ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八十五話【湖の王の話】
- 2021.04.29
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「よし、これでひとまずは落ち着けるかな?」
腰に手を当てながらつぶやく湖張。その様子にざわつく魔物達。
あっさりとシーサーペントを倒された事が衝撃だったようだ。
「ば・・・馬鹿な!先生が!!」
王も例外なく、驚愕の表情を見せている。そこにレドベージュは王に近づきながら話しかける。
「すまぬな、手荒な真似をしてしまって。落ち着いて話を聞いてはくれぬか?」
そう伝えると剣を鞘にしまい、そのまま王の前に剣を置くレドベージュ。
武器を手放す事により敵意が無い事を示しているようだ。
するとその様子をジッと見つめた後、王は少し考えた後に答える。
「本当に敵意は無いというのか?」
「そうだと言っているであろう。我らはただ、お主達が急に活動しなくなった事を案じて様子を見に来ただけだ」
そう伝えると王は配下に向かって手を上げる。その後、王座に戻り腰を掛けるとレドベージュに話始める。
「そうか、すまない事をしたな。ただ我らも身を守るのに必死でな。許してくれ」
「身を守るか。何があったか教えてはくれぬか?そして先ほどキュベーグと申したな。それについても話して欲しい」
ジッとレドベージュを見つめる王。そして口を開く。
「我々には宝があった。それは今、水の上で伸びている先生・・・シーサーペントの口から出てきたもので、大切にしている物であった」
「口から?」
「そうだ。それは不思議な球体でな。魔力が常に放出され続けているのだ」
「まさか竜魔球!?」
王の話に反応するラナナ。大きく目を見開き、驚嘆の表情を見せている。
しかし彼女の言葉に首を横に振る王。
「いや、竜魔球ではない。むしろ人の手によって作られた道具の様な雰囲気であった」
「人の手・・・ですか?」
「そうだ。何かの金属ような物で球体を作り、青い塗料で線を引いて作られていた。
あのような物が竜の体内で生成されるとは考えられないな」
「む!?金属の球体で青い線と言ったか?」
ラナナに答えていた王に問いかけるレドベージュ。すると王はレドベージュに視線を戻す。
「そうだが?」
「すまない、誰か紙とペンを持っていないか!?」
王の答えを聞くなり慌てた素振りで湖張とラナナにそう聞いてくるレドベージュ。
「え!?ペン?今は持っていないよ」
「宿に戻ればありますが・・・」
「むう」
二人から残念な回答が返ってくると、少ししょげるレドベージュ。
と、その時であった。配下の魔物が横から近づいてくる。
「あの、良かったらこれをどうぞ。
観光客へのアンケート用紙ですが裏面は白紙です。使って良いですよ」
そう言うなり紙とペンを差し出してくる。
どうやら王が敵意を向けなくなった事で、配下の魔物も攻撃的ではなくなったようだ。
「おお、すまぬ。助かるぞ」
礼を言うなり紙とペンを受け取るレドベージュ。しかし、すぐさま周囲を見渡し始める。
「むう、今度は机が欲しいぞ。
ここら辺はシーサーペントが暴れたおかげで濡れているから
地面に置いて書くと紙が駄目になってしまう」
乾いてるところが無いか探すために右往左往するレドベージュ。
すると今度は配下の魔物は机を担いでくる。
「これでいいですか?アンケートを記入する机ですよ」
「かたじけない」
「何なの?この展開・・・」
妙な雰囲気を感じる湖張がそうぼそりと言うが、レドベージュは気にもせずに早速机に向かい始める。
そして何やら絵を描き始めた。その様子を斜め後ろから覗き込む湖張とラナナ。
するとそこには波打った二本のラインが入った球体が立体的に描かれていた。
「ひょっとして宝とはこれの事ではないか?」
「そうだ!まさにそれだ!!」
描いた絵を王に見せると、大きな声で返答をする王。
「その宝の事を知っているの?」
何やら知っていそうなレドベージュに尋ねる湖張。
すると彼は湖張に視線を移す。
「うむ、これは天が作った物だ。
天では様々な物を研究して作り出していたのだが、これはそのうちの一つだ。
以前、塔で話をした時にウーゾ神が反乱を起こして天の研究施設を消滅させたと言ったであろう?
