ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十九話【エマシデンシ】
- 2021.03.07
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
小さい振動が伝わる宿泊部屋。
先ほどから定期的にこのような揺れが発生している。
どうやら湖張が奥義の練習をしているようである。
現在、ラナナは宿泊部屋の机に向かって魔法の研究を行っている。
レドベージュも一緒の部屋にいるのだが、気を散らさないように少し離れた位置でまるで
展示物の鎧のようにジッとしている。
「湖張姉さま、頑張っているようですね」
先ほどまで物凄く集中し、かなりの量のメモを書いていたラナナであったが、
今回の揺れに反応したのか、手を止めて天井を見上げながらつぶやき始める。
「うむ、それにしてもこの離れた部屋まで揺らすほどの振動、相当強力な技だな」
つぶやきが自分に対する会話と捉えたレドベージュはそう答えると、
ラナナはペンを机に置いて体をレドベージュに向ける。
「そうですね、流石湖張姉さまです。私も頑張らないと」
「そうだな。ところで少し聞きたいことがあるのだが良いか?」
話せる雰囲気になったので、ラナナにそう尋ねるレドベージュ。その様子に彼女は微笑みを見せる。
「はい、大丈夫ですよ?」
「ラナナが今やろうとしている魔法、エマシデンシと言ったか?
それはどういう魔法なのだ?」
「気になります?」
「まあな。・・・戦略魔法などという物騒な名前を聞くと余計気にはなるさ」
レドベージュがそう言うと、先ほどまで見せていた穏やかな表情は消え、
硬い表情に切り替わるラナナ。
僅かな間ではあったが、その間に何か考えを巡らせたのか、彼をジッと見つめた後にゆっくりと話始める。
「エマシデンシですが、強い衝撃波を発生させて周囲に壊滅的なダメージを与える魔法です。
まず強力な爆発魔法を圧縮したものを飛ばします。
そして目標地点まで到達させた時点で、更に極限まで圧縮をします。
そうする事によって、爆発魔法には圧縮に反発する力が更に加わり、より強力な・・・大規模の爆発を発生させることが出来ます。
そしてそれにより通常では考えられない程の強力な衝撃波が発生し、周囲を壊滅させます」
「想像していたよりも行き過ぎた魔法のようだな」
「はい、理論上では信じられない程の威力を持っています」
「大規模の爆発も発生するのであろう?湖張の技よりも強力ではないのか?」
「いえ、それは無いと思います。点の破壊力でいえば、湖張姉さまの技の方が上です。あくまでエマシデンシは衝撃波を発生させる事に重点を置いています。
爆発は副産物にすぎません。確かに強力な爆発ではありますが、その爆発の力も衝撃波に変換されるような仕組みも取り入れています」
「だがどちらにせよ穏やかな魔法ではない事は確かだな」
「はい」
「その魔法はラナナが考えたのか?」
「いえ、基礎理論は魔法学校の教授です。私はあくまで研究の手伝いをしていただけです。
本音を言えば、あまりにも危険な魔法なので手伝いだとしても関わりたくはなかったのですよね」
「そうなのか?では断れば良かったのではないのか?」
不思議そうな様子で話すレドベージュの言葉に苦笑いを見せるラナナ。
「それがそうもいかないのですよ。
私は担当の先生に推薦されて特例で入学し、特待生として学費は全額免除だったのです。
それ故に学校が指定してきた魔法研究の手伝いは断れなかったのです。
まあ私としても魔法の研究は嫌いではないので、最初の内は進んで手伝ってはいましたが、
いつの間にかこのような危険な魔法に携わる事も増えてきました。
