ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十四話【分析しながら】
- 2021.02.14
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
入浴を終え、しばらく休憩をしていると、少し早めではあったが夕食となった。
久々の来客であったがため、ウンバボは張り切ってしまい気がはやってしまったらしい。
出された料理はレドベージュの注意もあったのか、ちょうど良い量であった。
そして肝心の味だが、これまた絶品で食べているだけで幸せを感じるくらいであった。
筋肉隆々の見た目からは想像が出来ないその繊細な味付けは、真似をしようにも出来ないと思えるほどである。
これも天使の力なのかと思えてくるほどに美味であった。
食事を終えると、部屋に戻り再びくつろぐ事となる。
というのも環境は良いのだが、修練の他には特にやる事も無かったので少々暇ではあった。
時折会話はするものの、いつまでも話し続けるわけもなくボーっとしている時間も多かった。
体を動かした後に温泉に浸かって、更には満腹である事も影響したのか、何もやる気が起きなくなっている可能性も否めない。
そんな状況であったがために、この日は早く眠ることにした。
修練の為に訪れたというのに、この様にゆっくりしていて良いのかとも罪悪感に近い疑問も感じてはいたが、
レドベージュはこの流れで良いというので、これで良いのだと半分自分に言い聞かせながら眠りにつく事にした。
朝を迎えると、ゆっくりと過ごしたせいか目覚めは良く、疲れも特に残ってはいなかった。
コンディションも良好である。
なので簡単に朝食を済ませるなり、早速修練場に向かう事にする湖張とラナナ。
むしろ暇を持て余していたので待ち構えていた感もある。
修練場に入るなり、再び手前の空間で修練鳥と戦う事にする二人。
戦うといっても温泉での打ち合わせ通り、まずは数種類の魔法を撃って、それが効くかどうかの判断をする実験に近いものであった。
鳥との距離を一定に保つよう逃げるように移動しながら魔法を撃っては効果を確かめる事を繰り返す。
そして一区切りついたら鳥が襲ってこないエリアまで戻って考察をしていった。
今もその考察をしているところで、湖張とラナナは正面に位置取り、しゃがんで小さな会議をしている。
「まあ当然と言えば当然なのだけれども、サンダークロスが効かない鳥にはサンダーボルトも効かなかったよね」
「つまりサンダークロスが効かない種類の鳥ではなく、雷の魔法全般が効かないという事ですよね」
「うん、それは確定だと思う。そして耐えた鳥は火の魔法は効くものと効かないものもいた。冷気の魔法も同じような感じだったよね?」
「はい。ただ気になる事と言えば最初に冷気の魔法、ブリザードストームを放った時は1羽しか落とせない時もあれば3羽落ちた時もありバラバラの結果でした。
サンダークロスは決まって2羽落とせるのにブリザードストームでは安定しませんでした」
「すると決まって5羽の鳥が飛んでくるけど、弱点はいつも同じというわけでは無いという事かな?」
「そうなると思います。でもサンダークロスに関しては決まって2羽落ちる事が不可解ですね」
「確かにそうだよね。その原因は探るべきかな?
それともそれは置いておいて、安定して2羽を落とせるという結果だけを見てとりあえずスタートはサンダークロスという流れの構築だけにしても平気かな?」
「そうですね、個人的には理由に興味がありますが、気にしなくて良いと思います。
今は効率良く倒せる方法の構築の方が優先だと思います」
「オッケー。じゃあそうしよう。
じゃあ最初のサンダークロスは私が撃つね」
「むしろ同時に違う魔法を放つのも良いかもしれませんよ?」
「あー例えば私が横と上から雷で攻撃して、ラナナが真下から炎で攻撃するみたいな?」
「はい」
「それ良いかもね。鳥に効く効かないだけじゃなくって、今後遭遇するであろう強い相手に対するための取って置きの強力な技になりそうだよ」
「そうですね。面白そうでもあります」
「まさに修練といった感じだね」
「はい!」
その様な打ち合わせを終えると、立ち上がって再び戦いの場に向かう二人。
心なしか楽しそうでもある。
「よし、それじゃあやってみますか」
奥から修練鳥がゆっくりと飛んでくる姿を確認すると、二人は魔法を放つ構えをとる。
「合図をお願いします」
ラナナが視線をそらさずに要望を出すと、湖張は視線を鳥に向けたままで返事をする。
「分かった。でもできれば今後の事を考えて合図無しでも合わせられる練習もした方が良いかもね」
「難易度上げてきましたね。でも実践レベルにするには、そうするべきではありますね。
分かりました。湖張姉さまのタイミングで撃ってください。私は合わせる練習もします」
「分かった。とりあえずまずは一つの魔法を合わせる練習ね。一回魔法を放ったら急いで戻ろう」
「そのまま戦わないのですね?了解です」
「うん、頭がごちゃごちゃになるのも良くないからね」
そうやり取りをしていると、鳥たちは射程にはいってくる。
そのタイミングで湖張が雷の魔法を放つと、ラナナも遅れることが無く下から突き上げる炎の魔法で鳥たちを突き刺す。
すると二人の魔法が上手い具合に合わさり、3羽の修練鳥が落下した。
「よし、撤退!!」
湖張がそう言うなり走って安全地帯に戻る二人。
魔法を放った後にためらいなくその場を離れるたので、残った修練鳥には反撃をする暇を得られなかった。
「上手く行ったんじゃないですか?」
走って戻ったので息を切らしながらではあったが、笑顔でそう言うラナナ。
「そうだね、良い感じだと思う。何かあのまま抑え込んでも良かったかもね」
「そうですね。じゃあ次はそうします?」
「うん、やってみようか。
でも次はラナナが最初に魔法を撃ってよ。私も合図無しで魔法を合わせる練習やってみたい」
「わかりました」
そこまで打ち合わせをすると、息を整えるために深呼吸をする湖張。そしてラナナに再び話しかける。
「それとさ、魔法を撃った後、次の行動もどうするか決めておこう。
すぐさま次の魔法って撃てる?」
「はい、準備が必要なほどの強力な魔法は難しいですが、簡単なものなら大丈夫ですよ」
「そうしたらメガトンは厳しいかな?」
「あー、ちょっとギリギリかもしれませんね。
それに広範囲をカバーできる魔法ではないので、狙うとしても1羽ですね」
「そっか。いや、残りの鳥は格闘で倒そうと思ったのだけれども、硬い鳥も残っていると考えられるでしょ?