その時に生み出された物のそのほとんどが失われたが、中には地上に保管していたので
残っているものもある。これもそのうちの一つだ」
「いったいこれは何なのですか?」
物凄く興味がありそうな雰囲気で問いかけるラナナ。
するとレドベージュはラナナを見てから答える。
「ピロペレの動力源だ」
「ピロ・・・ペレ?」
何やら変な単語が出てきたので聞き返す湖張。
「うむ、ピロペレだ」
「何ですかそれは?」
不思議そうなラナナ。二人が疑問の表情を見せていると、王との会話の途中ではあったが
解説を始めるレドベージュ。
「ピロペレとは天が作ったからくり人形で、強力な兵器だ。
その気になれば山を一つ消し去る事も可能だ」
「え?何なのその物騒な人形は」
「人形とは言ったものの、我の様な人型ではなく、我と同じくらいの大きさの柱に頭が付いており、足というか設置するための支柱が両側についている。
また、地面から数センチ上を浮かび上がり、音もなくスッと移動をする」
「イメージ出来るようで出来ませんね・・・」
「うん」
難しい顔をする二人。言葉で表現するには難易度が高い物体の様なので当然と言えば当然である。
「まあとにかくだ、ピロペレとは危険な兵器で作ったのは良いのだが扱いに困ってな。
そこで動力源を抜いて本体は近くの山の中に、動力源はこの湖の中に封印していたのだ。
だが封印とは言ったものの、湖の中なので早々に見つけられないと考えていた。
なので特に厳重に保管していたわけでもなく、湖の底に沈め簡単な保護魔法で守っていただけなのだ」
「すると、それをシーサーペントが見つけちゃって食べたという事?」
湖張が窺うようにそう言うと、頷くレドベージュ。
「うむ、おそらくそうであろう。
何かしらの理由でシーサーペントが動力源を見つけてしまった時、それが魔力を放ち続けているので興味を持ち口に含んだのであろう。
口から出てきたというのはそれが理由だと考えられる。
ちなみに魔力が常に放出され続けていたというのは間違いでな、
しばらくすると魔力の放出は止まっていたはずだ。
ただ3日もすれば再び魔力を放出し始めていたと考えられる。
というのもあの動力源は常に魔力を放出し続けはするが、空になると人が睡眠をとるのと同じように、
活動を辞めて周囲の魔力を集め始め、空になった魔力が満タンになるまで再び溜め直すのだ」
「機能は竜魔球に似てはいますが、持続性は劣ると言ったところでしょうか?」
レドベージュの解説を聞き感想を述べるラナナ。
「うむ、そうかもしれんな。だがそれでも十分な量の魔力を長時間放ち続けられるから危険な物には変わりない」
「ねえ、それって盗まれちゃダメなやつだったんじゃない?」
そこまで話を聞くと、悪用されたらいけない物の様な気がした湖張がボソッと言うとレドベージュは頷く。
「うむ、そうなのだ。ましてやそれをキュベーグが手に入れたというのであれば問題だ」
そう言うなり、再び王に視線を向けるレドベージュ。
「王よ、教えて欲しい。ここにキュベーグが来たことは本当なのだな?」
すると王は一つ頷く。
「そうだ。奴は確かにキュベーグと名乗っていた」
「むう・・・」
王の返答に考え込むレドベージュ。しかし湖張は少し不思議そうな表情をしている。
「ねえ、それって本当にレドベージュの知っているキュベーグなのかな?」
湖張の素朴な疑問に目を丸くして彼女を見つめるレドベージュ。
「どういう事だ?」
「あ、いやね、キュベーグと名乗っただけなのでしょう?