挙句の果てには気が付いたら手伝いとしてのサポート役ではなく、主たる研究者的な状況になっていった時もありました」
「ふむ」
「私って駄目なんですよね。難しい研究になればなるほど面白くなってきちゃって、結局自分の研究のように取り組んじゃうんですよ」
皮肉そうな笑顔を見せながらそう語るラナナ。そしてため息を一つつく。
「このエマシデンシにしてもそうです。教授たちが基礎理論を作り上げたとしても
結局行き詰まってプロジェクト自体が頓挫しそうになったのですが、
私が工夫したらゴールが見えてきてしまって・・・ただ完成前に私は旅に出ることになってしまいましたので
その後はどうなったかは分かりませんけどね」
「ラナナとしては、この魔法を完成はさせたかったのか?」
様子を探るように問いかけるレドベージュ。するとラナナは少し考えた後に天井を見上げて答える。
「正直なところ、旅に出ることになって研究を辞められたので安堵はしていました。先ほども述べたように危険な魔法だという事は認識していましたから。
ですが、今は違います。これで湖張姉さまやレドベージュを助けることが出来るのならば・・・何より赤き聖者として平和を守る力に活かせるのであれば
完成はさせるべきかなと思えちゃったのですよね。だから今、こうしているのだと思います」
「そうか。まあそうなのであろうな」
ラナナが少し穏やかな表情でそう語ると、彼女の考えを肯定するかのような優しい雰囲気で答えるレドベージュ。
そして数秒間沈黙をした後、再び問いかけ始める。
「ところでそのような戦略魔法だが、他にも研究されているのか?」
その質問を投げかけると、ラナナはゆっくりと頷く。
「はい、いくつもの戦略魔法が研究されているようです」
その言葉を聞くと何かを考えるかのように黙り込むレドベージュ。
「・・・不審に思いますか?」
彼の様子をジッと見つめた後にそう切り出すラナナ。
するとレドベージュは彼女に近づいて更に会話を進めようとする。
「うむ、何故魔法学校が戦争の準備のような研究を行うのだ?」
少し怖い様子で問いかけるレドベージュ。するとラナナは少し考えた後に答える。
「・・・実は私もレドベージュに聞きたい事があったのです。
機会があれば聞こうと思っていたのですが、今がその時なのかもしれませんね」
「何が聞きたいのだ?」
「いえ、まずはレドベージュからの質問に私が答えるのが先です。
何故ダラ魔法学校が戦争の準備をしているかです」
「・・・理由を知っているのか?」
「はい、それはダラ魔法学校ではこの数十年のうちにドラゴンズディストラクションが発生すると考えています」
ラナナの言葉に固まるレドベージュ。しばらく沈黙が流れる。
「・・・やれやれ、これまた予想だにしなかった、とんでもない事を言うのだな」
レドベージュは首を横に振りながら、何とか言葉を振り絞ってそう言うと、ラナナは神妙な面持ちで話を続ける。
「そして私が教えて欲しい事はこれです。
ドラゴンズディストラクションは遠い昔、本当にあったのですか?」
彼女の言葉を聞くなりしばらく固まるレドベージュ。何か不思議な事を聞かれたかのような雰囲気である。
「む?ドラゴンズディストラクションが再び起こると考えているから戦争の準備をしているというのに、
それが本当にあったのかは知らないのか?」
「確かに変な事を言っていますよね。警戒している事の為に行動しているのに、
その警戒対象は本当に起こったのかが分かっていないなんて。
ただ実際のところ、ドラゴンズディストラクションについての真偽は分からないというのが現状です。
そもそもドラゴンズディストラクション自体がおとぎ話レベルの内容じゃないですか」
「まあ、そうでもあるな」
「少し整理させていただいて良いですか?
