ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十五話【練習の成果】
- 2021.02.18
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「さて、それじゃあ試してみますか」
修練鳥が飛んでくる部屋の真ん中で横に並ぶ湖張とラナナ。
腕を組んで湖張がそう言うと、ラナナは小さく頷く。
キロトンの練習をし始めてから間もなく、案の定ウンバボが昼食を促してきたので
すぐさま昼休憩に入った二人。というのもウンバボの料理はとても美味しいが故に
すっかり彼の味が気に入った二人はパッと頭を昼食モードに切り替わってしまったからだ。
ただその時に気がかりな事が生じた。というのもレドベージュの姿が見えなかったのだ。
ウンバボ曰く、先ほどまでは二人の事を陰ながら見守っていたらしいのだが、今は野暮用の為に出かけたとの事だ。
食堂に戻らず現地で食事を済ませると、すぐさまキロトンの練習に戻った二人。
最初はゆっくりと魔法を撃っていたが、慣れてくるとスピードを重視し始め、
更に慣れてくると、湖張も的を激しく動かして実践レベルで使える練習に切り替えた。
そんなこんなやっているうちに日は暮れて、その日の修練は終了となった。
そして日が開けて今、実際に修練鳥と戦う事で成果を試してみようという流れになっていた。
常人ならばキロトンの練習に数週間くらいかかりそうなものなのかもしれないが、
ラナナの魔法に対するセンスは尋常ではないようで、半日の練習でものにする事が出来たが故の挑戦である。
「最初はどっちからスタートしようか?」
「どちらでも良いですよ?むしろそこもアドリブでやってみますか?」
「それ面白いね。まあ合図無しに合わせる練習も兼ねられるからそうしようか」
そうやり取りをしている間に修練鳥が奥からゆっくりと飛んでくる姿が目に入ってくる。
すると穏やかな表情から真剣な眼差しを持つ表情に瞬時に変える二人。
そして無言のまま湖張の両手が光り出すと、ラナナは手を薙ぎ払う姿勢に移す。
「いっけー!サンダークロス!」
湖張が魔法を放つと、上空と目の前に光の玉が高速で移動をし、すぐさま雷撃を修練鳥にめがけて降り注ぐ。
そしてほぼ同時のタイミングで鳥の真下から炎の柵が鳥に襲い掛かり、予定通り3羽が脱落していった。
「続けていきます!キロトン!!」
魔法が全く効かずに残った2羽の鳥が、何事もなかったかのように飛び続けているところへ
間髪入れずに更なる魔法を仕掛けるラナナ。そして彼女が魔法を放ったと同時に前方に飛び込む湖張。
結果を見てからだとタイミングが遅れると考えたので、突進しながら結果を観察する事にしたが故の行動である。
ラナナが放ったキロトンは威力は抑えられているものの、弾速は速く狙いは正確であった。
故に鳥は避ける事が出来ずに正面から直撃する事となる。
その結果、湖張の狙い通り1羽は鳥の羽を巻き散らしながら撃墜され、地面に力なく落ちていく。
そしてもう一方の鳥には効かなかったようで、健在のまま飛んでいた。
「これで最後!」
突進しながら観察していた湖張は残った鳥に狙いを定め、近づく速度を早め一気に飛び込む。
そして鳥が自分の間合いに入ると、即座に宙返りをしながら蹴りを仕掛ける。
鳥の体全体に湖張の右足がガッチリと当たり、弧を描く様に蹴り飛ばすと、鳥は地面に落下した後はピクリとも動かなかった。
「何か驚くほど作戦がハマりましたね。最初の苦労が嘘のようです」
予想以上に簡単に5羽を倒す事が出来たので、呆気無いといった雰囲気で話しかけてくるラナナ。
「そうだね、でもまあこれはラナナが魔法を上手く決めてくれた事が大きいよ」
「本当に湖張姉さまはこういうところが謙虚ですよね」
「そう?でも実際のところラナナの間髪入れない魔法の切り替えは見事だと思うよ」
「確かにその練習は有意義でしたね。威力を落としても攻撃を繋げる方法はとても為になりました」
「早速修練の成果を感じちゃった?」
「はい。今まで強くなるために魔法の練習を真剣にしたことってそんなに無かったので、成果をより強く感じているのかもしれません」
「そうなんだ」
「はい、一応学者志望でしたので強くなることにはあまり関心が無かったのですよ。
まあ色々魔法の研究を手伝わされているうちに、多くの攻撃的な魔法を使えるようになってしまいましたが」
苦笑いでラナナがそう答えると、少し心配そうな顔を見せる湖張。
「そっか。そうしたら実は今ここで修練する事って実は辛い?」
湖張が答えを聞くのが怖そうにそう尋ねると、ラナナは首を横に振って可愛らしい笑顔で答える。
「いえ、全くその様な事はありませんよ。むしろ湖張姉さまとこうして一つの事に取り組めるので楽しいです。
それに私も赤き聖者なのです。少しはこういう事を頑張って強くならないといけないじゃないですか。
学者とは違う道ですが、これはこれで楽しんでやっていますよ」
その答えを聞くと、安心がにじみ出たような優しい顔を見せる湖張。
「そっか。じゃあ平気かな。
そうしたらさ、今日はこんな感じで鳥と連戦してみよう。
最初はたまたま上手く行っただけで、次は手こずるかもしれないからね。
それにどのくらい体力的に連戦出来るかも試してみたいし。
とにかく数をこなしてみよう!」
「分かりました。自分や湖張姉さまの体力を測るいい機会ですね。
ちょっと頑張ってみましょう。今後の参考になると思います」
そうやり取りをしている間に、再び奥から修練鳥の群が飛んでくる姿が目に入ってくる。
その様子を見た後に二人は目を合わせ、無言で同時に頷くと、再び魔法を放つ準備に入り始めた。
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