同じ名前だけど別人だったという事もあり得るんじゃないかな?」
その意見を聞くと、少し考えるレドベージュ。
「ふむ、確かにその可能性は捨てきれんな。キュベーグは数百年も姿を見せていないのだ。
今になってひょっこり現れる事も考え辛い」
そう言うと、再び紙に絵を描き始めるレドベージュ。
それを後方から覗き込むと、ヤギの様な大きな角を持ち、足の無い鎧を描いている。
その姿は塔で見たキュベーグそのものであった。
「王よ、キュベーグと名乗った物はこの様な姿であったか?」
絵を王の前に差し出し確認を取るレドベージュ。すると王はジッと見た後に小さく頷く。
「そうだ、まさにこの姿だ」
「むう・・・」
湖張の疑問は外れ、どうやら本当にレドベージュが危惧をしていた存在が現れたらしい。
過去に反乱を起こしたウーゾ神の従者。そう聞いてはいたので、実際に対峙したことは無いにせよ、
今は良くない状況という事は判断が出来る。
「・・・そしてキュベーグが現れ、どのような事が起こったのだ?」
内心は穏やかではないのであろうが、冷静な素振りで事の顛末を尋ねるレドベージュ。
王はそれに応え、話を始める。
「あれは二週間ほど前の事だ。
ここの公開時間も終わり後片付けをしていたのだが、
そこにキュベーグが静かにやってきたのだ。
宙を浮き、喋るリビングアーマーだったので不気味さすら感じられた。
だが、遅れてきた観光客の連れかとも思えたので丁寧に公開時間は終了した事を伝えたのだ。
しかし奴は観光としてきたのではなく、宝を譲ってほしいと言い始めた。
そして近くの山の中から発掘したという、魚が入った大き目の琥珀と交換を申し出てきたのだが、
そんな物では我らの宝の価値には到底及ばないから断ったのだ。
しかし中々引き下がってはくれなくてな。そうこうしている間に先生が水場から首を出して睨みを利かせてくれたのだ。
するとどうだ、キュベーグは目にも止まらない速さで宝に近づき、そして奪い去ってしまった。
そして勝手に琥珀を置いて強制的に物々交換をしていったのだ」
「うん?奪ったのではなく、律儀にも琥珀は置いていったの?」
妙な行動だと感じた湖張がそう尋ねると頷く王。
「そうだ。だが、そんな琥珀より奪われた宝だ。宝の方が重要なのだ」
「そっか、そうだよね。大切な宝物だったんだよね。
それにしても何でそんな大切な宝物の存在をキュベーグは知っていたのかな?
きっと奥の方に大切に保管していたんだよね?」
疑問に思った事を湖張が口にすると、王は不思議そうな顔をする。
「いや、誰だって知っていると思うぞ?おい、あれを持って来い」
そう言うなり王は配下の魔物に折り畳まれた紙を用意させ湖張に渡させる。
それはこの地を紹介したパンフレットであった。
ゆっくりとパンフレットを開き、内容を確認する湖張。レドベージュとラナナも湖張の横から覗き込む。
「守護神がもたらした究極の宝、公開中!!・・・何これ」
「こんなに珍しい宝なのだ、公開して観光客を集めない手はないであろう?」
手渡されたパンフレットには宝の絵と詳細が記載されており、秘密どころか大々的に宣伝されていた。
思わず目が点になる一行。
「これじゃあ知るなという方が難しいですね。まあ私たちは知りませんでしたが」
呆れ顔のラナナ。レドベージュは言葉を失っている。
「というかあれだね、レドベージュは宝の絵を描く必要が無かったね」
「むう・・」
ようやく絞り出したレドベージュの声が切なそうな声だったので、それ以上の言葉を求めない湖張。
「そうすると、キュベーグはコレを見てここに来たという事かな?
