時に大勢で襲撃する事も可能であっただろう」

「ふむ、考えるだけでは答えは出せそうに無いな」
このタイミングでレドベージュがそう言うと、空を見上げるゴルベージュ。
「そうだな。それにここで停滞する必要も無いだろう。
とりあえず隣の村まで移動しながら考えるとしよう」

「あの、ちょっと待ってください」
移動を促す事をゴルベージュが言ったところで湖張が呼び止める。

「どうした?」
「あの、このまま村に行っても良いのでしょうか?」
「と言うと?」
「だって私たちは気配のない強敵に襲撃されたのですよ?
このまま村に入った時に再びデスピエロが現れたら戦いに巻き込まれて村に被害が及びます」

「ふむ・・・」
湖張の発言を聞くと考える素振りを見せるレドベージュ。
ゴルベージュも少し考える時間を設けるが、首を横に振る。

「いや、大丈夫であろう。
確かに湖張の心配はもっともだ。だが地上は彼奴等にとって敵地のようなものだ。
なので多くの人の目に触れる行動は取らないだろう。目立ってしまうと足がついて天に追い詰められるからな。
それに野宿だと、何時どこから襲われるか分からないし、大して休まらない。それだったら入り口が限定されて、環境も整っている村の宿屋でしっかりと休んだ方が良い」
「そうなのですか?」
「おそらくはな。まあ私もレドベージュも眠らないのだ。
夜中に何かあっても対応できるであろう」

ゴルベージュはそう告げるが、心配そうな表情が消えない湖張。
その様子を見るとレドベージュが話しかけてくる。

「ここに来て盲界の不気味で強力な存在が現れたので警戒心が強まるのは分かる。
どうしても様々な事が心配にはなってしまうな」
頷く湖張。
「そうだね、今みたいに上手く倒せれば良いのだけれども、
その時その時の状況によっては無理かもしれない。
常に狙われていると思うと、気は休まらないね」
「ふむ・・・」
少し考える素振りを見せるレドベージュ。そしてゆっくりとゴルベージュに視線を移す。

「ゴルベージュよ、ピースキーパーの誕生を考えた方が良いかもしれぬ」

「ピース・・・キーパー?」
レドベージュの発した単語を小声で復唱する湖張。
一方ラナナは目を大きく開き、驚きの表情でレドベージュを見つめる。

「・・・女神様を降臨させよと申すのか?」
ゆっくりと答えるゴルベージュ。それに落ち着いた声で返すレドベージュ。

「今はあくまでその可能性も考えた方が良いというだけだ。
完全な要請では無い。ここに来て盲界が動き出したのだ。
もし天や地上に対しての大規模な侵攻が始まるのであれば必要な力だと考える」

「この世の悪に立ち向かう伝説の救世主・・・ですか?」
このタイミングで問いかけるラナナ。そしてレドベージュは彼女に顔を向けて頷く。
「うむ、その通りだ。盲界が相手となると、我々だけでは対処が出来ない」

その言葉を聞くと今度は何かに引っ掛かった湖張が話しかける。

「それって私達では歯が立たないという事?」
首を横に振るレドベージュ。
「いや、そんなことは無い。現に今の戦いでは二人の力は十分通用したではないか。
だが規模が大きくなると話は別だ。少人数では限界がある。
どうしても手が足りなくはなるし、そもそも二人が全てを背負い込む必要は無いのだ。
・・・要するに強力な助っ人が必要だという事だ」

(本当にそうなのかな?)
頭の中でそう呟く湖張。しかしそれを言葉にすることは無かった。

するとそのタイミングでゴルベージュが言葉を発する。
「お主の考えは分かった。だがそう簡単に女神様を・・・ピースキーパー計画を発動させる事は出来ない。
もう少し状況を見極めさせてもらおう」
頷くレドベージュ。

「うむ、当然だ。我とてそう簡単にピースキーパーを望みはせぬよ」
そう話した後に二人に向かって話しかけるレドベージュ。
「結局この場に停滞してしまったな。今はとにかく目的地の村に向かうとしよう。
気を付けないと日が暮れてしまうぞ」

そう言って歩き出すレドベージュ。そしてついていくように一行は移動を始めるのであった。

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