認識の違いがあるといけませんので。
まず私の知るドラゴンズディストラクションですが、
約730年前に起こった人と竜との大きな争いです。
元々人と竜は至る所で生活をしており、生活圏が被る事がよくありました。
なのでもちろん共存していた地域もあったのですが、縄張り争い的な事で対立する地域も珍しくはありませんでした。
そしてそれがエスカレートしていき、竜が人を駆逐しようと暴れ始めました。
それに対抗するべく人々も戦い始め、それが大きくなっていき
人々と竜の大きな戦争になりました。
しかし数年の月日が経つと双方とも疲弊し、やがて話し合いの場を設けることになりました。
その結果、王国が3つ入るほどの広さを持つクグア山脈地帯を竜たちの住まう地とし、
人々は不可侵の聖地にする事で合意。それ以来、人と竜の争いは治まりました。
この内容はおとぎ話で伝わっている他、各王国の王家は守らないといけない言い伝えとして残っているようですし、
各地の至る所で出土した遺跡にも記されています。文献にもそうです。
なのでこれは真実だと考えられるかもしれませんが、
そう簡単な話ではありません。
というのも、確かにクグア山脈には竜が多く、人々が近づくと追い払われる事は有名です。
それにそもそも人々が簡単に入り込めるような地形はしていません。
なので、人がいたずらに近づいて危険な目に合わないための戒めの為のおとぎ話という説があります。
また、王家に伝わる伝承の件に関しても、山脈を一国が統治すると、山脈に面した近隣の国は山脈からの侵略に警戒する必要があります。
なので、各国が同盟の様な形で山脈を領地にしないと取り決めているだけという説もあります。
何はともあれ、あまりにも遠い時代の話ですので確証が得られていないというのが現状です」
「それで、我から真実を聞きたいという事だな?」
「はい」
真剣な眼差しでジッとレドベージュを見つめるラナナ。
その視線をしばらく見つめると、レドベージュは話し始める。
「まず結論から言うと、ドラゴンズディストラクションは本当にあった事だ」
その言葉を聞くと一瞬だけ目を大きくするラナナ。今まで確証が得られなかった事の解を得られたので
気持ちが高ぶっているのかもしれない。だがレドベージュはその様子に気づきながらも話を続ける。
「だがラナナの話と真実とでは若干の違いがある。
そもそも竜とは魔物でありながら高度な知性を持つ特殊な存在だ。
故に同じように高い知性を持つ人間との共存の道を選び、実際手を取り合って過ごしていた。
更には天とも関わり合いを持つ竜もいるくらいだ。
だが、その様な関係は終わりを告げる事となる。
人の数が増えていき、竜の住まう場所にも干渉するようになっていったのだ。
どうしても水源の近くに人も竜も集まるのだが、そう都合よく何処にも水源があるわけがない。
なので各地でいざこざが起き始めた。
また竜とは高い知性を持つだけでなく、体が大きく力も強い。
それ故に竜に恐怖を抱く者が徐々に増えていったのだ。
その延長でこのままでは竜によって滅ぼされるという言いがかりにも近い世論が広まってしまった。
そして一番の原因として、人は竜の素材について気づいてしまったのだ。
竜の皮、竜の鱗、竜の角や牙等、それらの素材は上質な道具や武具になると知ってしまった。
・・・そして何より竜魔球の存在だ。ラナナならば聞いた事があるであろう?」
そう問われると、静かに頷くラナナ。
「竜の体内で生成されるとされていますが、実際のところは生成される事が殆どなく、
1万頭の竜の中に1つでも見つかれば良いと言われるくらいの貴重な物ですね。
竜魔球からは魔力を無尽蔵に得られると言われており、その価値は竜魔球一つで国を興せると言われています」
「そうだ、ちなみに竜魔球とは魔力を常に放っているわけでは無く、周囲に漂う魔素を・・・魔力と言った方が分かりが良いか。とにかくそれを常に引き寄せ集めているだけなのだ。
その現象が常に魔力を放出しているのだと勘違いされている。
だが、魔法の力の源である魔素を・・・魔力を常に得られる物である事には変わりない。
その様なまさに宝を人々は欲し、そして数多くの竜を手にかけたのだ。
それにより竜たちは怒り、そして人に恐怖した。その結果、生き残るために戦う事を選んだ」
「それがドラゴンズディストラクションの始まりですか?」
「うむ、その後はラナナの言う通りの流れだ。
結局双方ともに甚大な被害を被った事がきっかけで話し合いの場が持たれ、戦いは終わった」
そこまでの話を聞くと、ラナナは深い溜息をつく。
「はあ、結局のところ人の欲深さと罪深さの結果という事なのですね。
更には人の汚点を隠す歴史作りをした事も呆れてしまいます」