理由は何なんだろう?観光の邪魔をして困らせてやろうというイタズラとかじゃないよね?」
「まあ違うでしょうね。それにレドベージュの話を聞く限りキュベーグもピロペレの存在を知っていても不思議ではありません。
きっとピロペレを利用しようとしているのですよ」
「まあそう考えるのが普通だよね。
そういえばさ、琥珀は置いていったんだよね?それは見せてもらえるの?」
ラナナとやり取りをした後に王に琥珀について尋ねる湖張。すると王は再び配下に合図を送る。
すると配下は小走りで奥から琥珀を抱えて持ってきて、レドベージュが使用していた机の上にそっと置く。
「うそ・・・大きすぎない?」
話を聞いていた時は手の平サイズと思っていたのだが、目の前に現れた琥珀は両手で抱えないと持てないほどの大きさであった。
そして中には確かに魚が入っており、大きさは20センチほどでパッと見た時に感じた特徴として、尾びれが妙に発達しているのか長く、そして太い。
明らかに見たことが無い種類である。
「こんな薄気味悪い物の価値なぞ、我らの宝の足元にも及ばないわ!
宝が無くなると、観光客はがっかりするであろう。それにまた奴が攻めてきて他の宝も奪っていくかもしれん。
それ故にここを封鎖し公開を止めていたのだ」
悔しそうにそう語る王。嘆きにも近い声を聴いていると切なくなってくる。
魔物にとってこの魚は薄気味悪いと感じるのかと思いつつラナナに視線を移す湖張。
すると、彼女は目を丸くしながら琥珀を間近で凝視していた。
そしてサッと魔法を掛けたのか、一瞬だけ琥珀が輝きを見せる。
「え・・・?うそ?これ?え?ええ!?」
「うん?どうしたの?」
うろたえるような様子のラナナ。ただ事ではない様子なので問いかける湖張。
「いや、これありえないですよ。、本当に琥珀じゃないですか」
「うん、確かに信じられないくらい大きいよね」
その反応に首を大きく横に振るラナナ。
「違うんです!確かに大きさも普通ではありませんが驚くべきところはそこではありません!
そもそも琥珀とは言わば樹脂の化石なんです。元は木から流れ出ている液体です。
それが固まって化石になって琥珀が出来るのですが、その中に確かに虫の様な生物が入り込んで
そのままの形で封じ込まれるという事はあります。
ただそれはあくまで木の近くにいた生物が入り込むから出来上がるだけなんです。
ですがこれは魚ですよ!?木の近くにいるわけがないじゃないですか!
しかも山の中ですよ?地殻変動の影響で盛り上がった可能性もゼロではありませんが、それでもありえないですよ!!
話を聞いている時は、魚が入っている琥珀という事なので偽物だと思ってはいたのですが、
魔法で鑑定した結果、これは本物ですよ・・・意味が分かりません。
しかもこの魚って、尾びれが物凄く発達しているじゃないですか。
こんな魚、見たことな・・・ああああああ!!」
長くなりつつある話の途中で突然叫び出すラナナ。思わずビクッとなる湖張。
「どうしたの?」
「そう言えば山から出土する化石の中に、何故か尾びれが大きい魚が発見される事があるのですよ!