だけどメガトンだったら倒せたから、それで選別出来ないかなと思ったんだよね」
「なるほど。でもどちらにせよ狙えるのは1羽だけですので、上手く倒せれば良いのですが
倒せなかった場合、2羽が残ったままですので賭けの部分がありますね」
「そうなんだよね、そこで質問なんだけど、メガトンの威力を落として素早く2発撃つ事は出来ない?」
「威力を落とす・・・ですか?」
湖張の提案に不思議そうな顔をするラナナ。敵を倒すのに魔法の威力を下げる事を不思議に思ったようだ。
そんな彼女の疑問そうな表情を納得したものに変えるため、湖張は説明をする。
「そう、それで2発撃つの。というのもメガトンで倒すのは少し過剰な力だと感じるんだよね。
それだったら威力を落として魔力の消費を抑えつつ、撃つまでの早さを上げても大丈夫じゃないかと思ってさ。
そして2発撃つ事で外れを無くせないかな?」
湖張の提案は思いも寄らない物だったのか、目を大きくして聞くラナナ。
しかしすぐさま真剣な表情になり右手を口に当てながら考え事をする素振りを見せる。
「それは面白い発想ですね・・・でもいいアイディアです。ちょっと練習すれば出来るかもしれません」
そう言うなり壁に向かって手をかざすラナナ。少し考えているのか、しばらくそのままの姿勢のまま固まっている。
彼女の様子をジッと見つめる湖張。
すると間もなくしてラナナの手が小さく光り始めたと思うと、小さな光弾を2つ続けて撃ち出し壁に強い衝撃を与えた。
「お?出来た?」
湖張が腕を組みながらそう質問をすると、頷くラナナ。
「はい、即席でやってみましたが出来そうですね。
後は上手く目標に当てられるかですが・・・それは練習ですね」
「オッケーとりあえず平気そうだね。後は私がしっかり残りを倒せば良いんだよね。
失敗しないようにしないと」
湖張がそう言いいながら背伸びをしていると、ラナナは腰に携えている覇王の団扇をジッと見つめる。
「そういえば湖張姉さまは、その団扇を使わないのですか?」
ラナナの質問を聞くと、湖張は少し考えた後にそっと団扇に手を添えて答える。
「そうなんだよね。確かに硬い鳥に対してこの団扇を使うと問題は解決なのだろうけど、
どうもこの団扇は強力過ぎて怖いというか何というか・・・。
それにコレに頼り始めちゃったら成長が止まっちゃうかなとも思えてね」
「なるほど」
「でも本当は常に使うようにして慣れておく必要もあるんだけれどもね。
いくら強力な武器でも使い慣れていないと本領発揮できないものね」
「それもありますね」
「・・・でもまあここでは必要ないかな?
修練をする場所だから強い武器には頼っては駄目だと思う。
今後、物凄く強い相手にはしっかり使おうとは思っているから、またの機会かな」
「要するに複雑な乙女心と言ったところでしょうか?」
「何じゃそりゃ」
ラナナの返しに苦笑いの湖張。
その表情を見た後、ラナナは光の玉を二つ浮かび上がらせ、
5mほど離れた位置でゆっくり移動させながら漂わせる。
「すみません湖張姉さま。少しここで練習させていただいても良いですか?
小さなメガトンを素早く撃って当てられる練習をさせてください」
ラナナの提案を聞くと、小さく頷く湖張。そして腕を組んで笑顔を見せる。
「うん、そうだよね。いきなり実戦は厳しいもんね。
分かった。そうしたら私が今浮かび上がらせた光の玉を出して的役を務めるよ。
その方が変なところに魔法を使わないで済むから集中できるでしょう?
それに私が的を動かす事で、より実践的な練習もできるし。
だからラナナはメガトン・・・いや、いわばキロトンかな?その練習に集中してね」
「プッ!キロトンですか、何か面白いですね」
小さく笑うラナナ。そして笑顔をしばらく続けながら目標に向けて手をかざす。
時間は昼前に近づいては来ており、そろそろウンバボが昼食の案内をしてきそうな雰囲気ではあったが、
二人は時間を無駄遣いしないように練習に取り掛かり始めた。
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