「まあ確かにそうなのではあるが、ただ人も捨てたものではないのだ。
実際のところ、竜魔球を欲したのは一部の人間であって、話し合いの場を持った王達はむしろ竜を大切にするべきという考えであった。
それ故に竜狩りを行った者達は王達の手により裁かれた。
中には国を挙げて竜魔球を手に入れようとしていた国もあったのだが、
それも例外なく裁かれた。戦争を終わらせるための戦争という、なんとも皮肉な事をやってはいたがな。
また、巨大な身を守るのに適した広大な山脈地帯を竜の住処として定め、人の出入りを制限させた。
この様に竜の安全を確保したのも人間なのだ」
「そうだったのですね。でも何で話し合いで解決できたのに
数年間は戦いをしていたのでしょうか?」
「うむ、それが戦争の怖いところだ。
とにかく相手を滅ぼさないと自分たちがやられる。双方ともそう感じてしまったのだ。
反撃に出た竜たちの破壊活動は凄まじいものでな、人々も徹底抗戦しないと滅ぼされると感じてしまったのだ。
むしろ多くの人々はドラゴンズディストラクションが起きた切っ掛けを知らず、
急に竜たちが襲ってきたと思っていたのだ。話し合いをした王達ですらそうだ。
何とも嘆かわしい流れではあるな」
「天は介入しなかったのですか?」
「さすがにしたさ。
とは言ったものの、竜からすれば人は天が管理しているものという認識なので我らの話は中々聞いてもらえず仲介も中々出来なかった。
むしろ敵認定されていたな。だから長引いてしまったというのもある」
「中々上手く行かなかったのですね」
「うむ、天は意外と無力なものさ
・・・ところでラナナよ、そのドラゴンズディストラクションだが、何故再び起こるとダラでは考えているのだ?」
一つの話題が終わったと感じるなり、今度は質問をし返すレドベージュ。
するとラナナは手元の紙にメモを書き始める。
その内容は大陸の輪郭と近海を描いた地図の様な物であった。
「これはクグア周辺の地図です。そしてここから東南の方向に進むと離れた場所に海があります。
・・・そう大体この辺からスタートしましょうか」
そう言うなり、海の上に丸を付けるラナナ。
そしてその印の左上にまた丸をつけ、更にその左上に等間隔で丸を付けていく。
「まず一番右下・・・つまり東南の位置にある海底で150年前に火山の噴火がありました。
そしてその30年後には二つ目の丸の位置で海底火山の噴火が、更にまた25年後には次の丸の位置に・・・ここからは大陸の上になりますね。
この様に火山の噴火が等間隔で20~30年周期で発生しているのです。
そして最後の丸の位置、ここでは4年前に火山の噴火が起こりました。
ここで丸の位置を線で結んでみます」
そう言いながら地図上の丸を線で結ぶラナナ。すると狙ったかのような直線が描かれる。
「どうですか?ほぼ直線になるじゃないですか。
こうなるとこのままその先に火山の噴火が進んでいくのではという想像ができますよね?
そこで等間隔で次の火山の位置を考えると・・・ここです」
そう言いながら地図に丸を付けるラナナ。
「そう、クグア山脈の中心・・・とまでは言いませんが、それでも中心に近い位置が16~26年後に発生する噴火の予想地点になります」
「ほう」
「ダラ魔法学校ではこう考えています。この位置で火山が噴火すると周辺は荒れ果て、竜が住めなくなる可能性があると。
広大な面積のある山脈地帯ですし、実際に竜がどのくらい生息しているのかも分からないので断言はできませんが、
それでも甚大な被害を及ぼすでしょう。
すると住処を失った竜達は新たな住処を作るためにドラゴンズディストラクションを起こして人の住む場所に進行してくるのではないかと」
「・・・ふむ」
話を聞くなり少し考えるレドベージュ。その様子をジッと見つめるラナナ。
「確かにこの位置で火山が噴火をすると、竜の住処は絶たれてしまうな。
だが先にも述べた通り、そもそも竜達は人との共存を考えていたのだ。
人に助けを求める事はあっても、侵略して土地を奪い取るとは到底思えないな」
「そうですね、レドベージュの話を聞くと、そうとも思えます。
私たちはそもそもの背景を知りませんせんでした。
なので住処を失った竜たちが攻めてくると、どうしても考えてしまいましたね」
「うむ、物騒な取り越し苦労になってしまうな」
レドベージュがそう言うと、暫く難しい顔をするラナナ。
「・・・でも果たしてそうでしょうか?」
「何か引っかかるのか?」
「はい。
というのも、今まで竜と人は関係を築いてこなかったのです。
むしろ関係を断っていました。
中には良好な関係を築いているケースもあるようですが、それは小規模であり稀です。
基本的にはお互いに無干渉です。
そんな相手に助けを求めてくるでしょうか?