なので古生物学の世界では長年の謎として議論が何度もされています。
その魚の形に凄く似ています。ひょっとしてこれが完全な姿なのでは!?」
興奮気味に話すラナナ。そして彼女は期待の眼差しでレドベージュをジッと見つめる。
すると彼はため息をつくような素振りを見せた後に話しかける。
「この魚の真相を知りたいと言ったところか?」
無言で何度も素早く首を縦に振るラナナ。
するともう一度ため息の様な素振りを見せた後に答え始めるレドベージュ。
「この魚はな、見た目は魚だが実は陸上の生き物だ。
なので普通に大地を歩く。いや、跳ねると言った方が良いな。尾びれを使って地面に垂直に立ち、ぴょんぴょんと跳ねて移動をするのだ」
「ぴょんぴょん!?」
「しかもエラと肺を持っていてな、地上でも水中でも呼吸が出来るのだ。
そして行動範囲だが、もちろん水の中もいられるが地上にも、そして山の中にも生息する事が可能だ」
「何その出鱈目な魚」
レドベージュの解説に呆れ顔の湖張。
「ちなみに木の実は大好物だ。落ちた木の実をよく食べる」
「あ・・・うん」
どうやら木の実を食べるために木のそばに寄ったこの魚は何らかの原因により
大量の樹脂を浴びてそのまま化石になったのであろう。どのような状況でそうなったのかの詳細は分からないが
水の中にいるよりは確率は高そうである。冷静にそう頭の中で分析はしつつも、常識の範疇にない魚に苦笑いの湖張。
一方ラナナは目を輝かしっぱなしである。
「一応、我がこの地に降り立った時にも生息はしていたが、間もなく絶滅してしまったな。
まあ決して逃げ足が速い生き物では無かったからな。魔物が増えた事により食料として狙われやすかったようだ。
それでも数千万年も姿を変えずに生息し続けた事は称賛に値するな」
「そうだったんですか・・・今日もまた物凄く貴重な物を見る事ができました」
レドベージュの話を聞き、満足そうな顔を見せるラナナ。するとその顔を王はジッと見つめている。
「そんなにこれは貴重な物なのか?」
余韻に浸るラナナの顔が気になったのか、不思議そうに尋ねる王。するとラナナは拳を握りしめ力説を始める。
「当たり前です!だってこれは今まで謎に包まれていた太古の生き物の姿を完璧に知る事が出来る物なのですよ!?
しかも出土した場所から生息地や生態の仮説・・・いえ証明まで出来る可能性があります。
これ、うちの学校の教授陣が見たら大金を積んでも譲って欲しいと交渉してくるかもしれません。
いえ・・・あまりにも貴重過ぎて値段は付けられないですよ!」
「そんなにか?・・・ひょっとして集客力は高い物か?」
「当然です!確かに魔力を放つ玉も凄いですが、集客力を考えると断然こっちですよ!
近くの山の中で発掘された前代未聞の大きさを持つ琥珀。しかも中には絶滅した不思議な魚の様な古代生物が入っているのです。
やり方次第では人でごった返すでしょうね」
「そうなのか!?」
(気になるところは集客なんだ・・・)
王とラナナのやり取りに心の中で突っ込みを入れる湖張。
何処となくユルイこの魔物達の空気は一体何なのか疑問である。
それだけ悪い存在ではないという事なのかもしれないと無理に納得をしようとする。
「あの、ちょっと良いかな?」
とりあえず琥珀の価値を理解したのか、王に元気が戻ってきたようなので小さく手を上げて提案を始める湖張。
「何だ?」
「えっとさ、結局ここを閉めていたのって宝物が無くなって観光の目玉が無くなったのと
他の宝までも盗まれると思ったからなんだよね?
でも実際のところは、より集客に優れた物が手に入っているから観光の目玉という点では問題ないんじゃないかな?
更にはこんなに貴重な物を置いて行ったと言う事は、単なる強盗というわけでもないと思うんだよね。
だから今後も盗みに入るという事は無いんじゃないかな?
それで何が言いたいかと言うと、この琥珀を観光の目玉にして活動を再開してもらえないかな?
