ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第八十話【それぞれの修練】
- 2021.03.14
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「行きますレドベージュ!花壇をお願いします!!」
「うむ、任せておけ」
外の光が入る運動場の中心で声を大きく上げるラナナ。
それを合図にレドベージュは花壇に魔法で防御壁を展開する。
湖張とラナナがそれぞれの修練に取り掛かってから早くも二週間が経過していた。
現在はエマシデンシの理論的な仕上げを済ませたラナナはレドベージュに手伝ってもらいながら
魔法の試し打ちをしている最中である。
「行きます、エマシデンシ!」
彼女が魔法を発動させると、白く強い光を放つ拳大の小さな球体がゆっくりと上空に向かって飛んでいく。
「なるべく・・・なるべく遠くに」
空を見上げながら天に手をかざし慎重に魔法を移動させるラナナ。
エマシデンシは広範囲に衝撃波を放つ魔法なので、なるべく遠くの距離で発動させる必要がある。
そこで一番距離が取れる方向は上空と判断し、若干のやり辛さがあるものの空に向かって魔法を放っていた。
「バースト!」
彼女の声を合図にするかのように放たれた球体は瞬時に指先程の大きさにまで縮まると、
次の瞬間には周囲が強い光に包まれる。
今まで見て感じていた周囲の様子が一瞬にして真っ白で何もない空間に変わったと思った途端に
押しつぶされそうな圧力が上空から降り注がれる。
その圧に耐えられず、地面に押さえつけられるかのように座り込んでしまうラナナ。
一方重心の低いレドベージュは何とかその場で耐えているようである。
「・・・むう、凄まじい力だ」
衝撃波が収まり、白く感じていた空間に景色が戻ってくるところでそう呟くレドベージュ。
一方術者であるラナナは力が抜けたように空を見上げている。
「一応は出来てはいるけど・・・ううん、まだまだだ。
もっと上手くコントロール出来るようにしないと。
それにまだ力の流れに無駄がある。
もっと工夫しないと」
そう独り言をつぶやいていると、レドベージュが心配そうに近寄ってくる。
「どうした、どこか痛めたか?」
「あ、いえ・・・少し考察をしていたのです」
「これでもまだ完成と言えないのか?」
「はい、まだですね。
一言で表現すると雑です。力の放たれ方にムラがあります。
それに私は力加減をしたはずで、ここまで強い衝撃を伝えるつもりはなかったのですが、この結果です。
コントロールが出来ていない証拠ですね」
「ふむ、そうなのか」
「はい、なので今日の実技はここまでです。
また部屋に戻って理論の練り直しですね。
一応は仕上げたつもりだったのですが、まだまだのようです」
「そうか。まあ焦る事もあるまい。では戻るとするか」
そう言うなり離れた位置にある花壇に手をかざし、施した魔法の防御壁を取り除くレドベージュ
「そういえば湖張姉さまの方は順調なのでしょうか?」
ゆっくりと立ち上がりながら呟くように尋ねるラナナ。
「うむ、ぼちぼちだとは言ってはいたが、実際のところどうなのだろうな?
部屋に戻る前に見に行ってみるか?」
「邪魔にならないでしょうか?」
「長居しなければ問題なかろう。それにラナナが顔を出す事によって湖張の気分転換になって案外といい結果に繋がるかもしれん。
そもそも湖張はそのくらいの事で怒りはしないさ」
安心するような言葉を伝えると、心配そうな表情が和らぐラナナ。
「そうですよね。そうしたらちょっと顔を出しましょう。
毎日修練の時間以外は一緒に過ごしていますが、修練中の様子は全く分かりませんからね」
そう決まると、足早に修練場へ向かうラナナ。その後ろをレドベージュはついていく。
通路を歩いていると、一度だけ小さな揺れを感じた。恐らく湖張が技を放ったようだ。
「頑張っているようですね」
揺れに反応してレドベージュに話しかけるラナナ。
「うむ、またバテて動けなくなっていなければ良いのだが」
「そうですよね、また座り込んでいる可能性もありますよね」
心配そうに返すラナナ。と、その時であった。再び小さな揺れを感じ取る二人。
「あれ?また揺れました?」
「ふむ、その様だな」
「・・・急ぎましょう!」
座り込んでいるのかと思っていた中で、再び技が放たれた様なので気になっり小走りで向かうラナナ。
そして修練場に辿り着くと、特に何をするわけでもなく、ただ立っているだけの湖張の背中が目に入る。
「湖張姉さま?」
心配そうに話しかけるラナナ。その声に気が付くなり振り返り、不思議そうな表情を見せる湖張。少し驚いた様子でもある。
「あれ?どうしたの?・・・まさか!?」
そう言うなり少し気まずそうな表情に変わる湖張。今度はラナナが不思議そうな表情を見せる?
「どうかしました?」
「ひょっとしてラナナは魔法を完成させちゃった?」
心配そうに尋ねてくる湖張。なぜそのような表情なのか気になりつつ、首を横に振り返答するラナナ。
「いえ、まだですよ。むしろこれから理論の組み直しをしなければなりません」
「・・・まだ時間が掛かるという事?」
「そうですよ」
「そっかー、良かった!」
そのタイミングで安心したような表情を見せる湖張。
「いやー、正直なところもうちょっと私は時間が必要でさ。
自分の修練が終わっていない中ラナナの研究が終わってしまうと、待ってもらうことになっちゃうかなって思ったんだよね」
「ああ、そういうことですか。
でもご心配なく。先ほど魔法の試し打ちをしたのですがまだまだでした。
私ももう少し時間が必要です。それにもし仮に私の方が早く終わったとしても焦らなくていいですよ?」
「まあそう言ってくれるのはありがたいけど、なるべくは迷惑かけないようにはしないと」
頬を掻きながら湖張がそう言うと、レドベージュも話に加わってくる。
「そこは問題ないぞ。
むしろ変に焦ると余計に上手くいくまい。落ち着いて取り組むが良い。
ところで技を連続で放っても平気なようだが、上手く行っていると捉えて良いのか?」
「あーうん、この二週間でそこら辺は克服できたかな?まずは数をこなさないと上達できないと思ったから
数をこなせるように力の配分を上手に出来るようにしていたんだ。
それでさっき、試しに続けて技を放ってみたら案外と上手く行ったんだよね。
でも逆にそれだけ。これからは技を放つまでの速度を上げていかないと駄目だし
制御もそう。威力も上げるようにしないと・・・つまりまだまだ課題は山積みだよ」
「さらに威力も上げるのですか?」
今でさえ強力と感じていた中で、湖張の話の中から更に威力を上げるという言葉を聞いたので
思わず聞き返してしまうラナナ。
「あーうん。まあ折角なら行けるところまで行こうかなと考えているんだよね。
もちろん力の制御を出来るようにするから弱めでも使えるようにはする予定だよ。
兎にも角にも状況によって使い分け出来るようにするつもり」
「頼もしい限りだな。期待しているぞ」
穏やかにそう伝えるレドベージュ。すると苦笑いで湖張は返す。
「まあ頑張ってみるよ。というわけでごめん。
もうちょっとだけ時間を頂戴。あともう少しで何かを掴めそうな気がするんだよね」
「うむ、気にすることは無い。思うようにやると良い」
「頑張ってくださいね!」
レドベージュに続きラナナも湖張を応援をする。
「うん、ありがとう。ラナナも頑張ってね」
同じ様に笑顔で伝える湖張。
まだゴール地点がはっきりと見えない状況ではあったが、
緊迫感は無く、和やかな雰囲気でその場は包み込まれていた。
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