それにもし助けを求めたとしても、得られるものは人の生活を充実させたうえでの支援になるはずです。
なので大した支援は期待できないのではないでしょうか?
だってそうじゃないですか?人は困っている人を助ける事はありますが、
あくまで自分の生活を保ちつつ、提供できる余裕がある分だけの支援。これが普通です。
自分の私財の多くを投じて支援をする人は数少ないじゃないですか?
ましてや竜に住処を提供するという事は、自分たちの住処を提供するという事。
そんな事をする人は数少ないと思います。
人と竜は共存してこなかったのです。今更一緒の生活範囲で暮らすことは難しいでしょう。
先ほど、水源の話がありましたが食の問題もあります。動物が人里に住み着いて畑を荒らすだけでも問題になるのに、
竜程の巨体を維持する食料を人の住むエリアで供給するとなるとこれまた問題です。
資源は限られていますので、そこも争いの元になりそうです。
そう考えると、自分たちより力の弱い人が住まう場所に、力の弱いものに首を垂れて不自由な生活をするくらいなら
侵略しようと考える竜がいてもおかしくは無いと思えませんか?」
彼女の意見を聞くと地図をジッと見つめながら考えるレドベージュ。
「・・・実は火山の経緯は天でも危惧している部分ではあるのだ。
この法則性は天でも把握はしている。ただドラゴンズディストラクションまでは想定はしていなかった。
とういのも、山脈全てが住めなくなる事は考えづらいし、人は住めないが竜ならば住める場所はまだ多く存在する。
そこに誘導すれば問題ないと天は考えているのだ。
だが・・・もし天の誘導に応じない場合も想定すると、ラナナの意見もありえるやもしれん」
「私としてもそうならない事が一番嬉しいです。
ただ希望通りになる事だけを信じて何もしないと、肝心な時に何もできません」
「その為の危険な魔法か?」
「はい。竜とは巨大で強大な存在だけではなく、小型ですが数の多い種類もいます。
エマシデンシはそのような小型の竜が大挙しておしかけてきた時を想定しています。
このように戦略魔法は取り越し苦労で済めば良いですけど、もし人に力が必要な時に人を守る力として研究されているものです。
無駄になって結構。ただ力が本当に必要な時に力を発揮できず多くのものを失う事を危惧しているのがダラ魔法学校です」
「ふむ、そうであるか。
・・・この件はもう一度、天としても検討をした方が良いな。
ゴルベージュに話しておこう」
「ゴルベージュ?天帝ゴルベージュ様ですか?」
「そうだ、一応は天の方針を決める際には奴の判断が重要だからな」
そう伝えると、ラナナの前に砂糖菓子を出すレドベージュ。
「これは?」
「少し硬い顔が続いているからな。これを食べていつも通りの表情に戻ると良い。
何なら紅茶でも用意するか?」
そう伝えると、菓子を一つ口に運んだ後に少し柔らかい雰囲気に戻るラナナ。
そして首を横に振る。
「いえ、紅茶は大丈夫ですよ。湖張姉さまの休憩の時に一緒にいただきますから。
それにしてもゴルベージュ様ですか。
神話に出てくるお名前が出てくると、やっぱり自分の今の状況が嘘みたいですね」
「そうか。後悔はしているか?」
「いえ、全く。むしろ嬉しいです。今日もまた普通ならば知る事が出来ない事を知る事が出来ましたし。
私、今の立場を凄く光栄だと思っているのですよ」
幸せそうな笑顔でそう答えるラナナ。
それに「そうか」と簡単に答えると、レドベージュは部屋を後にしようとする。
「湖張にも休憩を促してくる。やはり紅茶は欲しかろうて」
「そんな、邪魔しちゃまずいのではないです?」
「何、かまわんさ。むしろそろそろ休ませないと体調を崩しかねん」
そう言って部屋を後にするレドベージュ。扉が閉まる音を聞くと、
ラナナは机の上のメモを片付け始めるのであった。
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