と言うのも王様達がここから出てこなくなったから周辺に魔物が徘徊し始めて町の観光が止まってしまっているんだよね。
そしてここに来るまでの滝も凄く綺麗だと思った。こんなに良い観光地が廃れていくのはもったいないと思うんだよね。
アナタ達だって熱意を持って観光に力を入れているのでしょう?町の人や観光に来た人も王様達の事を待っていると思うんだよね」
そう伝えると、王はゆっくりと立ち上がり、力強い雰囲気で湖張に返答をする。
「そうだ、その通りだ!この琥珀さえあればより良い観光地として成功できるであろう。
また、人が困っているのだ。我々が動かねばな。
町の長から貰える美味い食べ物も恋しくなってきたところだしな」
そう言うなり配下の魔物に指示を出し始める王。
「よし、早速行動に移すぞ。まずは周囲の魔物達の調整だ。
人が行き来する場所に入り込まない様に誘導をするぞ。
それとは別にこの琥珀を展示する準備にも入るぞ。
あと町の人とも話を付けねばならぬな。忙しくなるぞ」
その言葉を聞くなり配下の魔物達は雄叫びを上げた後に、それぞれ行動をし始める。
どうやら観光地としての問題はとりあえず解決したようだ。
「さてと、いい方向に動いたようだからこっちも気になる事はやっとこうかな。
ラナナ、ちょっと手伝って」
魔物達が忙しく動き始めたところでラナナにお願いをする湖張。
彼女の手を引いて池の方に移動をする。
「手伝いですか?何をです?」
不思議そうに問いかけるラナナ。すると湖張は池の上に浮かぶシーサーペントを指さす。
「一応手加減はしているのだけれども、まだシーサーペントが浮いたままだからさ。
どうやらここのガードマンみたいだから回復させておこうと思ってね。
ただ、体が大きいから私だけでは大変だと思うんだよね。
だから一緒にレディーフェをかけてくれないかな?」
「ああ、そいう事ですか。でも元気になったらまた襲ってきませんか?」
「それは大丈夫じゃないかな?もう王様は敵じゃないようだし」
そう言うと首を縦に振るラナナ。
「分かりました。これから貴重な物を展示するのです。
悪い人が来て目を付けてくる可能性もありますからね。
シーサーペントの様な用心棒は居た方が良いですものね」
そう言うなり魔法を掛ける二人。
すると目の前の巨体が光ったと思うと、すぐさま体を起こし二人を見つめるシーサーペント。
そして怯えて逃げるように水の中に潜ってしまった。
「先生を元気にしてくれたのか。すまないな」
その様子を見ていた王が後ろから話しかけてくると、苦笑いを見せる湖張。
「まあ少しやりすぎた気もしていたからね。良かったよ元気になって」
「そうか。こうなると詫びで何かご馳走でもした方が良いな」
そう言って少し考える王。と、その時であった。レドベージュが王の前に立ち話始める。
「いや、気にしなくて良い。
それよりキュベーグだが、他に何か言ってはいなかったか?」
その質問を受けると首を横に振る王。
「いや、あの者は玉を手に入れるなり、一目散に退散してしまった。
何処に行ったのかも分からないぞ」
「・・・そうか。まあ仕方あるまい。
では我らはこれで立ち去るとしよう。時間が惜しい状態になったからな」
「あ、もう行く?」
早々に引き上げようとするレドベージュに問いかける湖張。すると彼は頷いて答える。
「うむ、ここでやる事はもうあるまい。
それよりも急いで町にいたあの男の下へ戻るぞ」
「え?何故です?」
あの陽気な旅人の下に戻るという予想外な事を言い出すレドベージュに嫌そうな顔で反応するラナナ。
しかし彼は淡々とした雰囲気で答える。
「まあそう言うな。これも理由があっての事だ。
ただここで理由を言っても良いのだが・・・まあ信じてもらえないだろうから
とりあえず戻るぞ。実は説明している時間も惜しい」
「理由・・・ですか?」
「そうだ。悪いが話は後だ。もう行くぞ」
普段なら丁寧に説明をしてくれるレドベージュだが、それもなく先を急ぎ町へ戻り始める。
その様子を不思議がりながらも、とりあえず詳しい話は聞く事をせずに、大人しく彼の後をついていく湖張とラナナであった。
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